心理
第278回 マーケティング上のインサイトについて
そもそもインサイトという言葉は、マーケティング上の言葉というより心理学上の言葉だと思います。それを証拠に、この定義は、「人を動かす隠れた心理」と言われます。
定義上から明らかな通り、
(1)本人も通常意識していない隠れたもの、
(2)それが本人を動かしているというポイントです。
隠れた心理のところに、隠れた不満、欲求などがあります。商売上は、できればこれを察知してその不満を解決し、欲求を満足させるような企画やアイデアを出すことにつながります。
インサイトの中味
いろいろな教科書で説明されていますが、インサイトの中味を解析すると、一般的に次の要素から構成されています。これらは、
・まず、その人の「感情が生まれた場面や、行動」です。
例えば、1か月前から体の調子が悪い。普段目にしている疾患関連の症状に似ている。
このような場面です。これは本人もインサイトと認識していないかもしれません。
日時や場所、どんな時かなどの情報が絡んでいます。
・次に、ドライバーというか、上記の「感情を生み出す基となった要因」です。
例えば、診療機関での検査値が異常だった。
これは事実として隠しようもないことですが、その人は、それ以外の診療所では違う検査値を得たとすると、益々不安の感情が拡大することになります。
・さらに、「感情や気持ち、情緒」が要素となります。
例えば、先の例で言えば、万一、入院となったら生計をどう営もう、就業や就職は大丈夫だろうか、自分がやりたいことが出来なくなるなどと、普通の人は感情が高ぶります。
・最後に、不満や充足されない「背景」です。
自分が万一入院したら、家族が大変だ。何としても早く治療を受けて回復したい。それにはどうしたら良いかと、また新たな未充足な状態が発生する、という循環も普通に見られる背景です。
インサイトを探し出す方法
このインサイトは、本人も明白には分かっていない。
それを第三者がどう見つけるか、事業を営む企業のマーケティング担当者としては何とかしたいところです。
本人自身にも隠れていますので、インサイトの発見方法は、そう簡単なことではありません。
現在、行われている一般的な方法は、文章に穴をあけ、それを埋めさせる文章完成法とパネル参加者の行動を観察する行動観察法です。
前者は、例えば、「もし、私が入院したら・・・が心配です」の「・・・」に何を入れるか。それによって、隠れた不満や欲求が表現され、インサイトが顕示的に表現されると見る方法です。
後者は、パネラーの行動を観察することで、その人の一挙手一投足の非言語的情報から、その人の隠れた不満や欲求を察知する方法です。
どちらが良い悪いということでなく、むしろそこからの情報をどう読み取るかが問われることになります。参加する人の声(ヴォイス)とインサイトの4要素をどう組み合わせ(コンバイン)て、隠れた部分をいかに解読するかです。
ひとつのヒント
全体を先ほどの例で言えば、
最近体の調子が悪い「状況」がある。
そこで診療をうけたら、ある検査値が異常であることが明確になる「ドライバー」により、
自分が入院することになるのだろうかという「感情や情緒」の不安が生じている、
その背景は、入院や手術代の経済負担に自分が耐えられないのではないか、なんとしても治療を成功裡に終えることのできるドクターや薬を探したい。そこまで分かれば大躍進です。
このような筋書きになるとすれば、その人のインサイトがなんとなく浮き彫りとなり、企業として新しいアイデアや企画、新規事業のヒントになる。
それがうまく実現すれば、その企業にとっての救世主となるかもしれないので、世のマーケティング関係者が血眼でインサイトを探し求めているのがお分かりになると思います。
世の悩めるマーケティング担当者の方々、4つの要素に分解して考え直すと、企画やアイデア出しが少しは前進するかもしれません。乞う、朗報。
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