成長曲線
第217回 単位当たりで考える経営
社員への主旨説明やその浸透に皆苦労している幹部社員をよく見ます。聞く人が納得して次の行動に移せる、実効性のある方法はないかを探していると思います。私自身は二つの方法を駆使しています。
図解による説明
以前、日常の事象を経済理論的に説明するために、経済理論を背景として、事象を図解で説明していました。例えば、米価格の二重価格制、値付け政策など日常の課題の本質部分を簡潔明瞭に説明するためです。経営でも同様な方法をとっています。視覚に訴えるほうが聞く人のイメージに残りやすいからです。この図解による部分は、コラムの立て付け上本日は難しいので他の機会に譲り、今回は一つの単位当たりで考える部分に限定します。
単位当たりでの説明
一例です。GDPという言葉は誰でもご存知です。否、GNPの方が良く使われているかもしれません。GDPはGross Domestic Productの略で一定期間の“国内”の総生産高を金銭評価したもので、国内の景気動向が良く分かる指標です。これはGNPから日本企業が海外で生産したモノやサービスの付加価値を除いたもので、国の生活水準を示すと言っても過言ではありません。国民の生活水準が毎年どれだけ変化したかを、静態的でなく動態的に捉えることを目的とし、国家レベルで重要な指標となっています。最近中国のGDPの成長率が当初の7.5%から7%台以下に鈍化したと報じられることは、中国の生産活動の減退で生活水準の上昇が以前よりは抑えられることを意味します。
内容説明は別として、問題は、この尺度の全体表示です。国レベルではその指標でよいとしても、生活する我々個人にとっては「一人当たり」こそ、関心のある指標です。従って、このGDPも一人当たりで捉えることが国民一人一人にとって重要です。この尺度で捉えると、これまで見てきたものとは違う景色になることに気づきます。日本のGDPの成長率の下げを強調する人が多いですが、一人当たりで見るとどうでしょう。
ある資料によれば、日本の一人当たりのGDPのは、2003年から2007年まで平均年率2.1%で成長したとあります。アメリカはこの間1.9%、ドイツは1.4%です。日本の年平均GDPの一人当たり成長率ではこれらの国々より高い。
我々は、日本の人口が減少している状況を見ています。すなわち、人口が減少するので総合のグロスでの数字では、他の人口が多い国々にはかないません。もちろん総合が大きいにこしたことはないのですが、過度な悲観論は問題です。状況に応じた見方をしなければなりません。
どこの国でも、国の成長曲線は成長から成熟の段階に入ります。いま日本は成熟の段階に入りつつあるとも言えます。成長段階の中国や他の国々と単純比較するほうがヤボです。一人当たりで測り、それぞれの生活の豊かさのために我々は何を優先順位とするかにむしろ配慮すべき時期ではないでしょうか。
経営もしかりと考えます。収益面での全体の大きさはもちろん重要です。しかし、組織が成長曲線のどのあたりに位置づけられるかを知ることです。その上で、仮に成熟期に近づいているのであれば、一人当たりの付加価値の伸び率などこそ見るべきポイントとなるのではないでしょうか。もしその組織が、これから成長する段階にあると位置づけされているとすれば、この場合は、総合と単位当たりの双方の成長率が問われることになります。
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