成長
第238回 社員に成長を感じさせるための上司の留意点(2)
2月2日に投稿した、第236回の続きです。
上司の留意点は?
b) 失敗を是正できる仕事場環境をつくり、部下をインスパイアする
特に挑戦的な仕事であればあるほど、その結果に100%の自信はない。しかし、皆やりたくてうずうずしている。このような社員は多いです。それを実現させる仕事場の環境の大切さが分かる上司に、皆憧れています。
・仮説に基づき、トライ・アンド・エラーの試行錯誤を許すこと
「仮設をたて、その結論に基づき、なるべく早く修正し再実行の機会を与える」ことは、彼らの成長に大変重要なことです。時間が収益を生むので、リーダーがすぐにトライ・アンド・エラーの機会を与える環境を作れるか否かがポイントです。
変化のスピードが猛烈に早い時代には、出した結果をできる限りスピードをもって実行に移し、それを検証できる環境が不可欠です。もちろん、人事施策等、後戻りできないことはしっかり考えた上での走り出しが必要ですが、大半の施策は、行動、検証分析のプロセスによってより良いものに修正可能です。スピードが無い限り、競合に先を越され負けるリスクもある。
同様に、関連する業務を担当する社員にとっても、出来たら自分も仮説の検証の現場に立ち会いたい。必要な修正を加えて再実行を試み、より良いものに仕立て上げるのに協力したい。このことが実現できる職場環境を与えることが、社員の成長と会社自体のスピード感のある変革につながるのです。リーダーとして忘れやすい部分です。
・夢や目標を自分の言葉で語り、部下の行動に火をつけること
リーダーたる人は、部下の心に火をつけ(inspire)なければなりません。火のつけ方にはいろいろある。
社員は皆、秘めたる夢をもって現場の仕事に参画しているが、挑戦的な仕事にはリスクが付きまとうので、相当のガイドを必要とします。この役目が上司の登場する場面です。挑戦的な仕事に向き合う彼らをガイドして、彼らの心に火を点ける上司に恵まれるか否か、その時、自分の成長度合いを実感していきます。
どういうタイミングで彼らの心に火を点けるか。日常の観察や彼らとの対話で、火のつけ方とタイミングを準備するしか方法はありません。ここの社員との日常的な対話が如何に重要かを思い知らされます。
更に、部下の仕事に一定の成果が出たときには、何らかの誉め言葉やそれを実証する上司としてのタイムリーな行動がポイントです。上司のその誉め言葉や行動に、部下は自分の成長を支えてくれる百万の味方を得たと自信を持つ。更に彼の心に火が点き、成長を加速することにつながります。
c) チームの力で応援し、オープンなコミュニケーション環境をつくる
・チームの連携を図ること
どんなに優れた能力を持った人でも、チームとしての結束の支えがなければ、仕事の広がりを通じて自分の成長に結びつかない。このことを、皆体験で知っています。
単独で、知恵を仕事に展開できるのは限られた業種では効果的です。しかし、ほとんどの仕事では、チームワークこそが個別の知恵を活かす上で効いてきます。仕事がバトンの伝達・連携で成立しているものが多いとすれば、個別の部品の優秀性のみならず、部品全体の優秀性とそれらのしっかりした繋ぎが、良い製品開発にとって不可欠であることと同様に、いろいろな人の知恵の集合、協力・連携があって初めて大きな成果がでるのです。
この意味で、チームワークの動きにリーダーたるもの常に気を配らなければなりません。マネジメントのイロハです。しかも、このことは言葉の響きとは裏腹に、結構泥臭い下積みな仕事です。
実は、ここがキーです。このような仕事は目立たない、表彰に値するようなことはめったにない。しかし、長い目で見れば、この下積みの努力こそが、そのリーダーのマネジメントの幅と深さに大きく影響します。彼の下、立派な部下が育ちます。双方ともこのことが分かるのは、その立場から10年後になるので、経験者の私としては、このことを若いリーダーに強調したい。地道な努力が、結果として、皆から「信頼」を勝ち取る立派な部下を育成したことになるからです。
・開かれたマネジメント環境をつくること
社員が成長を感じてやる気を出すには、円滑なコミュニケーション環境が不可欠です。
オープンにコミュニケーションできる「場」が組織内に欠落していることで、会社や社員が本来持っているエネルギーを失っている事実に遭遇することが沢山あります。
特にリーダーたる幹部社員には、「マネジメントの定石」としてオープンなコミュニケーション環境をつくる工夫を身につけることです。詳細は省きますが、これが簡単そうで、結構意識した努力を必要とします。しかし、コミュニケーションをよくしようとする本心があれば、どんなに忙しくても工夫次第で可能です。社員の成長を助ける企業風土づくりにつなげることもできます。
第236回 社員に成長を感じさせるための上司の留意点(1)
社員はどのような時に十分な成長を実感出来るのか?立派なリーダーは、この点を十分意識してマネジメントを行っています。実地体験で学ぶところも多いと思います。しかし、できればその立場に就く前に、ポイントに気づき、努力をしたい。
自分の成長を感じる時とは?
人によってもちろん違いがあるが、一般的に、ビジネスマンが自分の成長を感じるのは次のような時だと思います。
- 成長に対するプレッシャーを感じつつも、挑戦的でやりたい仕事や夢に近づくと感じる仕事ができ、結果に対する成果意欲が湧く時、しかも、仕事の裁量を与えられ、以前よりレベルの高い仕事に主体的に思考し、取り組み、課題を自分で解決できた時です。
- 仮説検証の試行錯誤が許される仕事場環境があり、成長意欲を持った自分がやりたいことに上司から火を点けられ(inspire)、その成果に上司から気遣った褒め言葉や激励があった時です。
- お互いに教えあい、協力できるチームワークのある職場環境の中で、チームとしてのコミュニケーションを円滑に推進できる自信が心の中に湧いた時です。
私自身は、以上のように考えるのですが、如何でしょう。
ところで、社員自身が成長を感じる時に彼らのやる気が湧くとすると、経営者やリーダーは、日常の経営で何に配慮したらよいでしょうか?
上記の点を踏まえると、以下のヒントがでてきます。
上司の留意点は?
a)挑戦的な仕事をアサインし、裁量権を与える
自分の経験に照らしても、自分が描いている願望や将来像に向かって何かに挑戦できる仕事にアサインされた時が、一番楽しい。それは、実力を少し上まわる仕事かもしれない。大きな契約交渉の任、戦略策定の任、キャシュフローの増強交渉の任などなど、それらを任され一所懸命努力して一定の成果が見えた時の喜びは忘れることができません。自分の成長を実感した時です。
・ 多様性のあるキャリアデベロップメントの道を用意し、やりたい仕事、夢に近づく仕事をさせること
リーダーとして社員に挑戦的な仕事をアサインするには、発想の視点を、キャリアデベロップメントの選択肢を多く持ち社員の多様性を考慮した育成・成長の対応をすることに、おかなければなりません。
社員の価値観や要望は、私が経営を任されていた時代でも多様化していました。しかし現在は、さらにそのパターンが増してきているのではないでしょうか。
例えば、社員の会社への入社動機です。以前はある限られた目的を持って入社したと推測されるのに、最近は必ずしもこの前提が当たっていない。
だとするとそのような人には「十把一絡げ」的な対応では、彼らの欲求をみたせない。自分にとって挑戦的な仕事がアサインされたと受け止められず、彼らに感謝されない。個別の対応でない限り、彼らの夢に近づく仕事をアサインできず、アンマッチし、モラールの低下を招く。
マネジメントも人事施策もこの状況に追いついていかなければなりません。非常に複雑なことですが、顧客対応の多様性に応じてサービス導線が多様化する環境での個別対応と軌を一にしていると理解した方が得策です。
常に、個別の社員にそれぞれ対応する気構えが必要です。彼らの価値観や希望を全部はかなえられないとしても、少しでもそれを満足するような挑戦的な仕事で、しかも今の実力より少し上位の仕事を用意しておかなければならない。
もちろん、このことは社員を甘やかすという意味を含んではいません。彼らがモラール高く挑戦欲をもって仕事をしてもらい早く成長してもらうほうが、マネジメント側にも大きなプラスがあるからです。
・ 自分で考え、自分で裁量できる幅が広いこと
現場に近いところに権限を与えることでスピードと機敏さを大事にし、社員のやる気を起こす。難解な課題を自分で考え、なんとか自分で判断して解決した時、彼らは自分の成長を感じます。
現地現場に裁量権を与える重要性を主張しているのは、彼らが個別の判断経験を成長の土台にしていること、加えて、組織にも経営のスピード感が出るからです。彼らは新しいことを実現したくてウズウズしている。しかし、実績がない。そこで、判断経験を積ませる。自分自身で考え、判断して結果責任を負うことで、自分の成長、足りない部分をもろに実感できる。会社にとっても、このような育ち方をした人材が企業変革の牽引車の予備軍として成長します。
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