アジア、ビジネスチャンス、ストレスに強い人材、現地に溶け込む
海外でのビジネスこそストレスに強い人材を(2)
前回の続きです。
ビジネスチャンスを活かすには
では、その地域で各会社やビジネスマンがチャンスをどう活かしていくかです。
・他の項でも書きましたが、前提として、会社として俊敏な動きが出来なければなりません。いざという時にすぐ行動に移せるように、マイナス資産などは早期に切り捨てて自社の資産内容を身軽にしておくことです。海外で展開するからこのことが肝心だというわけではありませんが、特に、海外でのビジネスには動きを制約する要因を少なくすべきです。私の友人などの会社では、不良資産を整理して資産を優良な流動資産に集中させ、海外での投資活動をする体制を整えているほどです。良い案件があれば俊敏に動くためです。
・経営者の思考も、自分の任期中の業績のことのみを考慮した短絡的なパターンを海外展開に持ち込まないことです。短期的な利益を上げるために人員削減で乗り切っている経営手法は、まさに短絡的施策の代表です。むしろ南の地域のマーケットでは、人員を上手く活用して現地にマッチした新しいことを創造しようとする積極的なマインドが望まれます。
・勿論、新しいことをするにはリスクがつきものです。特に、このような南の新興の国では、日本でのビジネス・リスクの想定を超えるリスクも多くあります。このことを前提にビジネス選択、パートナー選択などを適正に終えたら、次は、小さく着手して試行錯誤し、状況を読みながら次へ果敢に進むことをお薦めします。ビジネス企画の試行錯誤を繰り返し、企画を実践に移したらPDCAサイクルを早く回して取捨選択のレベルを上げ、新しいビジネス機会を逸しないことが、このような地域でのビジネスの成功の秘訣だと思うからです。
ストレスに強い人材
・上記のような点を踏まえながら、まず人材の準備、生産のための原料の調達、販路の開拓などいろいろな準備をしなければなりませんが、ポイントは人材だと考えます。このため、リーダーとなる人材を送り出す企業側で、普段から内部人的資源の強化に努めておかなければなりません。
ストレスにも強い自律型の人材が必要となりますので、普段の仕事場でこのような人材が育つ環境を整えておく必要があります。現地ではストレスが確実に大きくなるからです。困難な状況への適応力、それに伴うストレスからの回復力、災害時の復元力、これらが強くなければ現地での競争に勝てません。
例えば、統制でなく仕事の魅力をつくり、自由に仕事をさせ創造マインドを持たせる。社外との垣根を取り外、しノウハウの交流を通じて視野を広くさせる。プロジェクトを本当に任せ、結果に責任を持たる。国際的な非営利団体への貢献のための参画など本来の業務とは別のことにも取り組ませ、幅広い経験をつませるなど、多少のストレスがあってもこれを自らの知恵と判断で克服でき、自分で考え自分で課題を解決できる幅広い識見を持った人材が育つ環境が必要です。このような環境でこそ、自律的なリーダーとしての心構えと行動力が備わってきます。当然、彼の仕事への対応のし方も変わってくるはずです。
現地の慣習に溶け込む
・現地に派遣されたそのリーダーは、異なる環境や文化に遭遇することで価値観の多様性に気づきこれを高められるメリット、更に、違う考え方の組み合わせで新しいアイデアをものにできるメリットを享受できるかもしれません。
しかし、同時に彼が留意すべきことも沢山あります。
商売のやり方、慣習も違います。日本では当たり前と思うことが、当たり前ではないことに遭遇します。イベントなども日本でのやり方をそのまま持ち込むのは危険です。現地向けにカスタマイズしなければなりません。日頃から現地の社員と緊密な関係を持ち、商売のやり方、イベントの方法なども現地に合わせたやり方に修正する知恵を備えなければなりません。
ストレスが溜まると、「どうせ分かってくれない」とすねて、自己嫌悪に陥りやすい傾向がでます。これが自らと現地の人との壁を作ってしまいます。そのようなことを回避すべく現地に溶け込むことが先決です。一般的に、日本人はあまりプライベートなことを話したがらない傾向がありますが、溶け込む工夫のために、現地の社員に自分や家族のことをオープンに話し、現地の人の習慣に入り込んで壁を失くすなど、小さいことでも結構ですので、自分のありのままの姿を分かってもらう努力をすべきです。
いざという時の準備
日本の優秀なビジネスマンが地球の南側に機会を求めていくのは、制度や労働人口などのデータ上、自然の成り行きです。この地域で思い切りぞんぶんに仕事をして成功していただきたい。そのため、ビジネスマン諸氏、今の内からストレス耐性を強くして、いざという時の準備をしていただきたいと考えます。
海外でのビジネスこそストレスに強い人材を(1)
昨年の秋、友人の誘いでマレーシアに行ってきました。ゴルフ中心の1週間余りの短い滞在でしたが、現地の雰囲気や現地の人から見聞きするうちに、日本にいる優秀なビジネス人材が、今後どこで活躍するチャンスが多くなるかについて、実感を伴った確信を得て帰りました。
ビジネス上、魅力ある地域アジア
今や海外に住む日本人は、2011年10月時点で118万人と5年前に比較して11%伸び、北米に45万人、アジアに33万人在住していますが、アジアでは5年前に比較して19%伸びたと、ある報告書に書かれています。この数字はビジネスマンのみではありませんが、これまでの傾向からすると、大多数がビジネスに関係する人とみて間違いはないと思います。
この傾向が強くなる背景の一つに、為替レートなどの問題を除けば、そもそも制度上の理由から日本でビジネスを展開する魅力が薄れているとみられないでしょうか。
政府は、消費税ばかりか所得税の率を現在の最高税率40%を、平成27年分から45%に引き上げることに決めました。これに住民税を加えると、一般の日本人の税負担感は、非常に高い状態です。今年から相続税の最高税率も引き上げられる、税計算の控除額も縮小されます。日本にとって一番増やしたい層、いわゆる中間層を狙った税金の増収策としか考えられません。
法人税についても、最近これを漸減する案が出てきているにしても、未だに海外の各国と比較すると、日本の税率は高く、法人の実行税率が40%位になっています。他方、マレーシアの隣のシンガポールでは17%、加えてこの地ではエンジェルが多く資金調達が容易で、ビジネスをする企業にとっては魅力的な国です。シンガポールは総人口543万人の内、外国人が38%、都市で言えば、ロンドンが50%超、ニューヨークが34%と言われているのに対して、東京の外国人比率は3%です。
これらの数字の一面に、どこでビジネスを展開したいと思うかのビジネスとしての制度上の魅力度が出ていると、言えないでしょうか。相対的にみて、日本は税制上、魅力に乏しいのです。
また、ビジネスにとって重要なのは労働人口です。日本ではついに労働人口が8,000万人を割りました。世界地図上、労働人口が集中する場所も変化してきているデータがあります。世界全体では労働人口が2010年から30年までに8.4億人から約8億人に減少するのに対して、アジアの南を含めた新興国ではこの間、10億人増えて46億人になるとのことです。
当然、労働人口が集中する場所の変貌により、新しいビジネス、革新的な事業が生まれる場所も変化することになります。
各国政府の政策展開により浮き沈みがありますが、労働人口が増加する中国、インドなどのASEAN各国、ブラジルなど地球の南側に、ビジネスチャンスのトレンドが移行してきています。このような国では、高い利益率をもたらす案件も当たり前なのに、日本では数パーセントの税引利益を出すのに四苦八苦している企業が多く、大きな違いがあります。それほどASEANを主体とした地球の南ではビジネスのチャンスが多いのです。
これらの地域には、ビジネスのチャンスが多いことを嗅ぎ付け、有能で高度なスキルをもった人材が世界中から集まってくる善循環をもたらしています。この結果、この地域では新しいビジネスを生む環境が他の地域より増すことにもなります。
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