最初の20文字
第267回 プレゼンテーション
いろいろな会社の経営者にアドバイスをしている立場上、社長のスピーチやプレゼンテーションを聴く機会が多いです。
上手くて拍手を送りたいものも多い。しかし残念ながらその中には、話を長時間聞いていても「何を言いたかったのだろうか?」と心配になるものもあります。
人を惹きつけないスピーチやプレゼンテーションの場面として、何を伝えたいかの目的、テーマが不明確(それで何を言いたいの?)で一貫性が無く、意外性が無くありきたりで、聴く人の好奇心を掻き立てることがらが話に盛り込まれていない、話の全体の流れに起承転結が工夫されていない場合などです。
一般的に人の話を10分以上集中して聞ける人は少ないと言われています。
このことは私も経営をしていてよく分かりました。経営を引き受けた直後の私も、社員に伝えたいことが沢山ありすぎて、盛沢山の内容を入れたために、かえって浸透に失敗して冷や汗を流した記憶があります。
しかし、回を重ねるうちに、いろいろ気づきました。
複数トーク路線の工夫
トーク内容を一字一句完全な原稿に書き起こすか、ポイントのみをメモしてその瞬間に湧いた言葉で話すか、場面に応じて方法もいろいろ考えました。
どれをとるにしてもトークの進路を複数用意するほうが良い。何故なら、本筋は同じでも、「場」の状況に則して違うアプローチで話せるという、話し手の自由度が出てくるからです。また、頭の中が急に真っ白になった時、戻れるルートが複数あるほうが戻りやすいことにも気づきました。
「場」の工夫
「場」と「内容伝達の方法」の工夫も重要です。
・まず、物理的な「場の環境」です。
どれくらい収容できるか、部屋の響きはどうか、レイアウトはどうかなど、物理的な環境が、話す内容に則しているかを必ず事前にチェックします。
大きな部屋に少人数しかいない、部屋の周囲が騒々しく集中できない、対談するような内容なのにスクール的環境であったりすると、たとえ良い内容でもそれが相手に伝わるレベルがどうしても低くなります。
・次に、「場の雰囲気」です。
テーマや参加者に適した登場の仕方を工夫する。
聴き手にとって感度が良いスタートモードをとれるために、笑顔、立ち居振る舞いなどで緊張感を無くす工夫をする。
要は、スピーチやプレゼンテーションのイントロで、話し手自らが話を聴いてもらいやすい環境を作ることです。
出だしが肝心
トークは「はじめ」と「終わり」が肝心です。出だしの一分で聴き手の興味をひかなければなりません。そして最後に何を言うかが、一番聴き手の記憶に残る言葉が必要です。
まず出だしです。
話し手が最初にすべきことは、聴き手が自分から喜んで話を聞いてくれるようにすることです。
そのために聴き手と目を合わせてほほ笑む。ステージを堂々と歩き、2~3人と目を合わせる。
緊張して言葉が出ないときは、素直にそれを認める。言葉が出てこないと水を飲み「少々お待ちください。ちょっと緊張しているんで。すぐに正常運転に戻りますので、水を一杯」などと工夫すると、聴き手が暖かい拍手を送ってくれるはずです。
これで出だしを切り抜けられます。
「伝達内容」の工夫
・優れたトークは、「物語」風に仕立て上げる。
「物語」ならだれでも身近に感じられ共感しやすいからです。
しかも、20文字以内を目安に最初の文章から「物語」として始めるとよいです。
例えば、経営戦略の目標の重要な話をするときに、長い文章の連続で「物語」を始めると、主旨がなかなか伝わらない。全く聴き手の印象に残らない。
「今後3年xxxを目指します。」と短い言葉で切り出し、その後「物語」を展開する伝達の工夫が肝要です。
・聴き手が共感できるような登場人物を入れる。
「私が43歳の時、CSKの故大川功氏からxx会社の再建を託され、決意を新たに経営に取り組みました。ところが、着任直後に判明したxxのことで…」などと、大経営者の故大川氏との出会いから始め、以後必死で社員とともに頑張ったくだりで聴き手の共感を呼ぶ。一例です。
ビジネスに興味ある聴き手なら、このように実績をあげた大経営者を登場させ、聴き手の好奇心や社会的な関心、さらに、直面した実際の危機体験を通じて緊張感を高めるのも方法です。
・適度な量のディテールを盛り込む
事業計画の策定にあたっての内容の説明の時、重要なある部分については詳細説明をし、内容が深いことを聴き手に悟らせる工夫も大事です。
メリハリをつけていくことです。
・最後に笑いや感動や驚きで締めくくる。
例えば事業計画キックオフの場面では、「成長拡大する要因の総括は、3つです。3つですよ。経営者の覚悟、経営戦略を踏まえた事業計画、それと社員の心を結集できる幹部のリーダーシップです」と話し、直後に「xxさん、リーダ-シップに自信があるので大丈夫ですね!!」と、社員皆が、リーダーシップが欠如していると思っている人の名前をあえて出して彼に目線を送り、締めの笑いを誘うなど。あくまで一例です。
この一年ご愛読いただきありがとうございます。
良い正月をお迎えください。 園山 征夫
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