退職
第228回 退職しそうな人の心の置き方
退職しそうな社員の説得を、私は何十回と繰り返しました。
何とか、会社内で頑張ってほしい、この一心で説得を繰り返しましたが、上手くいかないことも多くありました。
今自分流に納得することは、結局その人を取り巻く人間関係などがきっかけとなって退職に至る場合がとびぬけて多かったということです。その社員のポジションによっては、社長の立場では状況が把握しにくいがため、本人が人間関係に苦労していることに気づくのが遅すぎたことが、上手く説得できない主たる理由でした。
経営側の責任
それでも会社の経営者として、いろいろなことに努力をしなければなりません。
下意上達のコミュニケーション環境を改善する、戦略の魅力を増す、給料を上げる、仕事に面白さを出す、キャリアアップのプランや筋道を示す、自己実現を目指す機会を与えるなどなど。
親の会社を引き継ぐなどの特別な場合は別として、これら以外に退職を引き留めるため経営側として本当に重要なことは、できる限り良好な人間関係が蔓延する企業風土をつくることだと考えます。私もこのことに気づき、早くからこの対策に腐心し企業風土で差異化を図りました。
退職しそうな人の心の持ち方
上記のように、退職防止には会社として経営側の責任が当然大きい。
しかし、今回は、もう片方、退職を希望する側の社員個人として何かできることがないかに焦点を当ててみます。経営側が重要と思う企業風土づくりに参加する社員側の退職しそうな時の心の置き方の部分です。
ほとんどの社員が、人間関係が悪くなると心が不安定になる。仕事ぶりにも表れます。退職を考えている頃は、なんとなく投げやりな仕事の仕方になります。
心の不安定な兆候は、週間報告書(週報)など一週間の仕事の内容を本人が上司へ報告する書類の書き方にも表れます。会社や部門の欠点、改善点をすごく詳細に並べ立てて一見改革に資する内容に見えるところが多いが、問題は本人がその景色の外にいる内容であることです。それでも、何かを訴えるものが多く見られる。
ここで上司が異変を察知すれば退職を食い止められますが、それを過ぎると、本人の決意が固くほぼ無理だということを、私も長年部下からの週間報告書を読み続け、そのパタ-ンに気づきました。
退職を考えている本人は、自分の退職のきっかけや原因を当然探す、しかも、自分でなく他の人に原因を探すくせがあります。心の持ち方が完全に片方にブレてくる傾向が出てきます。
冷静に考えると、彼が原因を外に探すよりも、自己の目標実現に向かって人間関係を良くするためには何か自分に出来ることがないかを探すのがポイントなのに、なかなかこれに着目しないのが一般的です。
上司との相談では格好良い説明をしても、本心では、他の人に原因を探してしまいがちです。
より上位の軸での行動を起こさない
誰でも、自己実現や自己のレベルのアップなど何かの目標をもって仕事をしているはずです。したがって、本人にとって最も重要なことは、本来その目標の実現にあるはず。目標の追求のための努力以外のことは、よりレベルが下位の存在のはずです。
ところが、心が揺れていると、そこの軸に焦点を当てないで、相手が悪いという下位の軸で物事を考えやすくなります。
相手が悪い、誰がどうした云々よりも、本来目指す目標に向かって自分の心を変えることで人間関係が改善され、より良い人生を歩めることに気づいていません。行動に反映されません。
もちろんこれを超えるような不満が会社の経営自体にある時は例外ですが、これに努力する方が本人も組織にとっても遥かに有益であるのに、そのような行動に移すことをしないのです。
究極は、自分の心の置き方を変え、行動する
何かの行動をする時には、誰でも自分で暗黙裡に判断の選択をしています。こと人間関係に関して言えば、自分が置かれている状態に満足しているかが判断の基準になると思います。
満足しているとすれば、通常、本人は良しとして、退職の文字が頭の中で重要な位置を占めるようなことはないと思います。
もし、その状態に不満である場合は、退職のルートに行かない最善の方法は、目標を実現するために自分で良い人間関係を維持できる方法をまず考え、次にこれまでとは違う別の行動を自ら起こすことです。これしか、究極の解決策はありません。
すなわち、自分の心の置き方を変えることだと考えます。自分に正直に向き合い自分をごまかさず、在りのままの自分をまず客観視する。そうすると周囲の人が違う見え方をします。彼らは必ずしもあなたに敵対的ではない、彼らも自分の目標を実現するために周囲と良い人間関係が築けないかの努力をしている。彼らの良い点が少しずつ見えて本人の人間関係も改善してきます。
彼らの良い点を評価し周囲の人を信頼して、自分がその人の仕事目標追求に役立つことは何かに気を配る行動を起こしては如何でしょうか。心の持ち方と考え方に余裕が出てきます。
判断の軸として自分を正直に見つめるところに置く。それから他の人の課題の解決に役立つ自分の役割を見つけ行動するところから始めることになります。
会社を自滅に導かないために
会社での議論もこの心の置き方が参考になります。自分の仕事が上手くいかないと、必ずこれを外の理由からアプローチする人がいます。このような人は実は成長が遅い。もっと課題を自分自身の中に見つけて、自らの心の持ち方を変える勇気が必要です。
私もこのようなタイプの経営者を知っています。経営が上手くいかない。それを、部下の社員や資金を供給してくれている株主の介入のせいにする。結局、経営につまずくことになります。自分を客観視する姿勢が欠如し、すべての原因を自分以外の他の人のせいにすることで、最後は自滅状態。
こうならないようにするために、少しはヒントになったでしょうか。
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