信頼関係
経営幹部の育成の道筋
どの会社でも、経営幹部にしっかりした人間がどれだけいるかが決め手です。
そのために単に技術的なことのみでなく、もっと本質的なところを身につけてもらいたいと考えます。How-toでなくWhyを議論出来る人間になってもらいたいです。
とにかく、正しい質問をすること
私の例です。ある会社を建て直すために「農耕型企業風土」づくりを通じて会社を成長・発展させる経営路線をとり、成功しました。この時にとった策を「フォ-ミュラ」と「18の定石」として二冊の本に纏めました(「これからの社長の仕事」http://sonoyama.ns-2.jp/)。
私は幹部育成の一環として「18の定石」をもとにしたこの内容を、少し言葉を変えて経営幹部に質問、常に正しい質問をすることにしていました。
自分自身やチームで回答をみつける
質問を投げかけるというこの方法の利点は、質問する側で論点の整理ができることです。また答える方が考えざるを得ないことです。更には、答える側で思考のプロセスが楽しめます。考え考え抜いていきますと、相手の良い意見に気づいたり、自分の知識の足りなさにも気づきます。
また考え方を狭く取ると答えが発展的でなくなり、もっと広がりを持った発想の必要性にも気づきます。これらの必要性については、皆頭の中では分かっているかもしれません。しかし、これを具体的に考え活用する機会を提供していくことで、幹部社員が成長していくものです。
あわせて、回答のプロセスを通じて仕事の面白さや仕事に対する愛着心を抱くことにも通じます。私の例ですと、自社の「サービスのデザイニング」と競合他社のそれとの比較について質問をすることで、幹部社員がチームで考えていく過程で、他にはないオリジナルな導線を見つけて大喜びをしている場面に接しました。他の部門ではやっていたが、それを上手くカスタマイズして会社全体のものに修正し導線を捜しあてたりすることで、そのチームが「わくわく元気」になったことを経験しています。それぐらい効果のあるやり方でした。
最後は信頼関係の基礎づくり
信頼というと信用とは少しニュアンスが違います。物事の善悪の判断は別にしても「あの人からの質問なら・・・」、「あの人の言うことなら・・・」、「あの人の恩義に報いたいので・・・」などの文言で表現されるように、信頼関係はその人とある種の無条件な依存関係をつくることになります。これ無くして、実際は革新的なことはできません。 質問の投げかけ、答える側の思考のプロセスの充実度も実はこの信頼関係を基にしています。
これは、私が『これからの社長の仕事』(http://sonoyama.ns-2.jp/)の定石11の「チーム」や「公」に貢献する、の項(P114)で、
・皆さん一緒に仲良くしましょうね、
・仲間外れをつくらないようにしましょうね、
・悪いことをしたら謝りましょう、
・困った人がいたら助けてあげましょう
と幼稚園の先生が園児に徹底する言葉を紹介しましたが、こうしないと相手からの信頼を得られないのではないかと思います。
すなわち、自分という個を押し殺して人を立てる気が、本心からあるか否かです。しかも、毎日の行動の積み重ねが大切です。これが成立しない状況を一度でもつくると、その修正は厳しいものになります。それくらい信頼と人間性が関係することとを認識して問題ないと考えます。
子供の世界だけでなく大人の世界でも同様です。園児に対するこれらの言葉を大人用に言い換えて言えばこうなります。チームを大事にする、相手に敬意を払う、助け船をだす、嘘はつかない、約束を守る、何かに縛られない自由な発想をする等ではないでしょうか。これらの他に信頼を深める方法は見つからないと考えます。それほど信頼は、人生の長い期間をかけて造り上げるものかもしれません。
信頼ができてこそ初めて「正しい質問の投げかけ」が本人の育成につながることになります。
定着率を上げ、離職率を下げるために
函数の帰結
「定着率と離職率は、社員の働く幸せ感、喜びの函数」です。
これは私の20年の経営経験から得た結論です。
離職には個々人のいろいろな理由があるにしても、社員に根源的には「わくわく元気」な環境をどれだけ作れるかに関係しています。
私は「農耕型企業風土」づくりの「フォーミュラ」の中で、企業が中期的に成長・発展するためには、社員の幸せ環境作りが先決で、企業の成長と社員の幸せとの関係で原因と結果を逆にすべきでないと説いてきました。
スタートは社員の幸せ環境作りにありです。
経営者の姿勢
社員の幸せ感を醸成するには、経営層の責任でまず働き甲斐のある職場環境づくりをすべきです。この環境とは会社の諸制度、仕組、評価等すべてを言います。
会社がうまくいかないのは「社員が仕事をしないからだ」等の言葉を経営者から聞くことがあります。
しかし、原因を他人のせいにしてもリーダーとしての甘さを露呈するのみで、全く発展性がありません。経営層が社員を育てようとする姿勢が欠如していることと裏腹の関係であると私は見ています。
やりがいのある仕事をさせれば、社員はさらに士気を高めレベルの高い仕事をする方向に向かいます。結果として、顧客は満足し会社の業績も伸び、社員の金銭的メリットも増加する関係となります。
特に、社員数が少ない企業においては、会社の成長はまさに人、社員次第ということになるのが鮮明に見えてきます。
留意すべきステップ
ここで留意すべきは、手順、ステップです。
私の著した『これからの社長の仕事』でステップを明示しましたが、意外に短絡的な方法を選ぶ経営者が多いのに気づきました。いろいろな課題が吹き出し会社が経営上厳しい段階で、会社が「社員がどういう時に幸せ感を抱くか」のことを優先的に考えず、いきなり顧客満足の実現をスタートとして取り組むとどう展開するかを経験しました。
顧客に良いサービスを提供するという大義名分のために、往々にして、最前線の社員に負荷が過大にかかることになります。教育もしていないのに最前線の社員に過大なスキルを要求し、レベルの高いパフォーマンスを要求していくことになりやすいのです。
一時的にはこのことで上手くいきますが、結果として、最前線の優秀な社員の「燃え尽き症候群」が起きて悪循環をきたし、このステップが破たんすることに気づきます。気づいた時にはすでに社内の混乱が輪をかけて進んで行ってしまうという悪いパターンになるのでご留意ください。
まず社員の幸せ感のことを十分考慮の上、適切なステップを踏むべきです。
「わくわく元気」感には「心」の問題が大きい
人はどういうことで「わくわく元気」感を持つのかも配慮しなければなりません。
金銭的報酬もある程度必要です。
でも、あるレベルを超えると、「心」の面に対する面の方がはるかに大事です。仕事に対するモチベーションです。朝起きて会社に行きたくなる「わくわく元気」モードになるには、心にどう配慮するかがポイントとなります。
日本人なら誰でも、どんなポジションの人でも人の役に立っているか否か、仕事を通じて自分が成長している感覚を抱けるか否か、仲間と一緒に仕事をして楽しめるか否かを基準に「わくわく元気」度が大きく変化するはずです。
「人の役に立っているか」には感謝の気持ちを伝える声掛けに私は努力していました。小さくとも、本心から「ありがとう」が大事です。部下からの週間報告書に、自筆でメモして私の感謝の気持ちを「見える化」することも務めていました。
実力より少し上の仕事をさせることで本人の成長感につながります。新しくマネージャーに任命された人には、「暫く、ボケッとしていなさい。現場のメンバーにいきなり口出ししないで、暫く仕事の様子を見ていなさい」と、上司が余計に手出し、口出ししないことも、注意していました。
仲間との絆の出発点は上司と部下の信頼関係が基本です。これは毎日の積み重ねで、しかも仕事を通じて勝ちうるものです。部下からすると、先に述べた「心」の部分に対するストロークを送られ続けているか否かに関係していくと思います。
これさえあれば、仕事のことで叱られても、本気で叱られたか、パフォーマンスで叱られたかがすぐにわかることになります。自分を成長させようと考えての叱りは部下から尊敬されます。
上司や仲間と一緒に仕事をして、良い人間関係の中で楽しく仕事ができることが肝要です。
経営幹部の育成のために、あなたはどう良い道筋をつけていますか?
とにかく、正しい質問をすること
私の体験です。「農耕型企業風土」づくりの経営路線を通じてある会社を建て直し、会社を成長・発展させることに成功しました。この時に実際に指導・採用した施策を本年書いた本で「フォ-ミュラ」と「18の定石」として纏めました(「これからの課長の仕事」「これからの社長の仕事」特設サイト)が、私は幹部育成の一環として、この本に記載した「18の定石」の説明の中で使った言葉を少しモディファイして、経営幹部に質問を投げかける方法をとることにしています。
この質問は大くくりに纏めると、顧客のファン化について、社員の幸せや成長実現について、サービスのデザイニングについて、経営者の理念の内容と覚悟について、チームの中での個人の成長についてのモラール・マネジメント等など、となりますが、「18の定石」が実現されるように質問する側が正しい質問をすることを心がけています。
自分自身やチームで回答をみつける
質問を投げかけるというこの方法の利点は、答える方が考えざるを得ないという点にあります。答える側で思考のプロセスを楽しめると同時に、回答のプロセスを通じて仕事の面白さや仕事に対する愛着心を抱くことにも通じます。
考え考え抜いていきますと、相手の良い意見に気づいたり、自分の知識の足りなさの限界にも気づきます。また、考え方を狭く取ると答えが発展的でなくなるので、もっと広がりを持った発想の必要性にも気づきます。
思考や発想の広がりの必要性は、皆頭の中では分かっているかもしれませんが、私の場合はこれを具体的に考え活用する機会を社員に提供していくことで、幹部社員の成長を促進していくものです。
私の例です。「サービスのデザインイング」について質問をすると彼らは、最初は難しそうな反応を示します。しかし、会社内の論理から消費者や利用者の論理に関することを質問すると、彼らは顧客に対するサービス導線の思考と行動の重要性にすぐ気づきます。気づいたサービス導線をチームで議論していく過程で個別顧客に対応でき、かつ広がりのあるオリジナルな導線を皆でみつけ大喜びをしている場面を見ました。他の部門では実行していたが、それを上手くカスタマイズした修正サービス導線を捜しあてたりすることで、そのチームが「わくわく元気」になったことも見てきました。それほど、正しい質問をすることは効果のあるやり方でした。
最後は信頼関係
信頼というと信用とは少しニュアンスが違います。
信用と違い信頼は、内容の善悪の判断は別にしても「あの人の言うことなら」、「あの人の恩義に報いたい」などの文言で表現されるように、信頼の関係はその人とある種の無条件な依存関係をつくることになります。
これは、私が『これからの社長の仕事』の定石11の「チーム」や「公」に貢献する、の項(P114)で、
- 皆さん一緒に仲良くしましょうね
- 仲間外れをつくらないようにしましょうね
- 悪いことをしたら謝りましょう
- 困った人がいたら助けてあげましょう
と幼稚園の先生が園児に徹底する言葉を紹介しましたが、こうしないと相手からの信頼を得られないのではないでしょうか。子供の世界だけでなく大人の世界でも同様です。園児に向けたこれらの言葉を、大人用に言い換えれば、チームを大事にする、相手に敬意を払う、困っている人(やチーム)には助け船をだす、嘘はつかない、約束を守る、何かに縛られない自由な発想をする等ではないでしょうか。
これらの外に、信頼を深める方法は見つからないと考えます。信頼とは、それほど人生の長い期間をかけて日常の一挙手一投足から造り上げるものなのかもしれません。
あなたは「信頼」されている自信がありますか?
発する「言葉」と「行動」にもとづく信頼関係
原子力のストレステストの実施が管前政権で打ち出され、現野田政権もその方針を踏襲していますが、政権の政策判断に国民にはまったく納得感がないのはなぜでしょう。政権のこれまでの主張と行動のブレが影響し、政府が発信する言葉に信頼性がほとんどないからです。
新しい安全規制値を設定したと言っても、いわゆる「原子力村」の仲間のみで議論した数値とみられ、大多数の国民が「どうせ天下りというメリットを受けるため」の仲間内の判断や「ためにする」決定という印象を抱いているのではないでしょうか。
また、民主党が実行しようと躍起になっている消費税の改定はそもそも国民との約束違反ですが、それを半歩譲っても消費税増税の合理的理由が、国民の間には半煮え状態でしか伝わっていません。この件に関しては、われわれに「自分たちは税金で国を支えている主権民の一人である」という認識が欠如しているところにも原因があります。「一身独立して一国独立す」と福沢諭吉は説いていますが、国民の自主性、主体性がないところに国のレベルアップはありえないという趣旨、が胸にグサリと刺さります。
そのような国民側の意識と行動にも課題が多いとしても、政府が参議院を通過させようと躍起になっている増税に納得感を感じている国民が少ないのは何故でしょうか?
「信頼」からくるリスペクトこそ運営のキー
要は、政治の責任を持っている人と国民との間に信頼関係がないことが問題なのです。
そのような背景があるところには、政策決定事項へのリスペクトは生まれにくいものです。今や、これらの政策自体に加えて、国民の間では民主党の議員個々人に対するリスペクトまでが失われてしまっている状態を、どう考えるかです(注、私は特定の政党とは一切関係ありません)。
企業で言えば組織内の上下の信頼関係です。
今年の初めに書いた「これからの社長の仕事」で私は、「農耕型企業風土」づくりで企業を中期的に発展させる「フォーミュラ」を打ち出しました。この「フォーミュラ」を、企業を成長・発展させるための評価プログラムに今回仕立て上げていますが、上司の発する「言葉」と「行動」にもとづく社員との信頼関係が、このプログラムの中で一つのキー要因となっています。
信頼を勝ち取るためには、うわべだけの約束でなく、社長が「自分は本当にこう思う」ことを本心で語ることです。どこかの政治家のように、上辺だけの言葉を仮に発するとすれば、それはすぐ偽物と部下に見破られます。
目標実現に向けて社長が社員を叱咤激励したり、社員を厳しく叱る場面も時には発生します。
また社員も、社長や幹部に対して苦言も含めた意見をどんどん言っていくこともあるでしょう。それぞれの立場が彼らにいろいろなことを言わせることがあります。けれども、双方が「自分はこう思う」と真実を本当に吐露する「場」があるならば、理解が深まります。この相互作用でその企業が正常に発展していくのです。心の上に着ている洋服を取り除いて裸で話し合うことで、叱って指示する社長と意見を言う社員の双方に、互いに対するリスペクトが生まれてきます。
聴く耳を持ち、相手の話を聴き、約束を遵守し、本心で対話をする努力をすることで、経営層と社員の一枚岩が絵に描いた餅でなく、実質的なものになっていきます。
しかし、たとえどんなに小さくても「言葉」や「行動」に嘘や約束違反があれば社員はそれを簡単に見抜き、一挙に信頼関係に齟齬が生じることを、くれぐれも忘れないでください。「小事大事」と私も常に心しています。
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