人材育成 / 折々の言葉
発想を変えさせる指示・質問の仕方
誰もが皆、発想を豊かにしたいと思っているはずです。そのためには、当然のことながら、まずもって自分自身の力が必要です。同時に、他の人の発想を豊かにする支援もあることを忘れないでください。部下を持つ身の上司たるもの、部下の発想を豊かにするために出来ることもあります。指示・質問を工夫することで、彼らの発想に変化がでるよう支援できます。部下の創造性をくすぐることです。
1.「考えさせる」ような指示・質問を出す
「この余裕のあるオフィススペースの有効活用を考えてくれない?」と質問。
質問する自分にはある考えがあります。しかし、これを具体的に言わないで、「・・・をしたい」のだがと、質問を投げかける。部下が自ら自分の壁を破ってその内容に挑戦するよう仕向ける方法です。
会社全体では、余裕のスペースを家主に返却するのが最善の方法かもしれない。しかし、これを有効活用することに自らの知恵を働かせ考えをめぐらせていく方が、全体としては遥かに前向きかもしれません。最善と思っていた一般的な方法を超えることを考える機会をつくる。最善に思えるかもしれない壁をいったん破り、この機会に彼らの発想を少しでも変えることにつながるかもしれないような指示・質問を出す工夫です。
2.「肯定的に考えるクセ」をつけさせるような質問をする
「俺が何回やっても上手くいかないんだ。君、良い方法を考えてくれる?」と質問する方法。上手くいかせるための前向きな方法を考えさせるように仕向ける方法です。上司がやっても上手くいかない、それを部下の自分が上手くいくような方法を考えるということに、皆奮い立ちます。上司を助ける名目で、物事を肯定的に観察させ、そこから前向きなアイディアを考えるクセをつけさせる、部下への練習になります。
3.ある程度の負荷をかける
「一週間で選挙の出口調査の最適体制を立ち上げてくれる?」と、短期間で選挙の出口調査の体制を立ち上げる指示です。通常では考えられない指示ですが、これを敢えてやる方法です。
全体計画、人員採用、投票所配置地図確認、ペンなどの調査道具の整備、調査結果の伝達方法、時間管理、危機管理などなど、全体が整合的に動くには相当の知恵が必要です。
これをだらだらやるわけにはいきません。事前に準備することも沢山ありますが、迫力感が無く何となく締まらない。しかし、選挙日程が正式に決定すると、即具体的な行動開始。多少負荷をかけることで、指示を受けた部下が新しい発想をする。短期間なるが故に、面白い発想が生まれる。
ある作家が「何となく良いアイディアは生まれない。一定のプレシャーをかけて初めてアイディアが生まれる」、という趣旨のことを書いていました。何事も一定の負荷をかけることが効果を増すことになります。
4.何か「違う解決法」を学ばせるための質問をする
私自身、意識して言葉を変えることにしています。これにより取り組み姿勢を変える工夫をするためです。その時の経験では、発想が積極的になりやすいことが分かりました。
言葉を変え姿勢を変化させる方法です。
この十数年、我々はデフレの言葉を聞き飽きてきました。この言葉から、積極的な発想が生まれそうには感じません。そこで、デフレの言葉を少し工夫する一例です。次の年に「賃金が上がる助走の時期」と言葉を変える。多少まやかし風に聞こえるかもしれませんが、言葉を変えることで、働く人の気持ちが少し変わることにつながるかもしれません。
何かの問題に直面した時、そこでとどまり悶々と悩むのでなく、解決に導く方法は必ず見つかるという発想のもとに、すでに刷り込まれているある種の印象を、言葉を通じて変えることで、違う解決法を学ぶ方法です。悩みだすとどうしても同じ解決法に行きやすいことを回避するためです。
5.いつもと「違うこと」に興味をもたせる
「テーブルや壁などを何色に変えたら気持ちよく働ける?一度考えてみてくれない。」と質問することで、彼らに考えさせる、コールセンターでの食堂の例です。
この場は、食事のためだけでなく、時に休憩のためにも使用します。ストレスのたまる仕事の息抜きの場ともなります。私は、空間や設備環境は仕事の効率と関係すると考えていました。その場のテーブルの色、壁の色等ストレスを軽減するために結構重要です。このような、色などに対する上司からの打診や指示は、彼らに日常的にはそう沢山きません。違うことに関した指示を出すことで、いつもと違う発想をさせることにつなげる方法です。効果の検証はしていませんが、それで違うことに興味を覚え、皆の発想に変化をきたすのではないかと考えています。
6.視点を変えさせる方法
「あと、10ブース増やしてくれる?」コールセンターの能力増強策での、指示というか質問でした。
全体のレイアウトが長年固定している中で、全く視点を変えて、全体のレイアウトに取り組ませる発想に導くためです。スペースの総枠を変えないで、更に10%増の10ブース(一般に言う仕事机)を追加する。これを実現するには、発想の視点を変えるしか方法はありません。縦に並んだものを、横や斜めに。更に、床と天井間の中間空間層を利用する斬新なデザインなど、視点を変える発想に導くことになり、柔軟な考え方が生まれる機会となります。視点を変え固定的な発想フレームを取り外すことになります。
このように意識して発想を豊かにする努力をしない限り、発想が固定してしまいます。特に、40代の方々でルーチンのジョブに精通し出した頃、ご留意ください。
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