リーダーシップ
「変革」のためにどのようなリーダーシップを発揮していますか?(1)
社員を大事にし、社員とともに成長するという基本的な考え方
経営者やリーダーが自己の志を実現していく過程で、社員の支持を継続的に得ながら会社を変革させていくためには、常に社員を安心させ幸せにしていく基本的なスタンスを持ちつつ、しかも、いろいろな場面で変革のための施策を確実に実践していくことが肝要だと私は20年の経営体験で分かりました。
逆に社員のことに余り配慮せず、社員が経営者などリーダーの志に協力しがたい雰囲気の中で成長している企業は稀有だということも分かりました。
幸せの概念は多様です。
成長できる環境、人間関係など個人の価値観によって幸せの概念には違いがあると思います。しかし、少なくとも概念の構成要素として、会社の置かれた状況を踏まえた上で、社員個々人が安心感を持ちながら成長している実感があることが不可欠ではないでしょうか。
社員が成長を感じるのは?
では社員はどのような時に十分な成長を実感出来るのでしょうか。
私の経験では次のとおりだと思います。
- 仕事の裁量を与えられ、日々の仕事に主体的に取り組んでいる時です。
- 成長プレッシャーを感じつつも挑戦的な仕事ができ、結果に対する成果意欲が湧く時です。
- 必要な時に適正な返事が返ってくる良き上司に恵まれている時です。
- やりたい仕事につけた時です。
- お互いに教えあい、協力できるチームワークのある職場である時です。
- チームとしてのコミュニケーションが円滑に実施されている職場環境がある時です。
経営者やリーダーは、上記の点を踏まえた上で変革のためのリーダーシップを発揮してはいかがでしょうか。
変革へのリーダーの心構え
変革のリーダーシップを発揮することはそう難しいことではありません。ただ最低限、次のような心構えがあったほうが、成長意欲を持つ社員をうまく巻き込めると思います。
いろいろな所で引用されていますが、William Arthur Wardという著名な作家で教育者が言っている言葉を思い起こします。
凡庸な教師は、指示(tell)をする、
良い教師は、説明(explain)をする、
優れた教師は、模範(demonstrate)を示す、
そして、偉大な教師は心に火をつける(inspire)。
この最後の言葉に気をつけたいものです。
第一に新しい夢や目標を自分の言葉で語り火をつけることです。
リーダーたる人は、部下の心に火をつけ(inspire)なければなりません。火のつけ方にはいろいろあると思いますが、新しい夢を語るのも一つの方法です。
夢のない人に部下を任せると、部下の信頼を勝ちとって人の集団をまとめるのが厳しくなり、結果として部下の心に火がつかないどころか、逆に部下の心に火がつく前に彼らの心が萎えてしまうからです。またリーダーが、新しい夢を語る相手の人間に興味を持つことが大切になってきます。
第二に、正しい指示と報告をする習慣をもつことです。
指示と報告は対ですが、まずリーダーの正しい指示が適切なタイミングで出されることが大事です。
そのためにはエンドのところを洞察したリーダーの深い考えが前提となります。
結論の先を見越さない指示は、プロの指示ではありません。方向性が全く定まらない議論のみで、出たとこ勝負の判断をしやすいからです。
しかも、指示は相手に伝わってナンボの世界ですから、相手の言葉で相手を尊重して正しく伝えることが不可欠です。エンドを想定して、一人一人との対話を通じて個人の性格や人間性を観察して指示をだしていくことが前提です。個別対応です。併せてその指示が部下の末端まで通じたかを見るために、要点をリーダーが質問するなどして、指示が正確に末端まで浸透したかのチェックすることも必要です。
自分の体験でも、この通りにはならないことが多いのですが、「忍耐力」を持って努力をし続けるしかありません。
まず考えること
リーダーとして変革のために「考える」ことに一番時間を費やしたいものです。
「限られた時間」の中で会社の発展のために時間を有効に使うことが大事ですが、重要なことに時間が使えないのは、リーダーのスケジュールの立て方と部下への仕事の指示の仕方に原因があることも想定すべきです。
代替できそうなことは他の人に任せて、あえてスケジュールを入れないことです。私の場合、ある時期スケジュールが詰まっていないと安心できないこともありましたが、今振り返ればその時期はただ忙しいだけで、本質的なことに時間を費やせていたかを疑問に思うほどです。
特に最近の企業間の競争では、商品の性能に加えて商品のコンセプトやサービスのデザイン次第で顧客に受け入れられるかどうかの価値が決まると思います。この傾向に対応するためリーダーが、会社の変革のための新商品や新プロセスを考えることに時間を費やすことの重要性は論を待ちません。
「ゼロベース」思考の奨励
またリーダーとして「ゼロベース」で考え、さらに奨励される風土に変革することが必要となります。
新しいことを考え発想することが、評価される企業風土です。環境変化が激しいので、その変化に追いついていくために組織として新しいことへの挑戦は不可欠で、競争上にもプラスに働きます。
ゼロベース思考とは「それをやると、必ず失敗する」などといった、新しい発想を排除する既存の発想に凝り固まった論理思考と真逆の思考で、時間を前向きに使うことにもなります。
リーダーは「それをやると、必ず失敗するよ」というような物知り先輩のコメントをやめて、「少しでも上手くそれを実行ためには、何をどうしたら良い?」といった問いかけを、部下に投げかける習慣にしてはいかがでしょう。リーダーが「顧客に今よりさらに当社の商品を選択してもらうには、サービス導線をどうしたら良いか?」など顧客視点を前面に出した質問を、部下に投げかけるのも方法です。「ゼロベース」思考から少しはなれられますが、これに応えるためには、社員自身が結構勉強し「考える」ことが必要になるはずです。
このような質問をしても、すぐネガティブな方向に議論をむかわせるクセを持っている人がどの組織にもいるのが事実です。これは本人が悪いのでなく、これまでの経営のやり方からの蓄積で、そのような風土がなっていると考えるべきです。
「ゼロベース」思考があらゆるところで芽をだし根付く風土に変革するきっかけをリーダーがつくることです。
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