園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

18の定石、質問を投げかける、思考のプロセス

経営幹部の育成の道筋

Posted on 2013-08-08

 どの会社でも、経営幹部にしっかりした人間がどれだけいるかが決め手です。

 そのために単に技術的なことのみでなく、もっと本質的なところを身につけてもらいたいと考えます。How-toでなくWhyを議論出来る人間になってもらいたいです。

 とにかく、正しい質問をすること

 私の例です。ある会社を建て直すために「農耕型企業風土」づくりを通じて会社を成長・発展させる経営路線をとり、成功しました。この時にとった策を「フォ-ミュラ」「18の定石」として二冊の本に纏めました(「これからの社長の仕事」http://sonoyama.ns-2.jp/)。

 私は幹部育成の一環として「18の定石」をもとにしたこの内容を、少し言葉を変えて経営幹部に質問、常に正しい質問をすることにしていました。

自分自身やチームで回答をみつける

 質問を投げかけるというこの方法の利点は、質問する側で論点の整理ができることです。また答える方が考えざるを得ないことです。更には、答える側で思考のプロセスが楽しめます。考え考え抜いていきますと、相手の良い意見に気づいたり、自分の知識の足りなさにも気づきます。

 また考え方を狭く取ると答えが発展的でなくなり、もっと広がりを持った発想の必要性にも気づきます。これらの必要性については、皆頭の中では分かっているかもしれません。しかし、これを具体的に考え活用する機会を提供していくことで、幹部社員が成長していくものです。

 あわせて、回答のプロセスを通じて仕事の面白さや仕事に対する愛着心を抱くことにも通じます。私の例ですと、自社の「サービスのデザイニング」と競合他社のそれとの比較について質問をすることで、幹部社員がチームで考えていく過程で、他にはないオリジナルな導線を見つけて大喜びをしている場面に接しました。他の部門ではやっていたが、それを上手くカスタマイズして会社全体のものに修正し導線を捜しあてたりすることで、そのチームが「わくわく元気」になったことを経験しています。それぐらい効果のあるやり方でした。

最後は信頼関係の基礎づくり

 信頼というと信用とは少しニュアンスが違います。物事の善悪の判断は別にしても「あの人からの質問なら・・・」、「あの人の言うことなら・・・」、「あの人の恩義に報いたいので・・・」などの文言で表現されるように、信頼関係はその人とある種の無条件な依存関係をつくることになります。これ無くして、実際は革新的なことはできません。 質問の投げかけ、答える側の思考のプロセスの充実度も実はこの信頼関係を基にしています。

 これは、私が『これからの社長の仕事』(http://sonoyama.ns-2.jp/)の定石11の「チーム」や「公」に貢献する、の項(P114)で、

  ・皆さん一緒に仲良くしましょうね、

  ・仲間外れをつくらないようにしましょうね、

  ・悪いことをしたら謝りましょう、

  ・困った人がいたら助けてあげましょう

 と幼稚園の先生が園児に徹底する言葉を紹介しましたが、こうしないと相手からの信頼を得られないのではないかと思います。

 すなわち、自分という個を押し殺して人を立てる気が、本心からあるか否かです。しかも、毎日の行動の積み重ねが大切です。これが成立しない状況を一度でもつくると、その修正は厳しいものになります。それくらい信頼と人間性が関係することとを認識して問題ないと考えます。

 子供の世界だけでなく大人の世界でも同様です。園児に対するこれらの言葉を大人用に言い換えて言えばこうなります。チームを大事にする、相手に敬意を払う、助け船をだす、嘘はつかない、約束を守る、何かに縛られない自由な発想をする等ではないでしょうか。これらの他に信頼を深める方法は見つからないと考えます。それほど信頼は、人生の長い期間をかけて造り上げるものかもしれません。

 信頼ができてこそ初めて「正しい質問の投げかけ」が本人の育成につながることになります。