折々の言葉 / 語り継ぐ経営
第236回 社員に成長を感じさせるための上司の留意点(1)
社員はどのような時に十分な成長を実感出来るのか?立派なリーダーは、この点を十分意識してマネジメントを行っています。実地体験で学ぶところも多いと思います。しかし、できればその立場に就く前に、ポイントに気づき、努力をしたい。
自分の成長を感じる時とは?
人によってもちろん違いがあるが、一般的に、ビジネスマンが自分の成長を感じるのは次のような時だと思います。
- 成長に対するプレッシャーを感じつつも、挑戦的でやりたい仕事や夢に近づくと感じる仕事ができ、結果に対する成果意欲が湧く時、しかも、仕事の裁量を与えられ、以前よりレベルの高い仕事に主体的に思考し、取り組み、課題を自分で解決できた時です。
- 仮説検証の試行錯誤が許される仕事場環境があり、成長意欲を持った自分がやりたいことに上司から火を点けられ(inspire)、その成果に上司から気遣った褒め言葉や激励があった時です。
- お互いに教えあい、協力できるチームワークのある職場環境の中で、チームとしてのコミュニケーションを円滑に推進できる自信が心の中に湧いた時です。
私自身は、以上のように考えるのですが、如何でしょう。
ところで、社員自身が成長を感じる時に彼らのやる気が湧くとすると、経営者やリーダーは、日常の経営で何に配慮したらよいでしょうか?
上記の点を踏まえると、以下のヒントがでてきます。
上司の留意点は?
a)挑戦的な仕事をアサインし、裁量権を与える
自分の経験に照らしても、自分が描いている願望や将来像に向かって何かに挑戦できる仕事にアサインされた時が、一番楽しい。それは、実力を少し上まわる仕事かもしれない。大きな契約交渉の任、戦略策定の任、キャシュフローの増強交渉の任などなど、それらを任され一所懸命努力して一定の成果が見えた時の喜びは忘れることができません。自分の成長を実感した時です。
・ 多様性のあるキャリアデベロップメントの道を用意し、やりたい仕事、夢に近づく仕事をさせること
リーダーとして社員に挑戦的な仕事をアサインするには、発想の視点を、キャリアデベロップメントの選択肢を多く持ち社員の多様性を考慮した育成・成長の対応をすることに、おかなければなりません。
社員の価値観や要望は、私が経営を任されていた時代でも多様化していました。しかし現在は、さらにそのパターンが増してきているのではないでしょうか。
例えば、社員の会社への入社動機です。以前はある限られた目的を持って入社したと推測されるのに、最近は必ずしもこの前提が当たっていない。
だとするとそのような人には「十把一絡げ」的な対応では、彼らの欲求をみたせない。自分にとって挑戦的な仕事がアサインされたと受け止められず、彼らに感謝されない。個別の対応でない限り、彼らの夢に近づく仕事をアサインできず、アンマッチし、モラールの低下を招く。
マネジメントも人事施策もこの状況に追いついていかなければなりません。非常に複雑なことですが、顧客対応の多様性に応じてサービス導線が多様化する環境での個別対応と軌を一にしていると理解した方が得策です。
常に、個別の社員にそれぞれ対応する気構えが必要です。彼らの価値観や希望を全部はかなえられないとしても、少しでもそれを満足するような挑戦的な仕事で、しかも今の実力より少し上位の仕事を用意しておかなければならない。
もちろん、このことは社員を甘やかすという意味を含んではいません。彼らがモラール高く挑戦欲をもって仕事をしてもらい早く成長してもらうほうが、マネジメント側にも大きなプラスがあるからです。
・ 自分で考え、自分で裁量できる幅が広いこと
現場に近いところに権限を与えることでスピードと機敏さを大事にし、社員のやる気を起こす。難解な課題を自分で考え、なんとか自分で判断して解決した時、彼らは自分の成長を感じます。
現地現場に裁量権を与える重要性を主張しているのは、彼らが個別の判断経験を成長の土台にしていること、加えて、組織にも経営のスピード感が出るからです。彼らは新しいことを実現したくてウズウズしている。しかし、実績がない。そこで、判断経験を積ませる。自分自身で考え、判断して結果責任を負うことで、自分の成長、足りない部分をもろに実感できる。会社にとっても、このような育ち方をした人材が企業変革の牽引車の予備軍として成長します。
Related Posts