トンガリ
第266回 人材としての成長(2)
前回からの続きです。
以上は会社の経営側の努力による部分ですが、社員本人の努力がない限り自己の成長は当然のことながら実現しません。
社員の努力の部分です。
やはり「自己変革」に努力してもらわねばなりません。人間の性格は変えるのが無理としても、行動はある程度変えられると考えます。そのために、
a.自己認識を深める。
自分が上司や部下に「どう映っているのか」も含めて自己認識を深めること。自分の「強み」と「弱さ」は何かを考えることにつながります。
b.「どう映っているか」の積極的部分を意識して、何かの目標、特に、事業計画達成のために「次にやることを決める、段取りをとる」習慣を持つことです。
あくまで習慣ですので、自分で意識して段取りを考えなければなりません。
自己認識の中で弱さが目につきやすいのですが、ネガティヴでなくポジティヴ、楽観的に考え、「これには意味がある」と自己納得して自分の決めた段取りを肯定的に考え、まず次のステップに踏み込んでみる。
このことを習慣づけると、「頑張りました。しかし・・・」の発言の癖が薄くなり、目標達成に向けて「何をやってどうなったか」の施策を自ら検証して、次にどう前に進むかのステップを考えるビジネス上のクセを持つことにつながります。
c.自分の行動や置かれた状況に基づき、会社成長のための自分の主張を形成する努力をする。
自分が計画達成のために大切だと思っても、その選択肢の幅を広げる努力をしなければなりません。単線でなく複線とすることです。そこから主張や持論を導き出すことになりますが、これを「物語として書き出し」言語化すると効果的です。頭の中で考え方が堂々巡りをすることを防止できるからです。こうすると自分の選択肢の強弱が鮮明になり、納得して強いと思う部分を主張して持論形成していけば、部下や周囲を書き込みやすくなります。
このことが計画達成のための集団のエネルギーに転換できることとなり、自分の成長を確認することになります。特に、事業計画遂行にはこれが必須です。
d.計画遂行が上手くいかなかったときにどうする?
誰かのせいにするのでなく、自分で上記の選択肢を変えて解決する具体的な方法を探ることです。
すなわち、上記のプロセスのaに戻ること。一見、cに戻ればよさそうですが、やはりaやbに問題が潜むこともあるのでaに戻ることを薦めます。
上記のa,b,c,dのプロセスが、自分が異質で優秀なマネジャーに育つ一つの方法です。ご参考まで。
第265回 人材としての成長(1)
人材として成長するには、会社の努力と本人の努力の双方が上手くかみ合わなければならないのは当然のことです。
まず会社の経営側は次のようなスタンスをとられることを薦めます。
会社のヴィジョン、目標の明確化とそのレビューの仕組み、人事評価制度や教育研修制度の充実などの基本的なことを充実・浸透させなければなりませんが、今回はそれらを割愛して、もっと会社の経営として意識すべき現実的で本質的なことにふれます。
1.組織に必要なスキルを身に着けてもらう。
どの組織も特定の目的を持っています。また、組織として事業計画の成果を出すことを求められます。その目的、ミッションを達成するのに必要な知識やノウハウを、社員に身につけてもらう、それらをベースとしてリーダーシップを発揮してもらうことになります。
当たり前のことです。しかし、意外に体制がそうなっていないのです。
基本的なスキルを身につけさせる教育研修の機会を充実しなければなりません。大手の会社ではこれが当然のこととしてなされていますが、中規模以下の会社では組織としての取り組みが結構遅れているのを目にします。
これを補うために体制としてローテーション制度を充実して、業務の流れの全体を社員に把握させるのも一つの方法です。早い段階で自社のビジネスプロセスの全体像を把握させること。確実に本人の以後の成長につながります。
この基本的なスキルを、私はテクニカルスキル(専門的能力)と称しています。特に、若手の社員にはこのスキルを早く身につけさせるための方法です。
その後、マネジメントを担当するレベルになると、それに加えてヒューマンスキル(対人関係能力)やコンセプチュアルスキル(概念設計能力)が重要になります。
両方とももって生まれた才能の部分もありますが、研修や指導方法によってそのレベルが高まる部分もあります。優秀な上司がリーダーにいるプロジェクトへの積極的参加を促すことで、論理的思考や周囲を如何に説得するかなどのスキルを、身につけさせることができます。
本人も意識してやれば、その能力が確実に強化されます。
2.自分流の方法や思いを持って仕事をしてもらう。
上司から指示が来る。これをやるのは当然としても、更に事業の計画達成に向けて自ら特定の課題を設定して、「こうやります」という自分流の、強い仕事への思いをもってもらうように、上司が仕向けることです。
これにはいろいろな手法があります。年度の初めやQTRの初めにはかならず、自己の課題を明確にさせ、何をどうしたいのかを書き物に落とし込ませ、それをもとにして上司がヒヤリングを実施する、しかも、これは評価とは別の機会に行うことで、「こうやって実現したい」と、社員が本音を吐露してくれます。
思いをもっている社員に機会を与えると、「こうなりたい、こうしたい」という願望から一歩進んで「こうやります!」に向かう癖を持つことになります。これが彼の成長につながるのです。彼が上司になった時、同じやり方を部下に導入することで次のリーダーも育っていくことになります。
3.周囲との差を鮮明にしながらも、その差を埋める力を持ってもらう。
集団の中で価値観や考え方の違いが鮮明になっている社員がいます。私流に言えば「トンガリ人間」です。違った考え方をしていることを自ら認識し行動する人、私自身組織の成長のためにこのような社員を非常に大事にしています。
しかし、単に尖がっているのみではその社員の成長につながりません。その違いをある種の武器として上司や部下を巻き込み、課題に対して成果を出していくような機会を本人に与え、誘導してやらなければなりません。
トンガリ人間が上手くいかない、更に成長しないのは、このように周囲を巻き込めるような機会を会社の経営側が作ってやらないからです。
機会を上手く与えると、自分と周囲との差が埋まり、自分のみでなく集団としての差異化を作る重要性に本人も気づきます。彼が周囲に価値を提供することになり、明らかに一段も二段も成長の機会が増えることになるのです。
4.上司の価値観を押し付けない。
上記3.に関係しますが、上司が特定の価値観を部下に押し付ける社風では社員の成長が遅く成ります。社員の発想の自由度が奪われ、結果として発想が更にしぼんでしまうからです。
このことを意識して、「聴く」、自由に「発想、行動させる」雰囲気を上司が作らなければなりません。すなわち、特定の価値観で縛らない、これこそ多様性重視の社風づくりが必要であるということになります。
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