レベルアップ
第182回 嘘のような話――こんな上司の下で、部下が仕事をできるのでしょうか?(2)
前回からの続きです。
クラブの経営の諸問題とその解決案の趣旨内容のまとめ
上記と並行して、Y氏はクラブの委員会活動を通じてこのクラブの経営上の諸問題を分析して、それに対する解決案を相当の日数をかけてまとめ上げ、理事会で報告をし、理事各位の意見を集約している最中だったようです。それを理事会で決定して、これまで長年先送りされていた諸課題を順次に解決することで、クラブを将来の安定経営軌道にのせる策を具体化させる矢先でした。
当然その中に、Web営業施策を自社社員で運営することで、値付けの実質的決定権や営業行為の自主運営も入っておりました。この実行部隊の主たる役割を果たすのに先のS氏などを想定していました。
S氏の批判を吹聴する上司のA理事の奇妙な論理
ところが、採用責任者で、S氏の指導にあたる立場の直属の上司のA理事が突然、S氏のやっていることは「大したことでないことが分かった。N氏などもそう言っている」、「他の給料の安い社員でも対応できる程度だ」などの趣旨を発言し出し、これを他の責任あるポジションの理事に喧伝したと思える節が出てきたのです。
Y氏には、晴天の霹靂でした。
そもそもここ2年間、移行のために見える具体的な努力を何もせず、S氏を採用して初めて、現契約でコンサルが実施している業務の内容がプロの眼から明らかになったことを喜ばないといけない立場のこの責任者が、先の発言をしたことに、余りの驚きで当方正直開いた口がふさがりませんでした。
論理が全く逆だからです。容易な業務なら、何故そんなに高額のコンサルタント料金を2年間も払い続けてきて、それから脱極の具体策を何も講じなかったのかの不作為が問われます。
むしろ、容易なら移行がしやすいことを、S氏が入社し彼がミッション(仕事)を遂行したことで明確になって嬉しいと、S氏に感謝しなければならない立場の筈です。私が上司ならずとも普通の人はそう思います。
A理事の発言などを聞くと、「これぐらいの業務なら他の人で十分」、「彼は他の人とのコミュニケーションが良くない」、「報告の内容に深さが無い」などなどの内容でした。S氏を排除するための論理から出発していると思われる内容とのことでした。
挙句の果てに、事務現場の業務を通じてS氏と一度も現接点を持ったことのない、他の責任あるポジションの理事の方々までも、A理事の評価に口裏を合わせたごとく同じ内容でS氏を批判し、彼の人格を全面否定する内容の報告書を挙げる始末の由。
ゴルフ場と言わず普通の組織のトップ層が、公文書として社員を個人攻撃する内容の文面を出す恥じらいすら感じない内容を、Y氏は目にしたようです。
現場の社員を育成し、現場を強くする考えなどみじんも感じられないほどの内容とのことです。その内容のひどさは、Y氏ならずとも、他の会員が読んだら、何かの作為的な意図を感じる内容のようです。
およそ、新人を正式に雇用したら、上司によるしっかりとしたマネジメントがあるべきなのに、それがないまま、突然、だめ押しする上司や組織などあるのでしょうか。
N氏をはじめ現場の特定の人からの悪口情報を丸呑みにしたのか、S氏のようなレベルの高い人が入ることで力量がばれるとでも思い、裏で「排除の論理」を操作したのか、A理事が使いにくいと思ったかは一切不明ですが、それにしてもマネジメント側の責任は全く不問とは、働く部下こそが可哀そうです。
普通の組織では、まず上位の人びとが率先して責任を感じるのですが、こちらはこの常識とは全く逆、全て、「下が悪い」の論理と見受けます。
コミュニケーションは双方の責任と努力でグレードアップ
S氏が入社後のコミュニケーションの良し悪しは、通常本人と上司双方の責任です。
長年の経営経験があるY氏には、一方だけが全面的に悪いというA氏やN氏の考えが、組織のリーダーとして余りに素人的にしか映らない模様です。 双方の価値観の違いや仕事のやり方に関して意見を戦わせながらそれらを解決するのが、マネジメントのイロハだからです。
自分がんなに立派な人間かは分かりませんが、もし、このようなことがクラブの経営層に日常的にはびこっているとしたら、今後クラブや会員がどうなるかは自明です。
そもそも何故、何の目的にS氏を採用したのか?移行が目的ならより大事なことは、コンサルタントからのスムーズな移行が出来る素養を持った人なのかの評価がポイントなのに、それの視点には全く触れず、S氏の人格の全否定の個人攻撃のみ。
環境が人を育てる
そんな環境で人が育つのでしょうか?
既存の社員のレベル以上の異質な人を入社させないで、どうして組織がレベルアップし、改革等出来るのでしょうか。現状の現場の人より潜在能力が高く異質な能力を持った人が入社しないことには、この組織がだんだんグレードダウンすることにつながる傾向が出ることが多いことが、Y氏には経営経験で分かったようです。
解雇通告
入社から3か月後の10月過ぎに、財務担当のA常勤理事からS氏に解雇通告が出されたと聞きました。これに対して、S氏は解雇の理由が相当でないと考えていると外聞しました。
このような経営をしていると、会員の不満足度があがることにつながることこそがクラブの根本的な問題であることを、常識人たるS氏は分かっていると推察します。
S氏は不当解雇としてクラブの経営層に反省を促すという姿勢を見せているのではないでしょうか。働く意思があるので解雇通告後の翌日も出勤して訴えていると聞きます。
結果として、クラブのWeb営業の自主運営の目標が、また先送りで元の木阿弥状態になりかねません。
もし、皆様がこうなったら・・・
もし皆様が、新しい職場で上司から何の具体的な指導もなく、潜在的な力を見抜く力のない上司や周囲の取り巻きの批判意見のみを汲むような職場環境で、毎日駄目だしされているとしたら、社員として前向きに働くエネルギーが湧くのでしょうか?
この組織を良くしようとの「志」を持ったS氏のような人を、このような扱いにしてよいのでしょうか?
嘘のような話ですが、Y氏から聞いた話です。
皆様がこのような上司にならないために書きました。「志」を削ぐのは簡単です。しかし、「志」を持った人を見つけ、異質性を組織に導入するのは卓越したリーダーシップが必要です。
蛇足ですが、ある月の理事会の議事録を決議通り記載せず、違う書き方をしていたことにも、Y氏は驚愕しました。
前月の理事会で、ある月からコンサルタント会社の業務移行をすべく契約解除の通知をする主旨の決定と手順を決めておきながら、何と議事録には、違う記載があったのです。この記載には、議事録を作成する側に今後持っていこうとするストーリーとの矛盾をきたさないように表現を変え、気づかれないうちに議事録を承認させようとしたのではないかとの悪意を感じたと、Y氏は言います。そうであれば、貴重な時間を削り理事会に出席して意見を述べた方々にあまりにも失礼ではないでしょうか。
当然Y氏は議事録が違うことを指摘しました。それに対して特定の方向に持っていきたい責任あるポジションの理事陣からいろいろ説明がなられても、S氏の個人批判のみで、本件の違う記載とは言々の違う話で、Y氏は全く納得いかなかったとのことです。
このようのことが公の組織で実際に行われているこの事実も、皆さん他山の石とすべきです。
組織が破たんをきたすのは、「志」をもった方々が既存の体制や陣容に圧殺されるからです。マネジメントが何たるか、どのような組織が中・長期的な発展につながるかを、本コラムをお読みの皆様、是非お考えいただきたいと思います。
閑話休題を、お読みいただきありがとうございました。
第181回 嘘のような話――こんな上司の下で、部下が仕事をできるのでしょうか?(1)
これは最近どこかで現実に起きたと聞く話です。
まさかと思われる人もいるかと思いますが、未だに、こんな経営をしている団体があることがY氏からの話で分かり、いたたまれない驚きを覚え、今日コラムにあげました。
2回に分けて記載します。
是非、上司たる者、経営者の方々、この団体を良くしようという「志」をもって取り組んだY氏やS氏の話と行動を、他山の石としていただければ幸いです。
他力依存と思われるこのゴルフ場
どこかにあるこのゴルフクラブは、ここ数年資金不足といろいろな不祥事が起き、経営不安の風評が会員間に広まり、驚くべき数の退会者を出すことになりました。
結果として退会会員の預託金の支払いができず、経営不安に輪をかけました。過去の会員から預託金支払いの裁判を起こされる状況も出てきましたが、退会者の一部に、個別に預託金の支払を免除・猶予してもらい、何とか資金の不足をカバーしてきたようです。
かかる状況下、営業、特に、Web営業の最も重要な部分を第三者のコンサルタント会社に委託し、価格政策など営業の重要な部分のほとんどを実質的にこのコンサルタントに依存、すなわち、実質的に経営の重要部分は、契約上利益責任を持たない第三者に託したままの他力依存状態になっていたようです。
集客のためプレー費の値段をどんどん下げ、周辺競合社間では実質的な低価格リーダーとの評価で、沢山のビジターを入れる状態でした。コンサルタント会社には満足する契約の仕立てになっています。しかし、クラブとして利益を出すために、とにかくビジターを入れ込み混雑でプレーに時間がかかるなど、会員の満足度は下がる一方で、この経営に諦めた会員がまた退会する羽目になっていたようです。
中期経営計画の骨子の趣旨内容の詰めで将来構想を練ることへの反応薄
この頃Y氏に、ある人から理事の依頼が来ました。クラブの中期経営計画の策定などの道筋をつけて自主再建をするために、引き受けて欲しいとの依頼に、Y氏は引き受けざるを得ない破目になり、何とか大車輪でクラブのために責任を果たしてきたようです。
Y氏やほかの会員からの情報によれば、総会での理事の選任もほとんど裏取引のやらせの世界に見え、一般的な意味で公明正大と言える方法ではなかったようですが、本題から逸れるのでこれには今回は触れません。
早速、Y氏はクラブの委員会活動を通じて中期経営計画の骨子の内容を理事会にあげました。この骨子の摺合せ無くしては、実のある中期計画の策定などに無理があることなど、経営したことがある人なら誰の眼にも明らかですが、以前からそのポジションにいた既存の責任ある理事の肩書を持つ方々の反応が何とも薄い。
この骨子を詰めましょうと言う新任の理事が若干いても、実質的に経営に深くかかわっている件の理事陣が反応薄というその経営センスを見て、過去の経営不安の根本原因は、理事陣の不作為に負う部分が多いのではなかったのではないかと推察すると同時に、経営の専門家がいないと思えるこのクラブの会員が、会員たる権利が満たされないでいる不満を肌でに感じ、Y氏は何とか軌道修正を図るべく努力をしてきたとのことです。
Web営業の自主運営の道筋――システム担当能力のある人物の紹介
先ほど述べた通り、Web営業全般を第三者のコンサルタント会社に全面委託して既に2年経過。未だに多額の金を支払っている状況でした。
この事態に対して、Y氏は早期に経営の要の営業行為を自主経営にすべきとの提案と同時に、Web営業を上手く移行するにはシステム経験者が必要と考え、適任者を採用できるよう複数の候補者から絞ってS氏をクラブに紹介をしました。
Y氏は、数か月前から計画していた海外旅行中だったようですが、旅行先の合間を使って日本にいる友人に採用候補を捜してもらい絞り込み、帰国後面接してS氏をクラブに紹介しました。ゴルフ場での経験は無いとしてもシステムのベテランで、しかも最近のスマホなどの技術にも詳しい男で、横浜から約1時間半かけて通勤してでも、このクラブの自主経営のために努力しようと秘めたる決意をもっていた優秀な男です。
Y氏がS氏を中心にWeb営業行為の移行の考えを説明すると、責任あるポストの理事陣から予想通りいろいろな反応と反対がありました。
Y氏は確信していました。このクラブにはシステムを分かる人が必要であると。そこで、そのシステムの理解が深い人を中心としてWeb営業を自主運営に移管する主たる役割を担わせることが適当と考え、この目的でY氏は財務担当で面接責任者のA氏などにS氏を引き合わせました。
ところで、ここに登場する人物は、Y氏の他、財務担当でゴルフクラブに常駐し採用責任もある理事A氏、実質A氏の指示で動く支配人代行のN氏、A氏の影響下にあるように行動する責任ポジションの役員数人です。
正規の雇用の手順――条件の確認
採用責任者のA理事と正規の面接より前にS氏の年俸も打ち合わせ、S氏の面接を正規のルートで行いました。Y氏は立会人として、面接を見守る立場。A理事は「理事長でなく自分で年俸や採用を決定できる。」と、豪語していたのもこの時期でした。
奇妙なことが発生したようです。A理事の採用面接を経て採用決定になってから、S氏から「Yさんからの話と条件が違う」とクレームがありました。驚いたY氏が激怒してA氏に電話で確認したところ、A理事が自分で判断したとのこと。
この分野は引っ張りだこで一般的にはS氏なら1000万円の相場が払われても不思議はないものを、何とか苦しいクラブの台所事情に配慮してもらい年俸x百万円でS氏も納得したのに、A理事がそれより50万円低い金額にしていたことが分かったのです。
Y氏はメモを取る習慣があり、そのメモを見てもA氏や責任ある理事の方々もこの金額を納得済みであったことは間違いありません。というより責任ある他の理事の方々は、クラブの先行きのためこの採用の重要性を認識が薄かったのではないかとしか思えません。
そこで、Y氏はA理事と電話で話し、既に組織として採用責任当者がx万円を言い渡しているのであれば、解決策として試用期間の3か月後に当初の約束通りの金額に戻すことで話を軌道に乗せたとのことです。
ともかく、雇用の重要な条件確認を、採用担当のA理事が失念したのが、以後の諸々のトラブルの原因といえます。
S氏の当面のミッション(仕事)
S氏の当面のミッション(仕事)は難しいものだと推測されます。
契約しているコンサルタントが常駐していたので、A理事の判断でシステム担当ということで、常駐のコンサルタントの傍に座り、言葉は悪いのですが彼らのノウハウを盗むというものです。コンサルタントが何をどうしているかを、事前にある程度知る必要があるからです。
当然のことで、コンサルタントは察知します。契約が無くならないように、ノウハウをブロックしようとするのでしょうが、その環境下でも相手から情報を得るというのがS氏のミッション(仕事)とすることで、Y氏はA理事をはじめ他の責任ある理事陣と確認したこと済でした。
S氏の精神的プレシャーは相当なものだったと想像します。
皆さん、想像してもお分かりの通り、採用になったS氏の役割は、極めて微妙です。コンサルタント会社が現場に担当者を置いているので、S氏は自分の立場を明確には言えません。システム担当者として紹介しても、すぐ意図を気づかれます。コンサルタントの近くにいて極秘裏に彼らの営業行為のエッセンスを探るというのが本当の任務ですが、このミッション(仕事)を8月1日から約3か月間与えられ、S氏も忠実にその任務を全うしていました。
S氏の提出したレポートの内容と会議での報告を聞くと、コンサルタントのやっていること、やっていないことが分かるものでした。Y氏も不用意に事前情報をS氏に与えると、実体を知ることに障害があると考え、事前に情報を一切与えず、S氏自身の情報収集努力に任せていました。3か月間は業務の円滑な移行のための必要な知識を蓄え、その後の考えを頭の中で整理して、コンサルタントへの正式な通知を出した時点から、ご協力いただきながら彼が正式に深くコンサルの業務に切り込むための段取りを踏んだ手順を、Y氏は想定していました。
ところが、・・・。
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