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折々の言葉

第275回 変革のための幹部社員の行動と企業風土

Posted on 2018-03-08

 いろいろな会社の指導を通じて幹部社員の行動特性で気づくことがあります。幹部社員の振る舞いを観察・分析することで、経営上改善すべきことが炙り出される。

 炙り出された特徴をその会社の成長度合いと比較すると、その特徴自体が経営の在り方との関係性をある程度検証できるのではないかと推測します。

 

成長する会社の幹部の行動

 成長している会社の幹部社員の特徴は、ほぼ間違いなく

・他の人から指示をされなくても、自分事として主体的に物事に取り組むみ、自己の判断で期待された以上の成果を出す努力を自ら行っている。

・決められた組織の枠などを気にせず、良かれと思うことは組織の枠の越境を当たり前としてチャレンジする。

・好奇心が非常に旺盛で、新しい知識や人脈づくり、特に外部の人脈づくり、人間関係づくりに前向きである。

・幅広い人間関係を利用して、社内でストレスを感じても外部との接点を上手く利用して、それを緩和している。

 

 仮に、上のような幹部社員が会社全体の4割以上を占めていれば、その会社の持続的な成長が維持できる傾向があることを、私自身経営で体験をしています。

 4割の幹部社員が他の6割の社員に徐々に影響を及ぼし、どこかの時点で比率が逆転し社内風土を一気に良い方向に転換する力となるからです。

 

個人と組織構造の兼ね合い

 逆に、上手くいかない、成長が鈍い会社の幹部社員は、どんな特徴があるのでしょうか。

 それは、

・組織運営が上手くいかない問題を「人」の問題であると位置づけ「人」たる「個人」に焦点を当てて解決しようとする。

・しかも、本人自身のマネジメント力は棚に上げ、他の「人」の課題にする。結果として、「人」の入れ替えを主張する。

・毎年この繰り返しで、結局、組織全体としては人材メンバーを消耗する負のスパイラルに入る傾向が見られる。

 このアプローチに対して、私は違う発想が必要だと考えます。

 成長している会社の経営では、そのアプローチが特徴的にみられるからです。

 すなわち、上手くいかないのは「組織構造」に問題があり、これをどうするかにまず頭を使う。「組織」の問題の本質部分を解決せず、「人」たる「個人」に焦点を当てすぎると、経営自体の変革につながらない傾向があります。

 組織を組成・革新するとなると、「経営目標」を設定し、その「戦略」を策定し、戦略の遂行のために最適な「組織構造」をデザインするという段取りを踏む手順が最適です。

 「人」の前に、まず「組織構造」をどうするかに十分留意することになります。

 組織構造の変化であるので、当然のことながら社内からは大きな反発が予想されます。

 しかし、それは経営側や幹部社員の受け止め方次第で解決できることが多いです。

 すなわち、反発があるということは、従前のやり方に社員自身が何らかの矛盾を感じているか自己評価を持っているからです。それの良いところ悪いところを議論することで、変革の第一歩になるのです。

 組織の長たる幹部社員が自己の裁量で判断の幅を拡大し、それを体質となるまで経験で学ばせることができるような組織構造を、私は重視しています。

 ビジネスで起こっている物事は、チームの一人でも成果がゼロだと、組織全体の成果もゼロとなりやすい。組織の成果は、「足し算」でなく掛け算の結果であり、運営の仕方がチームとしてのパフォーマンスに大きく影響するので、組織のメンバーを「掛け算」で活性化する体質を組織構造に持たせる。経営側が組織の長にしつこく人材のレベルアップを問う意味を分かってくるまで繰り返し説きます。

 

組織風土の特徴が言動に現れる

 デザインした組織構造が動き出すと、社員の仕事を通じて組織風土を生み出すことになります。その組織風土の良いところが強ければ、組織を構成する働く社員の行動や考え方にプラス要素として現れるので、会社の成長が加速します。

 従って、経営幹部が組織風土の良いところを強化するマネジメントを実践するには、社員の言動や振る舞いから、組織が持つ価値観や前提条件などの実態を炙り出す必要があります。

 炙り出す方法として、

1.会社の組織風土やカルカルチャーについて、社内でよく聞かれ、よく使われる言葉、見られる行動を洗い出す。

2.その言動から会社内で根づいている価値観や行動原理について洗い出す。

3.それらが、経営上プラスに作用しているか、マイナスに作用しているかを経営的に判断する方法です。

 

社員が日常何気なく口にしている会話などから価値観を抽出

 会社内での言動を調べてみるとよくわかります。

 会社で良く聞かれる言葉には、「どうせ最後は・・・」、「また変わるので・・・」、「指示がないから、・・・」、「・・・にメールしたのに・・」などなど。

 組織としての前提には、「上司には意見が言いにくい」、「組織の枠を外れることにメリットを感じない」、「皆が枠や管理に捉われる」、「失敗したら降格になる」、「数字の評価が絶対である」などなど。

 これを洗い出す作業をすると、特別な場合を除いて、ほとんど皆が明示的に使っている言動です。例えば、会社の経営理念や行動規範、会社の歴史から培われたある種の前提などです。

 これはこれで結構です。

 しかし、経営が上手くいっていない場合、ことの本質が社員まで浸透していない。社員に経営層の意図が表層的にしか理解されていない。従って、経営的にマイナスに作動している言動や前提部分を除去・修正するプロセスを経て、組織風土を築いている土台を変えなければ変革できないのです。

 そのためには、社員が抱いている感情や情緒的背景についても検証しなければなりません。社員が自己の主張をストレートに表現しているか、それを受け取る側の雰囲気や態度がどのようなものか、加えてそのような雰囲気や態度が何によって形作られているかも検証し、

 最終的に経営として意図している価値観を言葉によって「見える化」することを薦めます。

 例えば、私の例では、社是や経営理念で目指している社内の人間関係を、後に「湿り気のある人間関係」と表現しました。詳細は省略しますが、この雰囲気がある組織風土を会社全体で築きたいと表現すれば、会社内で大事にされている人間関係や価値観を一言で表していることになります。

 

捨てること、捨てないこと

 それらをもとに会社の価値観を検証して、何を捨て、何を残すかを議論するのです。

 組織風土の良いところを残し、経営にマイナス影響を及ぼしているところを炙り出し、経営に変革をもたらすことになります。

 蛇足ですが、幹部研修の在り方とも関係していると考えます。多くの幹部社員が研修に積極的でないのは、研修で上記のような本質的なところに触れる機会が少ないからです。

 単に知識を植え付けるのでなく、会社を根底から変える議論を通して、自ら変革の当事者となる意識改革(マインドセット)の機会を研修で与えるべきではないでしょうか。

 本日は、成長する会社の幹部社員の行動と企業風土について述べました。参考になれば幸いです。

 

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第274回 経営者のタイプ

Posted on 2018-03-01

 経営者にもいろいろなタイプがあります。

 タイプの背景が、本人の性格によるものかどうか学問的なことは分かりません。しかし、自分なりに整理してみると面白いタイプ分類になりました。

 それが経営行動や経営判断に影響していることが多いので、経営者本人も自己認識すると経営上おおいにプラスになるのではないかと考えます。

 

1.オープン(開放的)か否か

 開放的でどんな状況、どんな課題でも社員などからの相談にのれる、経営者としての考え方を常に開放的に説き、そこから現場の意見を汲み上げるような方法をとるタイプです。これは、営業的センスが高い活発な経営者に見られる場合が多いです。

 既存の考え方にとらわれず、常に新しい良いものを取り入れ、新たな人間関係の樹立も得意、また、自分の事業分野のことのみならず、他の業界や分野、文化、教育、芸術などにも興味を持ち幅広い人脈を作ることが得意で、会社の急成長のきっかけを早く掴むタイプです。

 

2.チャレンジング(挑戦的)なマインドを持っているか否か

 創造力、クリエイティヴィティーに関係します。現在の状況には満足しない。常に、危機感を覚え、それを克服すべく新機軸に挑戦するタイプです。

 常に、走り続ける。ベンチャー企業であろうが大企業であろうが、会社の規模には関係なく、経営者として常に新機軸を施策に織り込みながら会社を引っ張るのが得意です。

 自社の資源との兼ね合いで、挑戦のタイミングを間違えると、経営上大変なことになるので、牽制的役割を担う機能も必要となります。経営者自身、補佐役のアドバイスを受け入れる度量が問われることになります。

 

3.トレランス(耐性)があるか否か

 耐性が高く、いろいろな事態が発生してもそれに対して一定の情緒レベルを維持でき、問題や課題を自分で解決しようとする。短期間の結果の善し悪しに一喜一憂しない、我慢強いタイプです。

 環境の変化にも表層的なことは度外視する。あまりネガティヴに考え過ぎないことを条件に、事の本質を把握して慌てないタイプなので政策の一貫性を保て、社員からの信頼を得やすい。

 これの逆のタイプは、しょっちゅう考え方や経営の軸が変わる、他者に批判的で自己中心的、社員からどう見られているかを常に気にする、情緒が若干不安定になりやすいタイプです。

 決めたことも状況次第ですぐ変更する。他方、社内の摩擦を気にし、ある面では協調性を過度に重視するタイプです。

 

4.シンセリティー(誠実さ)があるか否か

 実は、私が経営者として一番重要視しているのは、誠実性です。私は、このタイプを上記の1~3の上位に位置づけています。

 経営施策の約束事の実践に誠実か、社員に対するいろいろなコミットメントに誠実か、結果として、どんなことがあっても「事業計画」の遂行に誠実な対応ができるか否か。といったことにビジネス上の誠実さが象徴的にあらわれます。

 自分に厳しく、計画的で着実に注意深く施策を進めていくタイプで、集団をまとめていくのが得意です。社員や会社の関係者からの信頼を基礎に持つ企業の風土を築いていくので、組織に絶対的な安定感があり、多少の浮き沈みに対しても会社全体の耐性も強くなる傾向がみられます。

 

経営者の修行

 以上、経営者のタイプを勝手に分類しましたが、これを全て満足に備えている経営者はそう沢山いません。

 要は、経営者自身が自分のタイプを認識して、一つのタイプのみでなく他のタイプの良さを吸収する努力をいかにするかです。いわば、経営者の修行の過程と見做せます。

プロの経営者は自己認識の上、自分を磨く努力を人知れずやっています。

 性格に関係するので本質的なところは変わらなくても、本人の行動のパターンは変えられるところがある、との認識をもっているからです。

 ご参考になれば幸いです。

 

第273回 新しい通貨と既存の基軸通貨

Posted on 2018-02-22

 最近、或る仮想通貨取引所からカネ(仮想通貨)が不正に流出したと報じられて、大きな問題になっています。

 株式が発行されその流通や取引の便益として証券取引所が開設されるのと同様に、ビットコインに代表される仮想通貨が発行されると、そのコイン自体の取引の便益のために取引所が開設されるのは当然のことです。

 冒頭の事件は取引所の問題で、その管理がずさんなために取引所から通貨が盗まれた(銀行強盗に入られた)ことで、本来ビットコインの持つ特性とは違う次元の話です。

 

 そこで今回は、デジタル通貨の代表格であるビットコインについて、この本質について述べます。

 昨年、神戸の小麦粉製粉、食品加工業の株式会社三輪の苦瓜裕一郎社長が食事会での説明時に使われた資料も、本コラムの参考にさせていただきました。この分野やデータマイニングに非常に詳しい社長です。氏が作成された資料の利用に関してこの場をお借りして御礼申し上げます。

 

ビットコインの意義

 中央管理者がいない「非中央化(Decentralization)」の世界で成り立っている仕組みで、金融分野でも管理者がいなくて動く仕組みであること、あえて言えば、ネットワークの参加者全員が仕組みを管理していると言える全く新しい概念を通貨の世界に持ち込んだ、ある種の社会革命であると、苦瓜氏はビットコインの意義を資料の中で述べています。

 私自身もビットコインのことを最初にニュースで知った時、青天の霹靂の驚きでした。地域でのみ流通する貨幣は別として、通貨の発行と管理はこれまで中央銀行や国家しかできませんでした。ところが、ビットコインが出てきたのです。

 通貨の発行と管理を牛耳る権力へのある種の挑戦です。通貨の発行権を政府から奪うものになるからです。また、君臨してきたドル基軸体制への挑戦でもあります。

 学生時代に学んだこととは全く真逆のことが現実に起きています。

 全員が管理者であると言われるビットコインの仕組みの根幹は、後述の「ブロックチェーン」と呼ばれる取引の記録で、このすべてが公開されるのが特色です。改ざんが出来ないか、出来るまでのコストが膨大でそれをトライする意味がないことを仕組みの中に持っています。全く新しい概念です。

 

決済方式

 ビットコインはデジタル通貨です。AI時代のコンピュータが作り出したもので、これまでの通貨と異なり、銀行を介さず送金でき、送金の信号は全て暗号化されて犯罪者が入り込む余地がないことや送金コストの安さから、貿易などの決済通貨として商取引に一大革命を引き起こすと予想する人が多いです。

 「ウォレット(Wallet)」と呼ばれる財布をパソコンやスマホにつくることから出発します。

 ビットコインのソフトを使ってダウンロードしたものを「ウォレット」と呼び、ここから送金受け渡しをする。送金の信号は全て暗号化され、一つひとつに電子認証が組み込まれていく。相手はそのまま受け取る。したがって、この取引間に犯罪者が入り込む理論的余地がないものです。

 

秘匿性

 苦瓜氏曰く。「取引所で(法定通貨に)現金化すれば所持者は分かるが、ビットコイン同士での送金などの決済をした場合は、政府をはじめ第三者が詳細を掴むことはできない。

 ビットコインはソフトウェアそのもので、口座番号に相当するアドレスは乱数であるため、決済のたびに基本的には変わる。ビットコインには個人を表すデータはなく、ビットコインアドレスも現実に個人と結びつけられているわけではない。

 但し、過去の取引記録や利用するウォレットや取引所、IPアドレスなどのデータから、個人や組織が推量特定されてしまう可能性は否定できない。」と。

 このようにビットコインは、仕組み自体が秘匿性の極めて高いソフトウェアです。

 

これまでの通貨との違い

 円など政府が発行する通貨を、「フィアット・カレンシー」と呼びます。中央銀行が発行した法定通貨、ドルや円のことで、フィアットの意味は金や銀に兌換できない「不換紙幣」のことです。

 対するビットコインのようなデジタル仮想通貨を欧米などでは「クリプト・カレンシー」と呼びます。クリプトとは「暗号」のことを言います。

 この言葉の意味からしても、ビットコインは全く違う概念の通貨であることがお分かりになると思います。

 簡単に言えば、前者が国家の意図や国策、戦争などの影響を受けるが、後者はその影響を受けない通貨です。

 

クリプト・カレンシーの先駆

 クリプト・カレンシーの先駆は東アフリカのケニア共和国で生まれた「エムペサ(M-PESA)」と言われています。調べてみると、PESAとはスワヒリ語で「お金」のことです。2007年に開発された、携帯電話で送金、出金、支払いまでできるモバイル・マネーサービスで公共料金や教育費の支払い、給料の受け取りまで賄っているとのことです。

 銀行が不要であるので、どこにいてもM-PESAを通じて金を受け取ることができます。

 銀行口座を持たない人から急速に普及し、相手の口座番号を知らなくても送金できるサービスで、現在、ケニアでは人口の約6割強が利用するほか、南アフリカやインドにも利用者が多いという発展ぶりです。

 

ブロックチェーン 

 このM-PESAと違い、ビットコインは「ブロックチェーン」という技術・方式を使っているのが特徴です。

 即ち、その方式は、苦瓜氏によれば

・対になる二つのカギを利用してデータの暗号化、複号を行う暗号方式を使う。

・暗号化に使うカギは他人に公開する「公開鍵」、復号に使うカギは自分しか知らない「秘密鍵」で、それが セットになっている。

・データの送受信の時、送信者は受信者が公開している公開鍵を使いデータの暗号化をおこなう。

・暗号化されたデータは受信者へ送信され、受信者は自分のみが持つ秘密鍵を使いデータを復号する。

・データを復号できるのは受信者のみであるので、第三者にデータを盗まれても復号されない。

・公開鍵は他人に教えても問題ない。秘密鍵は自分以外には分からないようにする必要がある。

・自分しか知らない秘密鍵を使って署名を行うことで、送金者が正しいことを証明する。

・ビットコインはなりすましやデータの改ざんなどの不正行為を防ぐための優れた仕組みを持っているため、秘密鍵の保管を適切に行うことができれば、紛失、盗難、不正資料などの心配はない。

これまでの基軸通貨は通貨という物理的なものを基礎にしていますが、ビットコインは「公開鍵」と「秘密鍵」をセットにした暗号、復号技術を介したソフトウェアそのものなのです。

 

今後の発展性

 ビットコインは世界各地でひろまっていると言われています。熱心な国の一つがスイスです。この国の中部、ツーク市では住民登録料の支払いがビットコインでできるようになり、また、キアッソ市では納税もビットコインでできるとのことです。但し、住民に賛成派、反対派が入交リ、これを世界的に広めることができるかについては紆余曲折ありそうです。

 私の一世代前は、戦後、お金の価値が突然ほとんどなくなった体験をしています。1946年に、政府がそれまで発行していた通貨を一定限度を超えると無効として、新円を発行しました。こうして国民の財産を巻き上げたことがあります。戦争などの契機で各国の政府がやる手段です。

 これに対して、ビットコインは人々が自衛のために編み出した通貨であるとも考えられます。資産としての価値があるかについてはいろいろ議論があると思いますが、私が自分のパソコンでウォレットを動かした仮想通貨は、絶対に誰もこれを複製できず、私のモノであることは間違いありません。政府も誰も介入できないのは、「ブロックチェーン」たる台帳に記録していく暗号技術に大きく依存しています。

 これまで通貨の供給量は国が管理してきました。しかし、考えてみるとそれでも金融政策が上手くいかないことが多い。ビットコインでは、管理する発想がないため、仮想通貨の供給量に対する需要の大きな変動を危惧する人も多いのが事実です。通貨というより資産として投機的対象になってしまうということです。

 しかし、現実に今の基軸通貨も投機的対象と考えているファンドなどの投資家が多数いるのも事実ですので、この批判も如何なものかとも思います。

 2008年に創設されたビットコインの発行数は現在2100万BTC枚と言われています。いろいろな議論と体験を通じて、今後、この技術の発展により、ビットコインの利用が拡大していくと、既存の基軸通貨の管理代理人たる銀行が大きな影響を受け、一部つぶれる可能性がでてきます。さらに、「ブロックチェーン」の仕組みに基づく新しい基軸通貨としての地位を築く素地を持っていると言っても過言ではないのではないでしょうか。

 

 

 

第272回 短期的既存顧客作戦とマインドセット

Posted on 2018-02-15

 成長軌道に乗せる近道には、新規顧客の獲得が不可欠です。

 しかし、同時に短期的には既存クライアントの活用、活性化策も重要です。今回は、ここに絞った論を展開します。

 

特別扱い

 既存のクライアントが、自社が特別視されているという認識を植える工夫が必要となります。

 そこで既存のクライアントとのビジネスを拡大する方法は;

・一番維持したい顧客に特別なことをする。

 残念なことに、意外にこれが出来ていない会社が多いことに気づきます。この会社は自社の社員の給料の源泉がどこからきているかに鈍感になりすぎているからです。

 この特別な顧客のためだけにセミナーを開催し、この会社への自社のサービス展開について特別説明をおこなう機会を設けるなどの方法もあります。

・最近取引がなく、足の遠のいた顧客を呼び戻す。

 過去の顧客には、二度と購入しないと決めた人ばかりではありません。過去にトラブルで足が遠のいた顧客にも、撚りを戻す何かのきっかけが必要です。既に利用していたわけですから、自社のサービスに対する需要は必ずある、競合他者を利用している可能性が高い。

 試しに最近開発したプログラム上で再度利用してもらうなど、過去の接点を呼び戻す方法は沢山あります。掘り起し作戦です。

・顧客が購入するたびに、付加価値の高い他のアイテムやサービスも提案する。

 何かの購入者に付属品を付けるなど喜ばれる場合も、もちろんあります。

 しかし、これがワンパターンになると、嫌われる。あの会社はいつも何かの餌で釣ろうとしているという、意図とは逆の印象を与えてしまうので、タイミングややり方には十分留意が必要です。

 

Unique Selling Proposition(UPS)

 競合との差異化、市場で自社のサービス・商品に引き付ける魅力を営業的にUnique selling proposition(UPS)と呼んでいます。もともと戦略的に発想するにあたり重要な言葉ですが、短期的作戦でも最も重要な一つです。会社の成長のドライバーと深く関係してきます。

 仮に、営業上「クオリティー」で勝負すると決めた場合、この言葉だけでは顧客を引き付ける誘因にはなりにくいです。もっと、顧客に響くフレーズや言葉が必要です。

 一例ですが、「当社が独自開発したプログラムに乗れば、必要な時に必要な人材を90%集める自信があります。」など、「クオリティー」を表現するにあたり、顧客への具体的な価値を表す言葉が良いでしょう。こうやれば、顧客は「ピーン」ときます。

 実は、このUPSをどれだけ沢山ノウハウとして構築できるかが、短期を超えた中期の勝負に大きく影響します。

 

経営陣のマインドセット

 短期的作戦展開には、社長や経営陣のマインドセットが重要です。

 短期的に上手くいかない時には、マインドが自社のため、自分のためと一般的に視野が狭く利己的になりやすい。これが、実は短期的顧客開拓に逆効果をもたらしていることに気づくべきです。

 社長は自社の利益のみでなく、顧客のために自社の資源を最大限活用する発想が必要です。特に、B-to-Bではこの発想が肝要です。この時に、はじめて独創的な発想が浮かぶはずです。マインドの内面が利他の豊かな心をもてば、ざるで水をすくう如く、他の人に与えるそれ以上のものが得られることになります。

 このためには、「顧客にサービス・商品を売る」視点から「クライアントの役に立つ」視点に発想を転換することです。自社の資源を惜しみなく使い、クライアントの課題を解決して彼らの成長をサポートする。ソリューションという単なる言葉を超えて、本気で彼らの課題解決に近づく姿勢が必要です。「顧客第一主義」と私が表現するものです。

 派手なマーケティング手法などはいりません。課題を解決するのに自社の何が足りないかを真剣に考えることになります。また、出来ない空約束などもしない。誠実に自社の顧客に真っ先に利益をもたらす姿勢と行動こそ尊重されるべきです。

 

第271回 空き時間は「ボーッ」とする

Posted on 2018-02-08

 先週風邪で寝込んでいた時、NHKのテレビ番組で脳科学についてノーベル賞受賞者山中伸弥教授が紹介した事例が印象に残りました。

 脳内の無数の細胞が一番広い範囲にエネルギーを使っている時は、私流に言えば「ボーッ」としている時と要約できます。集中時は特定の範囲を使っているが、その時とは違う組織まで動員して、過去の記憶を保管している細胞部分も活性化させているとのこと。これが「ひらめき」につながるのではないかと。

 そこで、この科学的事実を知らずに、以前私が「これからの課長の仕事」(ネットスクール)の中に記した一部を、以下、ほぼ原文のままここに紹介させていただきます。

 一時、手帳がスケジュールで埋まっていないと心配な頃もありました。忙しい皆さん、そのように思ったことはありませんか?

 回遊魚のマグロのように絶えず動いていないと仕事をしてないような勘違いをした頃です。

 

 ところが、時間を空ける工夫をして以来、脳の動きが活性化した印象を持っています。

   ・緩めることが必要です
   ・忙しすぎると全体が見えなくなります
   ・部下の顔を見る時間が少なくなります
   ・あなたの顔が焦りでひきつっているように部下の目に映ります

 

 課長時代は一番多忙な時期です。空き時間は少ない。従って、自ら主体的に空けることです。それぞれ方法を持っていると思いますが、私の場合を紹介しましょう。

 空き時間を作り、胡坐を組めば結構。座禅をする意識を持たず、私は時々瞑想することを楽しんでいます。自宅でもオフィスでも、どんなに騒がしいところでもできます。10分あればOKです。「ボーッ」と、何も考えず自然に任せます。その後、脳の働きが確実に違い、発想が変わることを体験しています。

 「ボーッ」とした状態を、あるときの私のメモでは、般若心経からのヒントとしてこう表現しています。

 「過去の執着をなくす。無、不、空、いつも空っぽの状態。色即是空、形のあるものは実態がない。常に自己との闘いである。他人の評価、相対評価を気にせず、堂々と自分の人生を歩む。失敗もできる人生。否、むしろ失敗や挫折の連続で、失敗しつつ成功し、成功しつつ失敗する状態。矛盾こそ向上の条件である」と。

 電車の中でも寸暇を惜しんで仕事をしていた頃がありましたが、少し余裕ができたころから、電車の中では、外を見て「ボーッ」とするようになりました。窓外の景色、自然の変化を楽しんでいます。

   ・冬、木枯らしが飛ばす紅葉の舞
   ・春、新緑の芽吹き、桜の花、花ミズキ
   ・夏、紫陽花の色の変化
   ・秋、黄金に変わる山肌

 ボーッとする時間が貴重な時間に変わりました。皆さん、時にはスマホを手から離し、日々工夫して、空き時間をつくって「ボーッ」としてください。

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