園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

場、異分野・異文化体験

豊富にアイデアを生むためには

Posted on 2015-02-12

 「アイデアがなかなか出てこない!!」と、悩む人がいるかと思えば、湧き出すほどのアイデア出しに恵まれている人も見かけます。私の近くの経営者の仲間にも、本人のアイデアが豊富過ぎて、社員が追い付けないほどの人もいます。

 勿論、アイデアが豊富なことと経営が上手いこととは直結しません。アイデアを活かす方法が下手な場合もあるかもしれません。このように活かし方が問題になるとしても、アイデアが豊富な人の方がビジネス上良い機会に恵まれる確率が高いと言っても間違いではないと思います。

 

「場」

 では、どうやったらアイデアが豊富に生まれるのでしょうか?

 私の経営体験から言えば、アイデアは突発的に出てくるものです。例えば、電車の中、お風呂の中などでアイデアが浮かぶことがよくあります。

 確かにこのように突発的に出てくることが多いとしても、その前段階でアイデア浮上のトリガーとなるある種の環境が必要ではないかと思っています。

 

環境

 その環境とは、異なる考え方を持った異分野の人々が参集して会話ができる「場」です。

 このような「場」で、何かが一定期間頭の中で醸成され、ある種のトリガーがきっかけとなり、現象として電車の中やお風呂の中で、突然アイデアとして出てくるのではないかと思います。無から何かは生じないからです。

 

フィレンツェの例

 昔、視察団の一員としてイタリアのフィレンツェの街を訪問したことがあります。15世紀のルネッサンスを起こした場所です。ここに金融業で財を成したメディチ家の関連の有名な美術館がありますが、周辺にも沢山の建築物や彫刻があります。街中の教会には著名な絵を観ることができ、時間を忘れるほどです。更に、ここから哲学や科学の新しい流れも生まれています。この土地で、よくぞこれほど沢山のアイデアが生まれたものだと感激しました。

 多種多様な人々が当時フィレンツェに集まる誘因があったのでしょう。すなわち、新しい知識や技法などを議論しながら学べる魅力的な「場」が、ヨーロッパ各地からの人々の交流の交差点として機能していたとしか言いようがありません。この「場」をつくったメディチ家の貢献が大きかったことになります。

 

現代の日本

 翻って、現在の日本を見ると、人々が新しいアイデアを生み出す誘因となる交差点に遭遇しにくい状況にあるのではないでしょうか。違うことを尊重し、そのもとで交流し議論できる「場」を作れるリーダーが少ないのかもしれません。あるいは、一般的に今の日本人自身が過去の成功に安住して、そのような新しい体験を欲しないからかもしれません。過去のパターンを踏襲して生きる方が楽です。

 何かを考える時、人は過去の出来事を想起します。人間の頭の中で反射的に作動するこの回路が、頭の中で動いているのです。ます。そうなると、体験や交流の少なさからくる新しい刺激の減少と相まって、想起するアイデアが益々貧困になり、これではアイデアの新規性は生まれなくなる悪循環に陥ります。

 

アイデア出しの豊富な人の共通点

 「場」の環境を考えてみると、アイデア出しの豊富な人には彼らが体験した環境に共通点がありそうです。

・まず彼らには世界中の異分野の文化に触れた経験があることが多いです。

 海外留学、遊学、海外で就業、海外旅行等なんでも結構ですが、数年損したつもりで、できれば若いうちに、このような体験を増やせる社会環境や教育制度を充実したいものです。

・第二に、既成の教育には無い学び方を経験している人です。

 普通の教育ルートに乗らず、これをはみ出して違う学びのルートを歩んだ人の発想に感服したことがあります。違う交流の場を体験した人の発想です。これも教育制度と関係しますが、一本道でなく複数の道も許容できる制度を主流として多様な価値観を持った人々の集団としたいものです。

・第三に、違う視点に立って物事を見る人です。

 道理にかなって物事が動いていたとしても、「何故?」と立ち止まる余裕のある人です。このような人は、違う角度から物事を見る努力をしています。ただし、意識してやらないと、先ほどの過去のパターンの踏襲の罠にはまりやすいので意識的な努力が必要です。

・第四に、自らの行動パターンを時々変化させている人です。

 行動が思考に少なからず影響を及ぼすのではないでしょうか。新しいアイデアが浮かぶ違う舞台で踊ってみることです。

 以上の通り、異分野間、異文化間の交差点こそアイデアの宝庫と見ます。この環境でこそ異なる概念や発想に出会い、卓越したアイデアが生まれる機会が多く自らのビジネスマン人生が更に豊かになるのではないでしょうか。