園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

浸透

経営を語り継ぐ伝道師が、あなたの会社にはどれだけいますか?

Posted on 2012-09-13

 会社で社長が経営の考え方を一生懸命説いているのに「社員がなかなか納得してくれない。なぜ社内に浸透しないのだろう?」と悩む社長に時々会います。

 特に、社長が新機軸を打ち出すと、まず「守旧派」と一般的に呼ばれる人の反対にあうことが現実には多いものです。それでも社長は、経営の考え方を一生懸命説く必要があります。夜を徹してでも社員と語り、説くことです。

「夢」や「志」を経営理念に盛り込んだ私の例

 社員が納得するまで考え方を浸透させるには、前提条件として経営理念の内容を固めることです。社長の「夢」が、あるいは、「志」が必要です。しかも、「夢」や「志」は実態に則した範囲内ではありますが、うんと大きな広がりのあるものが欲しいものです。

 一例です。考え方を参考にして頂ければ幸いです。

 ある会社で経営を任された直後の1989年ごろ、経営理念として社是を新しく明文的に定めました。社是を「サービスでリーダーシップ」と定めたのです。経営の考え方をこの中に集約しました。私が2008年に社長を退くまで、この社是の内容は社員から絶大な支持を受けていました。また、この考え方が綿々と語り継がれてきました。

 この「リーダーシップ」という言葉には、単純に計数的に一番になりたいということを超えて、事業内容、人材の質、会社としての品格も業界で一番となり、将来の方向性を指し示せる業界のスポ-クスマン的な立場になる、そういう会社を社員全員で築こうとする気魄が盛り込まれていました。

 さらに、「サービスで」と限定したことです。

 経営の途上、物販や不動産などいろいろな誘惑があっても、会社の主たるドメインとしてサービス中心に志向していくことを明言することで、経営の軸がブレないようにするためです。サービスこそわれわれが付加価値をつけて生活者に提供し、社会的に貢献できる分野と洞察したからです。

 加えて、「社員を大事にする」経営の考え方こそが一番大事であるとの信念が私にはありました。社長や幹部が、自己の利益追及でなく社員の成長や幸せを経営の根幹に据えていることを明言していったのです。

 そのために、経営理念の一つとして「個人と会社の目標を一致させる経営」を行うことを標榜しました。会社は、いろいろな戦略展開で会社の目的を実現していきますが、その会社の目指す目標と社員個々人の目指す目標が、完全には重ならなくとも重なる部分が物心両面で、少しでも多くなることを目指すという経営上のコミットメントなのです。

伝道師を通じて経営方針の伝播

 重要なことは、これらの経営の考え方を社長のみが説くには物理的に限界があると知ることです。幹部、一般社員、アルバイト社員に限らず、社長の分身として考え方を広める役割をする人が必要です。

 私は、そのような人を伝道師と呼ぶことがありました。社長の歓心を得ようとするエセ伝道師も、時には出てきます。私の場合もそういう人が現れて経営を混乱させられ、経営のスピードが遅くなったことがありました。しかし、そのようなことはすぐに露見するものですから、諦めず、伝道師を見つける努力を怠らないことが大切です。伝道師をいかに沢山つくるかが、経営の考え方を早く誤解なく社内に広めるための重要なポイントだからです。

 伝道師をみつけることは、社長の人を見る目を養うことにもつながります。

 人は結構弱いものなので、伝道師と思った人でも守旧派との間でふらつく人が多いのも現実です。むしろ、それが一般的であるとの理解と認識から出発すると良いと思います。甘言やお金のみで動く人がいるかもしれません、それでも説きながら伝道師を増やすことです。そのうちに本当の伝道師が現れてきます。そうなったらしめたものです。社長の経営の考えを伝道師が語り継いで社員への浸透スピードが加速していきます。