エビデンス
意思決定で気をつけていること
私が意思決定に当たって留意していることがあります。
第一は、人間には「意識上の壁がある」ことです。
無意識ではありますが、我々は重要な情報を落としがちです。自分自身もそうですが、あることに一点集中すると他の重要な情報が見えなかったり、見過ごしたり、探し損ねたりすることを無意識にやっています。無意識にやっているそのことを意識しないことの危険性です。
私はその自分の習性を理解しているので、最近はある意思決定にあたり、本当に重要な情報は何かを常に意識することにしています。こうして少しでも意識の枠外にある情報を探し出すための工夫をしています。
第二に、ほとんどの人が自分だけが知る情報を、他の人には伝えていないことが多いことです。その人の意地が悪いのではなく、人間のクセです。
このような場合、本人が事前に情報を半強制的に開示できる仕掛けを作ることで情報の共有を意識的に促し、これを回避しています。
第三に、他の会社の成功のケーススタディーの穴に陥り、誤った結論を導くリスクを常に考えています。
人は成功体験の本を読み、何となくわかった印象を抱きます。このことから意思決定に当たっての選択幅を良いと思うもののみに限定し、他の情報をバイパスするケースです。
良いことのみを見たいという習性が原因です。翻って私の経験に照らしても、会社の再建に成功したのは、単に、どこかの成功例を安易にベンチマークするのでなく、現場を巻き込んだ血のにじむような努力の体験があってこそ初めて成功したことから考えると、成功の例を真似するバイパスの危険度が分かります。
第四に、正しい「質問をする」ことを心掛けています。
リーダーとしての最大の仕事は意思決定ですが、これを正しく判断するには、前提として正確な情報を集めることです。そのためには正しく「質問をする」ことが不可欠です。
「農耕型企業風土」づくりがどの程度できてきたかをチェック・レビューするにも、所定の項目に関する正しい「質問をする」ことが非常に大切ですが、同様に意思決定に当たって「質問する」ことの重要を認識しています。
第五に、エビデンスをもとに判断する努力をすることです。
そのために、テスト調査やトライアルを盛んに実施して、不明な部分についてのエビデンスをとにかく蓄積することを私は推奨しています。すなわち、「知の蓄積の習慣」を身に着けさせるためです。
過去に新薬の開発に関連する仕事で、特定の部門がビジネス上のあるプロセスに関わっていました。医学の先生から学んだことは、先生方は医学の世界でのエビデンス(目に見える証拠主義)に基づく判断、治療をしていることでした。
会社の病気に直面する経営者は、風評などでなく事実やエビデンスをもとに、「知の蓄積」レベルをもっと高めた判断をするよう、さらに努力すべきと考えます。
最近のコメント