五感
第158回 人生を豊かに生きる
新しい技術進歩の中で、私などの年齢層では人々の振る舞いに戸惑うことが最近多くなりました。常時スマホを離さない人が驚くほど多くなっています。電車の中を見回すと、車中の7割以上の人が乗車するとすぐにスマホを取り出して、何をするともなくそれを見ている光景が日常的になりました。
どこかの大学の学長が新入学生への挨拶で、「スマホを捨てますか?それとも当大学の学生を捨てますか?」との主旨のことを述べたと報道で伝えられ、学生のスマホ利用に警鐘を鳴らすほどになっています。
どうしてでしょう。そんなに情報が欲しいのでしょうか?それとも、そうしないと安心感が持てないからでしょうか。
知恵と直感力
新しい情報に遭遇する喜びは分かります。他方、時間をこのように使って、これで自分の人生の豊かさを感じられるか、私には大いに疑問です。
情報が入りすぎてこれを料理するのが大変だと感じます。本来人間は、自己の内なる知恵を働かせて、自ら考えて世の中の諸事象に的確に対処できる動物のはずです。しかも、この中にこそ本当に「生きている」と感じるカギがあるはずです。
知恵と直観力です。この状態を味わうため、時には、スマホから離れて自然体になるのも必要ではないでしょうか。現代文明から離れて、自分の五感が働く環境に身をゆだねる経験も楽しいものです。
私は、時々人里離れた山の中に入り、風の音、夏草の臭い、動物の啼き声、鳥のさえずりなどを肌で感じて、情報や技術の奴隷にならない努力をしています。スマホも利用しない、それらに気をそらされない、その中で普段見逃しているものを五感の力で探りあてる喜び、直観力や感性の豊かさに身をゆだねる生き方です。
金と権力と成功
何故、そのような生き方が普通でなくなったのでしょうか?それは、成功イコール金と権力であるとの大方の考え方と関係しているように思います。
このような考え方は、少なくとも今のアメリカや一部の国では一般的な考え方かもしれません。数十年前にアメリカで新自由主義派が台頭し権力を握り始めてから、この傾向が強くなりました。
その結果、富めるものと貧しい者との格差が大きくなり、また、富める者は更に富を蓄積するために家族の犠牲を顧みず寝食を忘れて働きつめ、時には理性を忘れて賄賂の罠に嵌っても冨の蓄積に貪欲になる残念な行為を見ることになりました。これらの習慣や行為によるストレスや鬱は今や社会問題化していると言っても過言ではありません。
上記の傾向に対して、私は人間の成功は、いかに誠実に生き、他の人からの信頼を得るかだと考えています。
このことは別項で述べましたので詳細は省略しますが、アメリカ流の成功の考え方や生き方が本当に幸せなのかを、今こそ国民全体で真剣に考える良い時期かもしれません。
新自由主義派の影響で、日本にも成功イコール金と権力であるとの考え方が浸食してきていますが、私は何とかこの傾向が極端になることだけは食い止めたいと考える一人です。
生き方
個人が自ら、人生の生き方をもっと深く考え問い詰めてはどうでしょう。学校でもそのような教育を早い段階でやるべきです。
先のこと、将来のことを心配するよりは、今生きていることの幸せに重点を置いて発想する習慣づけです。カネや権力は一時の物で、持続できません。それよりは、毎日、その時間、目の前のことを一生懸命に生きることに集中する方が幸せに近づくように思います。
施す
自分で心が豊かになり幸せ感を抱く体験の一つは、施すことだと私は考えています。与えることで、自分の心が豊かになるように感じます。
私自身、あるゴルフクラブの自主再建のために、今後の事業施策を立案ことなどにこれから努力をするつもりです。経営の健全化を図り、若い方々が、自分が関係するクラブに誇りを持ち、クラブライフをエンジョイできる環境を作るために、私のこれまでの経営経験の知恵を施せないかと勝手に考えています。この役目はまだ走り出したばかりですが、常に、何かを手に入れることのみ考えて、カネと権力を持つ経験がいかに心の豊かさから程遠いかを、これまで見聞・体験して知りました。これぞ生きるに値する方法かも知れません。
今を大切に
この生き方は普通の生き方、すなわち、他の人の動向、氾濫する情報などに阻害されず、自分の内から湧く創造性を大事にできる生き方に通じると考えます。ストレスからの解放にもつながります。
何か他のことに心の平安が乱されることなく、心の内面が平穏になり、心のスペースが広がる生き方だと思います。私は瞑想をしますが、静寂の中で心と仲良くできる心境を味わいます。ゾーンとまでは言いませんが、少なくとも心の安心感が抜群な状態です。また私は茶室の中での静寂が大好きです。自然の中に心が向き、創造力が豊かになるような感じを抱きます。
先や将来のことのみ心配せず、今あることを良しとして、あるがままの状態を如何に充実させるかを念頭に置いた生き方に努力をしています。
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