環境変化への対応、組織風土、内部の組織的安定性、ベクトルの結集、組織としての俊敏性
競争で勝つ確率を高めるには
経営環境が激変する中で、競争優位を持続するのは大変なことです。競争相手が沢山いるマーケットでは、毎回ビッドに勝つことは至難の業です。顧客の要望に完全に合致するのは大変です。しかも、本筋とは違う何等かの要因で選ばれないこともあるのでなおさらです。
競争で勝てる確率を高める作戦
そこで考えるべきなのは、競争条件下で勝てる確率を高めることではないでしょうか?
競争環境は、常に変化していきます。特にサービス業の場合、今は優位であったとしても、やり方などをすぐ模倣されてしまいます。特許などで縛られない部分が多いので、模倣されやすいのです。
私が関係していたビジネス分野でも、新しいサービスコンセプトを導入して、しばらく競争上優位に立っていましたが、それも他社に模倣されてしまいました。さらに新しいコンセプトをすぐに考え、乗りきらなければならないことが、何度もありました。
加えて、新しい技術が登場することで競争のフレームワークが変化し、過去のフレームでは優位だったビッド案件にも変化をきたしやすいのです。
コールセンター関連で言えば、最近のIT技術の登場と利用の一般化により、「コミュニケーションをするという概念」自体に大きな考え方の変化をもたらしてきているのではないかと思うほどです。言葉を発してコミュニケーションをすることの基本に変わりはありませんが、新技術の登場によって、コミュニケーションの概念の幅が大きくなってきていると考えます。
このような状況下では、その分野の新参者でも大きなビジネスチャンスを掴める時代が到来したとも言えるのではないかと、個人的には考えます。それほど競争に勝ちつづけるのは、至難になってきているのです。
企業風土づくりの大切さ
このような厳しいマーケット環境下では、競争に勝つ確率を高める戦略が肝心です。
以下の私の経営体験の例の中で述べるように、前提として、常にマーケットの変化を的確に捉えることが出来、しかも、それに俊敏に対応できる組織風土が不可欠であると考えます。この企業風土を背景とすれば、環境の激変化でも競争に勝つ確率が高まると考えるからです。
私が主張する「農耕的企業風土」づくりが、結果として内部を安定させ、迅速に競合に対応できる組織力をつけることにつながります。この風土があったからこそ、内部の人材の力がアップして、しかも助け合う精神で内部組織の安定性を保ちつつ、俊敏に一致団結して戦える「燃える集団」をつくることが出来たのではないかと考えています。
内部の組織的安定性とベクトルの結集
まず内部の組織を徹底的に安定させることが肝要です。
私は、社員の雇用を安心させ、持てる潜在能力を開花させる機会をなるべく多く与える努力をしました。競争相手に迅速に対応できる社員の行動体質を備えさせることも教育・研修に織り込み、社員の質を高める教育・研修を徹底して、共感する目指す目標を掲げ、社員に実績を積ませることで、自分の成長を実感させ、さらに、組織に貢献するマインドを持つことで、組織を安定させました。
この内部の安定性を保つために、進むべき方向性を明確にして、且つ、当時としては少し無謀ではないかと思えるほどの高い目標を、「六つの夢」として掲げて、皆のベクトルを結集しました。
また、部門をグループという小組織にし、その長に相当の権限を持たせて、グループという店の運営を任せました。私のエネルギーを、企業としての社会的存在意義を明確にすること、その中で社員が働きやすい企業風土、企業文化づくりをすること、社員のレベルを上げることに、注力邁進したのです。
環境が大きく変化しても、「サービスでリーダーシップ」をとるという明快な経営戦略と徹底したリーダーシップにより、社員が安定した組織風土の中で、個々人の力を最大限発揮してくれることになりました。また、顧客との関係でも、彼らがこれを第一義と考えて、安定した顧客関係を維持できることになりました。
組織としての俊敏性を持つため、経営側と社員との信頼関係
競争条件下で勝つ確率を高めるために次に必要なことは、組織の俊敏性の源泉は経営と社員との信頼関係です。
社員が突然解雇されるようなことは絶対にしないことを、私は明言しました。実際にリストラという言葉は語られませんでした。私自身は、過去にこの会社が存亡の危機的な状態があったことを考えると、雇用の安定性を求めている社員の心理を痛いほど分かっていたからです。
勿論、変革のために小さな痛みを伴う組織変革などは実行しても、絶対に人の首は切らない経営側の姿勢が肝要ではないでしょうか。
変化に俊敏に対応しなければ、競争に勝つ確率が下がります。私が過去関係していた会社では、自社で勝手に引いた業界の線引きをもとにした戦略発想を、敢えて捨てる努力をしました。強力なライバルはどこにでもいることを前提にして、業界なるものを無視した戦略をもとに、どこから来るかもわからない強力なライバルの進出に、何時でも俊敏に戦える体制を敷きました。
組織の俊敏性を図るための諸施策を戦略的に取り込んだ例です。半期に一回、全国から社員を集めて事業計画発表会を実施していましたが、期初に立てた戦略や計画を柔軟に軌道修正すらためです。社員もマーケットの変化に迅速に対応する姿勢と行動力を備えるようになっていましたが、トップとして、マーケットの変化に則して、路線の変更と覚悟を全社員に明確にするためです。
加えて、イノベーティブな新しいことを仕事の中に取り込むことを、全社員の仕事の一環とし強調し、新しい取り組みで変化に迅速に対応できる風土を作りました。
それぞれのグループの長が自らのマーケットを細かいフィールドで捉え、小規模な投資でもっても変革に俊敏に行動に起こし、上手くチャンスをものに出来る体制も敷きました。
また、前期に伸張著しかった部門はどうしても資源を取り込みやすい傾向を打破すべく、予算編成はゼロクリアーで、各部門に資源を抱え込ませない、資源をマーケットの変化に則して全社的視点で配分できる方式としました。
結論です。
組織の安定性と敏捷性は一見逆説的に響きますが、私は内部組織の安定性を保ちながら、沢山の新規取組を迅速に出来る会社こそが、競争で勝てる確率を高くすることを確信しており、むしろ、この考え方が整合的だと考えています。
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