園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

事実

第219回 時代の流れを読む

Posted on 2016-09-22

 事業を経営している人は、世の中、特に経済の先行きは常にウオッチしていると思います。それぞれの流儀があると思いますが、私は、なるべく「潮流の変化」を捉えることに重点を置き、ウオッチを単純にしています。短期的な変動に迷わされないで、大きな変わり目、潮流の異変を捉えることが戦略立案上不可欠だからです。

 

1.まず、絶対的な事実を軽視しない。

 例えば、日本では「人口が減少」し、「少子・高齢化」が確実に進んでいく事実です。自分が関係している事業にどう影響を及ぼすか、プラス面とマイナス面を常に見ることです。

 政府が平均1.8人の出生率を望んで国民に掛け声をかけています。日本の経済を支え、内外で活躍している女性の社会進出が喧伝されていますが、さらにこの現象が加速するのは、彼女らの未婚や晩婚の考え方自体を覆させるに足る国家的な施策が無い限り、簡単なことではありません。独身の方が楽だと、仕事に打ち込みたいその気持ちを、どう出産や育児と両立できるようにさせられるかです。

 人口の減少を食い止めるため、気兼ねなく周囲のサポートがもらえる社会環境整備を含めた行政のいろいろな施策が不可欠な時代になります。人口の減少に伴う政府の施策を予測し、それをプラスとするかマイナスととらえるかで、ご自身の戦略が大きく違います。いずれにしろ、このような事実をまず冷静にとらえなければなりません。

 今の平均年齢が100才になるのもまた現実的な事実だとすると、介護関連商品などのみならず、高齢化のスピ-ドが高齢化社会を背景とした、特定分野での医療技術の進歩に大きく影響を及ぼすと考えます。そういう技術革新の事実をしっかり捉え、ビジネスチャンスを掴む発想をしなければなりません。

 

2.技術進歩の流れを常に見る。 

 AIロボットの技術革新が、自らの事業に今後大きく影響すると考えています。

 すなわち、知恵の世界にAIが入り込み、人間の知恵をサポートし最適な判断が瞬時に出来るようになります。自動車の自動運転がこの一つです。20年前には、これが現実的にできるとは、私は想像もしませんでした。しかし、技術が進歩し現実に起きている事実です。

 沢山のデータからある傾向や影響する因子を探し出すビッグデータ関連のAI技術の流れも、ある意味で革新的です。これまで推量の世界だったものを、実際の膨大なデータからある事実として傾向を出せることになりました。しかも、ほとんど瞬時に。これもまさに「潮流の変化」です。

 ロボットで作業すると、人間の工数が減ることになり、雇用市場に大きな影響を及ぼします。メーカーなどではこの威力がすでに出ています。今後確実にサービス業の分野でも、AIの影響が出てきます。将来、無くなるか、それほどの雇用を吸収しなくなる業種も出てくることになります。今から予測して対応しておかなければなりません。

 

3.経済統計の意図や他のデータを組み合わせて見る。 

 統計は如何様にも作りようがあることを前提に、そのデータを見ます。しかも、特定の時点で見るのでなく傾向を見ると、統計の裏側も読め、統計担当者の「意図」が薄れて、実態を映した姿が読める気がしてきます。

 政府の統計、新聞の報道にも意図があり、特定の指標を大見出しで出します。自らの事業に関するデータをあらかじめ決めて、そのデータを継続的に追うことで、「潮流の変化」がより捉えやすくなります。

 例として、経済の指標としてのGDPの速報値が出ます。一般論でなく、これを構成する特定の詳細項目を自分の事業と照らし合わせてみるかが重要です。更に、生活者が実際に感じている生活観やビジネス世界の経営者の感じ方と上記の特定データを重ね合わせてみると、全体の景色と自らの事業を取り巻く景色の落差が鮮明に分かります。マクロで見る景色との差は、以後の施策に大きな影響を及ぼすからです。

 経営者の、先行きどうなると思うかの将来観としてDI方式があります。これで見るかぎり、日本の経済成長力はそう高く出ていません。株式をやっている人なら、日経平均の指標を常にウオッチしていると思います。日経平均が2.7万円台になり大喜びで、日本がデフレから脱却した錯覚を覚える、海外の投資家も日本の株に投資をし出したと安易に考える。ところが公表されている他の数字と組み合わせてみると、「2.7万円位何故喜ぶの?」と問いたい。2.7万円台の今の株式相場も、ある意味で作られた相場だということが分かります。日銀がじゃぶじゃぶ日銀券を印刷してばら撒くと、期待感も含めて一時的に金の行く先が株式市場に回り、日経平均を押し上げるのは当然と読まなければなりません。逆に、日銀のポンプからの水が少なくなっても相場は大丈夫か否かを気にする読みが大切です。DI指標と重ね合わせて観ると、疑問に対するより良い見方ができます。

 経済や時代の潮流の変化を読む。これがビジネスマンにとってこれまで以上に肝要なことだと考えます。

 

人を育てる-営業人材の育て方(2)

Posted on 2013-11-07

営業として必要と考える力についての前回からの続きです。

3.お客様が得をすることを事実で呈示できる力

 Aランク入り、すなわち購入の最終段階になったお客様に選択の自由度を与えても、なおかつ決断に至らない場合が沢山あります。当然のことです。購入する商品やサービスが高価で、しかも、会社にとっての重要度が高ければ高いほど、お客様はこれまでの提案内容や営業マンの発言の裏付け事実を望みます。

 この営業マンは、その購入をすることによりお客様が得をすることにつながるということを、事実で示さなければなりません。この場合、他社での実績や本人の納得感は何にも代えがたいものです。

 「是非、xy会社にご確認ください。」と、まず第三者から実績を証明してもらうことです。「スケールを落として一度トライアルをしてみませんか?上手くいく自信がありますが、万一ダメな場合は一部の費用をご返金しますので。」などお客様の感情に訴えつつも、納得感を持ってもらいトライアル事実で自らの営業行為の正しさをお客様に呈示する力を蓄える訓練を必要とします。

 

4.何を売るかを考える力

 昔、私が関係していた会社でのサービス商品の一つに「xxシズル」の名前を冠した海外向けのある商品を持っていました。事情により海外展開を断念せざるを得なかったので、この商品も発売を止めましましたが、この商品感覚を以後も非常に大事にしていました。

 ステーキが「ジュージュー」と音を立てている状態で自分の席に出される場合がありますが、この状態を「シズル」と言います。すなわち、ステーキを出すというより、この「シズル」感を店の売りとしてお客様を魅了することを営業に伝えたいのです。 あらゆる商品にシズル感は隠されていると思います。

 このシズル感を営業マンがどうお客様に提供できるのかが、営業の良し悪しに関係あると考えます。業界や業種により商品は違うとしても、その商品自体と伴に、利用にあたっての臨場感をお客様の感性に訴求させる力の有無が営業の勝負ではないでしょうか。

 

5.一つの事象に他のことを添える力

これも営業指導の中に入れていました。お客様から受けた注文に対して注文の範囲を超えた何かを添えてお客様に応える力です。

 杓子定規に注文の範囲を絶対超えない売り方もありますが、注文商品の枠を超え、何かを添えてお客様をひきつけるのもこれまた営業の力です。

 注文サービスに添えて、注文の仕様外の分析資料を添えるなど一つの例です。個人の誕生日に「おめでとう!」との声に花束を添えられるとうれしく思うのと同様です。添えるには相手側が「!!」と驚くようなものが望ましいでしょう。添えるものは、先ほどのように分析資料というものであったり、先々のことを見越した参考データであったり、お客様の置かれた状況に即して添えるものを考えたいものです。

 

6.声の調子に幅をもたせる力

 穏やかな調子のいつもの営業トークも、何か決定的な段階では明らかに声のトーンに変化を持たせる工夫です。商品によっては、お客様はごく短期間に購入の決断をします。そのようなタイミングになったとき琴線に触れるフレーズを、声の調子を変えて発することです。

 私の例ですと、大きなクレームの処理提案の時でした。お客様が困惑され一緒に何かの解決策を至急見出そうと議論している最中のこと、お客様自身からあるヒントをいただいた時のことです。「それです!それを解決のコンセプトの中心に据えて、処理スキームを至急一緒に練りましょう」と、声のトーンを普段と全く変えて説得し、お客様の決断を得た記憶があります。余り人為的ではまずいのですが、声の調子に幅を持たせ、お客様に訴える力が欲しいものです。

以上、営業人材が身につけるべき力について触れましたが、ご参考になれば幸いです。

 

 

人を育てる-営業人材の育て方(1)

Posted on 2013-10-31

私は、残念ながら営業のイロハを最初から体系的に教わったことがありません。現在営業職をされている方々も、大半は私と同様の状況かもしれません。

 私自身、いろいろな経験を積み重ねて営業の極意なるものを会得したところがありますが、最初に営業の教育を体系的に受けていれば、もっとスピード感を持って会社の成長に貢献できたかもしれないと、今でも思っています。

 営業こそ人材教育がきわめて重要な分野だと私は常日頃考えています。日本の経営者の中には「営業は誰にでもできる」と発想している人が多いかもしれませんが、これは完全に間違いだと思います。

 営業の分野で天才的な人は別として、大半の営業マンは教育研修で成長するものだと私は考えています。また、天才的な人々も蔭では相当自己学習に努めて、営業レベルをさらに高める自己努力をしているのだと思います。

 私は、CSK(現SCSK)の故大川会長からある会社の経営を託され、この会社を再建、成長・発展させていくため、企画にも専念しました。「顧客満足」、「クレーム対応の理論」や「コールセンター」の概念や、実践手法などを日本に持ちこむ努力をした一人だと自認していますが、会社の業績を上げるに当たり直面したのは、営業のパワー不足でした。

 特に気になったのが営業の部下の育成方法です。調べてみると、上司の過去の自己体験でしか指導していないことがわかりました。このことに気づいてからは、営業という仕事に対して特段の力を注いでいきました。

 営業のキーとなる人材には、営業同行も含めて自ら指導に当たることもありましたが、時間に制約があります。そこで営業研修の体系化を、営業実績を上げている優秀な部下に委託して作成してもらい、これを毎年レベルアップしていきました。この結果、ある時期になると、その会社の営業マンが競合会社から一目も二目も置かれ、時に、「あなたの会社の営業を一番恐れていました。」と聞き及び、私としては当然の結果だとほくそえんでいたことを記憶しています。

 体系化や指導にあたって皆様のお役に立ちそうな部分をここに紹介します。営業として商売をしていくには、以下の力が必要になると考えます。

 

1. お客様の購入意欲がどの段階かを見極める力

営業活動を一つの流れ(フロー)とみる視点での営業を指導していました。

 営業案件をお客様の興味が示した段階から、1月以内に結実しそうなAランク段階まで、A、B、C、Dランクとし、各案件の営業活動を毎月明示させていました。それによってして営業マン本人とその上司が常に状況をリマインドでき、なるべく早くAランク入りを果たし商売を完結するための必要な措置を講じるようにしていました。

 個別のお客様が今どの段階にいるかを見極めて、必要な措置を必要なタイミングで講じるためです。この詳細内容は省きますが、ポイントはたくさんの営業案件を持ちながら、なかなか受注までこぎつけない営業マンの存在でした。本人にお客様の購入意欲が今どの段階にあるかを常にウォッチし、購入意欲の段階を見極めるクセが身についていないからです。

 一般的に我々は、食・衣に始まって身を守るための住が満足した後、レジャーや観光旅行などに移る習慣が本能的にあります。この習慣に合わせて販売する商品をマッチさせなければならないのと同様です。

 上記の場合は、営業マンという売り手の売りたい気持ちのみで、相手側の買いたい意欲度の段階を見極める力を訓練などで教えてもらわなかったのが一因です。

 

2.お客様に選択をしてもらう力

お客様の購入意欲が高い段階まで来た時に、先ほどの営業マンは受注を急ぐあまり顧客に迫るクセがありました。

 言葉こそ厳しくはないのですが、お客様が買うか買わないかを婉曲的に聞く話し方をしているのです。相手からすると迫られている印象をもたれかねません。さらに、今買うべきと、購入を自分の都合で半ば強要するように聞こえることがありました。

非常にまずい営業のやり方です。自分が顧客の立場であれば、自分で選択したいのが一般的です。自らが合理的な判断で決断をしたことを、誰でも自分に納得させたいからです。にもかかわらず、売り手から買うことを強要されたのでは、逆に、お客様は引いてしまいます。

お客様に選択をさせるのです。「このサービスのうちのどれが気に入りましたか?」「業務の開始時期をいつからにしましょうか?来月ならセンターに無理を言って枠を取らせますが、いかがいたしましょうか?」「どのような対応方法を望まれますか?ネット系での対応も同時にしますか?」と、これまでの提案の中からお客様に選択してもらう質問を出すことです。