園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

折々の言葉

第270回 ヒューマンスキルの重要性

Posted on 2018-02-01

私はマネジメントについて、「ヒューマンスキル」の重要性を特に強調しています。

 

「テクニカルスキル」が最低限必要

 現場のマネージャーに求めることは、まず、日常の業務を遂行するための「テクニカルスキル」です。すなわち、幹部として自部門の業務遂行に必要なノウハウの習得とそのスキル度です。

 事業計画達成に向けて、必要なマネジメントスキルは、

 目標設定、メンバーのスキル向上計画、仕事の難易度把握、仕事の割り振り、進捗のマネジメント、促進の指導、結果に対するコメント、評価、次の目標設定等のスキルです。

 どこの会社でもやっているはずのことです。

 このスキルの構成要素を細分化すると、部門の目標を設定するところから始まります。

 部門目標を設計し、目標を達成するための職務を設計します。会社全体の戦略の流れや今置かれている部門環境を見渡して、部門として次に着手すべき仕事で会社にどのような価値をもたらすかをマネージャーは考えることになります。

 同時に、複数の部下に仕事を割り当てる準備をします。

 それを踏まえて、次に、各部下の職務分担を決めます。それぞれの職務に求められるスキルや経験と部下の持つスキルや経験、彼らの成長方法などを考慮して担当割をします。

 部下が納得して職務に取り掛かれるように動機付けをしながら職務を任せます。ここが重要なことで、本人が担当する仕事の意義や重要性などをしっかり説かなければなりません。

 仕事の過程で誰でも遭遇する困難が発生します。この時、マネージャーの部下への達成支援が発生しますが、これが出来ないと部下からの信用がガタ落ちになるはずです。

 部下の仕事の進捗状況を常に把握し、必要に応じて支援を行う。現在は情報端末が整備されているので、普段の情報の交換から、状況を把握して、支援のタイミングを計ることになります。

 そして最後に、部下に委託した職務が完了したことを確認し、成果物の価値を適切に評価することになります。

 当たり前のプロセスですが、最初の目標設定と本人の納得感が出発点です。これなくして評価のみを重視するのは、マネジメント上本末転倒と言わざるを得ません。

 現実には、これが出来ていないところが多いのが残念です。当然社員のザワついた声を聴く羽目になります。

 

 次に、「ヒューマンスキル」が必要で、これがマネジメントの決め手です。

 

「ヒューマンスキル」と「湿り気のある人間関係」こそ重要

 マネージャーは多様な人々の個性を活かす「包括性」(多様な人々がそれぞれ個性を生かして仕事ができること)に留意しなければなりません。

 このスキルを私は「ヒューマンスキル」と呼んでいますが、優れたマネジメントを実現するには、「テクニカルスキル」の一部たるコンピタンシーやリテラシーなどの「基礎力」、知識や技術などの「専門力」に加えて、人間味が溢れるマネジメントを行えるスキルが不可欠です。

 格好良く言えば、共感マインド、嫌いな社員も好きな社員も平等に導く力、部下をほめる、叱ることで部下の成長を支援する力で、集団のリーダーとしての統率力の源泉となるものです。

 「テクニカルスキル」が、日常的にマネジメントを切り盛りするのに必要な一般的なスキルであるのに対して、生身の人間を説得して組織を動かすには、泥臭い「ヒューマンスキル」が必要です。

 表現は少し荒っぽいですが、具体的には

 ・組織の同質化が一番危険なので、多様性を重んじ、反対意見を述べる社員を排除しない力

 ・個々の社員の力を認めて、異質な社員でも組織に上手く引き込む力

 ・価値観や理念を全うすべく、上司から堂々と嫌われる力

 ・情報などを意図的に工夫して上司を上手く誘導する力

など、人間臭い部分、しかも、難しい部分です。

 今の組織で、この部分が一番肝要ではないでしょうか。私は、これを前提とした人間関係作りの重要性を強調しています。

 私の言葉で「湿り気のある人間関係」と称しています。このことを意識した現場のマネジメントを行うと、多様性と包括性が実現し、結果として、労働生産性が向上することにつながります。

 

 

 

第269回 新規事業の発想で革新(2)

Posted on 2018-01-18

以下前回の続きです。

 

外部人材も含めた異能集団のプロジェクト編成

 新規軸を導入することになるので当然いろいろな部門のメンバーが参加することになりますが、外部の人材も入れた編成として、しかもその分野のプロのメンバー構成を薦めます。職位の上下はあまり関係しません。

 戦略のプロ、コンセプト固めと基本設計のプロ、サービス展開のプロなどなどです。このため私はいろいろな分野のプロを入れたプロジェクトを打ち立てることを薦めています。

 既存の社員のみでは無理な場合が多いす。皆、現場を持っている立場上、どうしても片手間的な対応をしがちで時間がかかる、コンセプトが従前のモデルに引っ張られてぶれてくる、サービス設計段階で全く新しい取り組みに苦労しすぎてしまい、そのメンバーが腰折れになってしまうリスクも多いからです。

 併せて頭の良い人間だけでは無理です。感性や感度に優れた異能人材が不可欠です。

 前段で述べたサービス設計の部分では頭の良さで解決できる部分が多いとしても、戦略やコンセプト固めの部分では、先をどう読むかの感性が非常に利いてきます。

 当然、環境の変化の読み方、自社の強み、弱み、機会や脅威の分析を基にして、これからの先を読むことになりますが、ここに洞察力が必要となります。これは、ある種の感性の部分です。同じ景色を見てもその中から見出す絵図の切り取り方が全く違う、この感性です。

 また、異業種の経験者も参加させたい。異業種を経験した彼らがデジタルの武器の組み合わせで既存業種を眺めると、既存パラダイムをひっくり返せるヒントが湧いてくるかもしれません。新しい切り口を思い起こしてくれるかもしれません。

 

実験段階での迅速なレビューサイクル

 価値を創出できるサービス設計まで落とし込み、会社としてgoのサインが出ると、ここでいろいろな判断が必要です。まず、開発体制をどうするかです。個人的には開発については、技術的に可能なら自社開発を薦めます。以後の修正展開などの際に、自社ペースを守れること、また、自社の開発過程でいろいろなノウハウが溜まるからです。

 開発ステージが終了すると、一定規模の実験に着手することになります。とりあえず新しい事業展開に必要とされる重要な要素と機能のみを織り込んだプロトタイプで実験することになりますが、そこで出てきた課題を、如何にスピードをもって評価、修正して、当初のコンセプトを実現できるサイクルに乗せるかが新機軸の商用化の評価に影響します。

 この時までの投資コストも集計しておかなければなりません。この実験で出費が予想以上にかかる大半のケースは、最初のステップ(戦略、コンセプト固め、基本デザイン、サービス設計)の詰めが甘いから発生する場合が多いです。この意味で、最初の段階で如何に経営層がしっかり厳しく案件内容を吟味するかが重要なことになります。

 

大胆な発想を基にした新規事業が難しい背景

 上記のような発想をもって新規事業へ着手することがほとんどの企業で可能なはずです。にもかかわらず、それを困難にしている背景があります。

 既存ビジネスの枠組みで考えてしまう場合、既存の事業である程度の収益をあげているので新機軸を打ち立てる議論がしにくい場合、過去の成功物語を引っ張っているボス的存在がいる場合、全て自社対応の発想で他社との協力関係を築くのが下手な場合、当面の資金の創出に窮している場合などです。

 しかしこれらはどれも、本来自社で経営コントロール可能なことばかりです。

 是非、新たな柱を作るべく、大胆な発想で新機軸を戦略的に考える努力をして下さい。

 

 

 

第268回 新規事業の発想で革新(1)

Posted on 2018-01-11

 どの会社にも、成長してきた理由や背景がある。その成長・発展路線を更に推し進めるのも戦略として重要である。しかし同時に次の成長の柱を作ることも更に重要です。この一環として新機軸の重要性を経営者がいろいろな機会に唱えるのはもっともなことです。

 時代の変化にマッチした新機軸を発想しなければなりません。

 特に、デジタル化の時代には革新を起こすチャンスが沢山あります。そのチャンスをものにする新規事業の発想について私が普段肝要だと思っていることを述べます。

 

新規事業の発想プロセス

 新機軸を成功裏に登場させるプロセスは、誰が考えても一般的にほぼ同じアプローチになるはずです。すなわち、

a) まず、環境変化や自社の強みなどの分析を経て戦略をたてる、

b) 次に戦略を実現できる事業コンセプトを固める、

c) さらに、事業コンセプトを基本デザインに整理する、

d) この基本設計をサービス展開した時の運用設計図を描く、

e) 同時に、この新機軸全体のリスクと投資効果を比較考量して、

f) 新規事業の着手可否の判断をする

ことになります。

 しかし、アプローチは同じでも、発想の深さ、内容の固め方などが、実は成功する人と失敗する人の分かれ道になります。残念なことに失敗した後で、このことを知ることになるのが一般人の常です。

 

何を主軸に新規事業を発想するか

 革新を起こす新規事業、これは言葉では簡単ですが、しっかりした発想をもって新規事業に着手するには、新機軸案件の本質的要素をしっかり満足しなければなりません。

a)  まず、競合が沢山いる中で、それを凌駕し世の中に一石を投ずるに値する価値創出を支える新たな仕組みがなければなりません。

これが結構大変なことです。これをクリアしないために、アイデアどまりの新規案件が多くなってしまいがちです。

価値創出の部分は、顧客を引き付けるため自社がどのマーケットでどんな価値を創出して収益をあげるモデルにするかが問われます。大きなマーケットを狙ってそれにふさわしい大きな発想を必要とする場合、自社の既存のビジネスモデルが足かせになる傾向が強い。従って、既存ビジネスモデルに大変容をきたすくらいでないと、大きな価値創出案件にはなりにくいことに留意してください。

b)  加えて、沢山の顧客に対してこれまでのヴァリューチェーンとは違うチェーンを提供するに値するサービス体制も築かねばなりません。

既存のチェーンでは対応できなくなり、いろいろ関連する会社のノウハウとの組み合わせによる新たなチェーンづくりの協力展開になるはずです。結果として、自社のサービスの効率化によるコスト引き下げで顧客にとっての魅力を増すことになります。

c)  これらの要素のどこに主軸を置くか、すなわち、新機軸での重さの置き方が重要です。

できれば両方とも大きく満足する新機軸にしたい。この思いは分かっても、投資金額、時間の関係、人材資源、協力会社群の関係などでそれが果たせない場合に、どう位置づけした新機軸とするかを経営層で定めておかなければ、結局どっちつかずの案件となり、新機軸が名ばかりに成り下がってしまうリスクにもご留意ください。

 

 

第267回 プレゼンテーション

Posted on 2017-12-28

 いろいろな会社の経営者にアドバイスをしている立場上、社長のスピーチやプレゼンテーションを聴く機会が多いです。

 上手くて拍手を送りたいものも多い。しかし残念ながらその中には、話を長時間聞いていても「何を言いたかったのだろうか?」と心配になるものもあります。

 人を惹きつけないスピーチやプレゼンテーションの場面として、何を伝えたいかの目的、テーマが不明確(それで何を言いたいの?)で一貫性が無く、意外性が無くありきたりで、聴く人の好奇心を掻き立てることがらが話に盛り込まれていない、話の全体の流れに起承転結が工夫されていない場合などです。

 一般的に人の話を10分以上集中して聞ける人は少ないと言われています。

 このことは私も経営をしていてよく分かりました。経営を引き受けた直後の私も、社員に伝えたいことが沢山ありすぎて、盛沢山の内容を入れたために、かえって浸透に失敗して冷や汗を流した記憶があります。

 しかし、回を重ねるうちに、いろいろ気づきました。

 

複数トーク路線の工夫

 トーク内容を一字一句完全な原稿に書き起こすか、ポイントのみをメモしてその瞬間に湧いた言葉で話すか、場面に応じて方法もいろいろ考えました。

 どれをとるにしてもトークの進路を複数用意するほうが良い。何故なら、本筋は同じでも、「場」の状況に則して違うアプローチで話せるという、話し手の自由度が出てくるからです。また、頭の中が急に真っ白になった時、戻れるルートが複数あるほうが戻りやすいことにも気づきました。

 

「場」の工夫

 「場」と「内容伝達の方法」の工夫も重要です。

・まず、物理的な「場の環境」です。

 どれくらい収容できるか、部屋の響きはどうか、レイアウトはどうかなど、物理的な環境が、話す内容に則しているかを必ず事前にチェックします。

 大きな部屋に少人数しかいない、部屋の周囲が騒々しく集中できない、対談するような内容なのにスクール的環境であったりすると、たとえ良い内容でもそれが相手に伝わるレベルがどうしても低くなります。

・次に、「場の雰囲気」です。

 テーマや参加者に適した登場の仕方を工夫する。

 聴き手にとって感度が良いスタートモードをとれるために、笑顔、立ち居振る舞いなどで緊張感を無くす工夫をする。

 要は、スピーチやプレゼンテーションのイントロで、話し手自らが話を聴いてもらいやすい環境を作ることです。

 

出だしが肝心

 トークは「はじめ」と「終わり」が肝心です。出だしの一分で聴き手の興味をひかなければなりません。そして最後に何を言うかが、一番聴き手の記憶に残る言葉が必要です。

 まず出だしです。

 話し手が最初にすべきことは、聴き手が自分から喜んで話を聞いてくれるようにすることです。

 そのために聴き手と目を合わせてほほ笑む。ステージを堂々と歩き、2~3人と目を合わせる。

 緊張して言葉が出ないときは、素直にそれを認める。言葉が出てこないと水を飲み「少々お待ちください。ちょっと緊張しているんで。すぐに正常運転に戻りますので、水を一杯」などと工夫すると、聴き手が暖かい拍手を送ってくれるはずです。

 これで出だしを切り抜けられます。

 

「伝達内容」の工夫

・優れたトークは、「物語」風に仕立て上げる。

 「物語」ならだれでも身近に感じられ共感しやすいからです。

 しかも、20文字以内を目安に最初の文章から「物語」として始めるとよいです。

 例えば、経営戦略の目標の重要な話をするときに、長い文章の連続で「物語」を始めると、主旨がなかなか伝わらない。全く聴き手の印象に残らない。

 「今後3年xxxを目指します。」と短い言葉で切り出し、その後「物語」を展開する伝達の工夫が肝要です。

・聴き手が共感できるような登場人物を入れる。

 「私が43歳の時、CSKの故大川功氏からxx会社の再建を託され、決意を新たに経営に取り組みました。ところが、着任直後に判明したxxのことで…」などと、大経営者の故大川氏との出会いから始め、以後必死で社員とともに頑張ったくだりで聴き手の共感を呼ぶ。一例です。

 ビジネスに興味ある聴き手なら、このように実績をあげた大経営者を登場させ、聴き手の好奇心や社会的な関心、さらに、直面した実際の危機体験を通じて緊張感を高めるのも方法です。

・適度な量のディテールを盛り込む

事業計画の策定にあたっての内容の説明の時、重要なある部分については詳細説明をし、内容が深いことを聴き手に悟らせる工夫も大事です。

メリハリをつけていくことです。

・最後に笑いや感動や驚きで締めくくる。

 例えば事業計画キックオフの場面では、「成長拡大する要因の総括は、3つです。3つですよ。経営者の覚悟、経営戦略を踏まえた事業計画、それと社員の心を結集できる幹部のリーダーシップです」と話し、直後に「xxさん、リーダ-シップに自信があるので大丈夫ですね!!」と、社員皆が、リーダーシップが欠如していると思っている人の名前をあえて出して彼に目線を送り、締めの笑いを誘うなど。あくまで一例です。

 

この一年ご愛読いただきありがとうございます。

良い正月をお迎えください。 園山 征夫

 

第266回 人材としての成長(2)

Posted on 2017-12-14

前回からの続きです。

 

 以上は会社の経営側の努力による部分ですが、社員本人の努力がない限り自己の成長は当然のことながら実現しません。

 社員の努力の部分です。

 やはり「自己変革」に努力してもらわねばなりません。人間の性格は変えるのが無理としても、行動はある程度変えられると考えます。そのために、

 

a.自己認識を深める。

 自分が上司や部下に「どう映っているのか」も含めて自己認識を深めること。自分の「強み」と「弱さ」は何かを考えることにつながります。

 

b.「どう映っているか」の積極的部分を意識して、何かの目標、特に、事業計画達成のために「次にやることを決める、段取りをとる」習慣を持つことです。

 あくまで習慣ですので、自分で意識して段取りを考えなければなりません。

 自己認識の中で弱さが目につきやすいのですが、ネガティヴでなくポジティヴ、楽観的に考え、「これには意味がある」と自己納得して自分の決めた段取りを肯定的に考え、まず次のステップに踏みんでみる。

 このことを習慣づけると、「頑張りました。しかし・・・」の発言の癖が薄くなり、目標達成に向けて「何をやってどうなったか」の施策を自ら検証して、次にどう前に進むかのステップを考えるビジネス上のクセを持つことにつながります。

 

c.自分の行動や置かれた状況に基づき、会社成長のための自分の主張を形成する努力をする。

 自分が計画達成のために大切だと思っても、その選択肢の幅を広げる努力をしなければなりません。単線でなく複線とすることです。そこから主張や持論を導き出すことになりますが、これを「物語として書き出し」言語化すると効果的です。頭の中で考え方が堂々巡りをすることを防止できるからです。こうすると自分の選択肢の強弱が鮮明になり、納得して強いと思う部分を主張して持論形成していけば、部下や周囲を書き込みやすくなります。

 このことが計画達成のための集団のエネルギーに転換できることとなり、自分の成長を確認することになります。特に、事業計画遂行にはこれが必須です。

 

d.計画遂行が上手くいかなかったときにどうする?

 誰かのせいにするのでなく、自分で上記の選択肢を変えて解決する具体的な方法を探ることです。

 すなわち、上記のプロセスのaに戻ること。一見、cに戻ればよさそうですが、やはりaやbに問題が潜むこともあるのでaに戻ることを薦めます。

 上記のa,b,c,dのプロセスが、自分が異質で優秀なマネジャーに育つ一つの方法です。ご参考まで。