企業の継続的発展
会社の成長スピードに則した経営と人材になっていますか?
組織の新陳代謝や活性化をどう考えるかです。私の経験では、会社が成長するに従って経営層をふくめた昔からいる社員の処遇の問題がどこかで必ず発生します。
一般論としては年代の差による社員の能力の差は歴然とあります。以前からいる一部の経営者や社員が若手の社員より実力が傾向的に劣ってくるのは致し方ないものです。会社の成長に則して経営者やその人自身が成長しない限り、厳しいことですが現実にはそうなります。
会社の器の大きさに合う人材の補強と過去貢献した社員への情け
会社が小さい時には、その時の経営者の器の大きさに合った人しか採用していません。ところが仮に、100億円という規模を狙う会社に会社自体の器が大きくなると当然新しい人材が必要となります。「破れ鍋に綴蓋」と似たもの夫婦を呼ぶことがありますが、経営者や会社と社員の関係もほぼこれと同じです。100億円の規模の鍋には新しい綴蓋、人材が必要になってきます。
会社の器の大きさが大きくなった時、会社が小さい時の経営者が交代をしていたり、その時に採用した社員が会社の成長においつくか、もしくは、新しく採用した優秀な若手の社員に仕事を任せる事になるのが当然です。この時、前からいた社員から不平不満が出て来て社内の雰囲気が一挙に悪くなる事態が発生しやすくなります。
そうならないために、普段から「会社が大きくなると経営者もふくめて新しい優秀な人材に助けてもらう」こと、そのような「新しく若い人が皆の上司につくこともありうる」ことを日常的に理解させたり説いておくことが大切です。古参の人には若手の上司のもとで、その人の特技と能力にあった仕事とポジションを与えることになります。ただし、情けを持って接しなければなりません。過去貢献してくれた人材です。それでも不満な方には最後は「泣いて馬謖を斬る」ことも必要となることもあります。
層を厚くするための人材の育成
会社の活性化のためには、なんといっても優秀な人材を沢山持つことです。
営業を例に挙げましょう。多少の誤解を恐れずに言えば、人間性という視点からすると周囲から芳しい評判を聞きにくいこともあるようなタイプの人材が、営業的には高い成果を上げるのを良く見かけます。お客様への入り込み方やお客様の説得の仕方など、どれをとってもどういう訳か抜群に秀でており、常人が簡単には真似できないような人です。
この様な人の営業方法は、教科書的に真似ようと思ってもまず上手くいかないのが現実です。生き方の尺度が違い、その人は常人とは全く違う特別な才能の持ち主であるからです。ただ、そのような人によく見られる弱点は、単独で注文を取るのはすこぶる上手いのですが、人に教えることは苦手というか、そもそもそのような考えを持たない人なのです。
周囲が魅力を感じる人材と経営センスの教育
一方、天才的な人ほど抜群の成果を残さないが、周囲も人間的に魅力を感じる様な人もいます。ここでも営業マンを例にお話ししましょう。継続的に注文を獲得して会社に貢献し、その営業方法を周囲の人も「真似できなくはない」と感じるタイプの人です。多少問題はあっても、他の営業マンがその人の営業スタイルに魅力を感じ、「見習いたいな」と思うような人です。
会社の経営上は、この後者のような営業マンに経営の考え方や仕組みをキチッと経営指導して、彼のような上司に育成したい部下を持たせ任せるのがいいのではないでしょうか?そうすると、営業マンが育ち、そのことによって組織が活性化してきますので、会社にとって非常に貴重な人材です。
営業は頭の良さのみでなく、営業感など他の要素も兼ね備えなければできない難しい仕事で、この様な才能の持ち主は世の中にそう沢山はいない、このことを感謝する姿勢こそ、経営的に重要であると認識することです。
他方、地道にコツコツ営業をするが実績が伴わない営業マンには何かが欠けています。この「何か」を、上記のような人に実地訓練や研修などの場で教えてもらうのが営業マンの育成と組織の活性化の近道と考えます。
新人の採用――「能力あり」でも、人間性は?
並行して、会社の今後の発展に貢献する新人の採用に常に意を払うことです。ただし、能力のみで採用しないことです。どんなに能力があり賢い人でも、人間性が劣る場合は絶対に採用しないことです。
これを見分けるのに個人的には少し役立った方法があります。「あなたがこれまで一番気合を入れて仕事をしたと思うのはいつ頃、どんな仕事で、何故そう思いますか?」と面接時に質問を投げかけることで、本人の本当の姿を少し観ることができました。本人が準備していないかもしれない突然の質問には、どうしても本音が出やすいのです。自分の手柄のみをとうとうと主張する人もいます。権力になびいて、その時に合わせて自己の主張をいとも簡単に変える人も見抜けます。
それでも、その人の人間性は簡単に見抜けないこともありますから、私も何度も痛い目に会いました。一般的な面接のみでなく、いろいろな場を設けて多面的にその人柄をみるしかありません。その人の評判が本人の周囲から取れる場合は、これが決め手になることもありました。人間の行動パターンはそう変わらないからです。
人間性が劣る人は周囲の人を巻き込んで「村」を作る傾向があります。村の内部の主張を全面に出すことで、力を誇示するタイプです。皆さんの会社でこのような人を間違って採用していませんか?このような「村」を即分解するのがその企業の発展のためです。
継続的に伸びる会社は何が違うと思いますか?
私が経営にとって重要なポイントと日頃考えるところがあります。
「これからの課長の仕事」、「これからの社長の仕事」(ネットスクール出版)の中で「農耕型企業風土」づくりで会社を成長させるための「フォーミュラ」について述べ、そこでポイントを説明しましたが、今回は継続的に伸びる会社のポイントを違う側面から言及します。
チームの中で活きる個々人の能力アップ
第一に、社員一人一人が自主性と能力を持ち、それぞれが機関車の機能を全うできることです。個々の社員がエンジンを持ち、部隊を引っ張っていける能力を持つことです。
その為には、詳細は前述の本に譲りますが、個人の能力をチームとして発揮できるようにする「企業風土」づくりが必要です。
スピードある行動力の維持
第二に、組織風土としての駆動力、行動力が必要です。環境、技術革新やマーケットの変化への、企業の迅速な対応力と言ってもよいかもしれません。
経営戦略を描くことも肝要なことですが、オペレーション上齟齬がなく実行(行動)できるということが担保されない限り、利用者への訴求力は弱まります。企画が実行された段階ではじめて様々な顧客のリアクションが出てくるからです。
時に、企画自体の変更や、サービスプロセスの高いレベルの変更を余儀なくさせることになるかもしれません。スピードをもった行動力で変化対応する柔軟な組織風土が企業を救うことにつながるのです。
特色ある仕組みをプラットフォーム化
第三に、すばらしい特色ある「仕組み」をつくることです。システムも含めたいろいろな仕掛けを仕組みにすることです。
自社のサービス商品提供のためこの仕組みを最初につくるとしても、ゆくゆくは自社以外の他社を含めて共同で利用できるプラットフォームにすると、更に会社の持続的な発展につながる考え方もあります。小さい会社にとっては非常に難しいことですが、第三者が魅力を感じるほどの仕組みやプラットフォームでない限り、その会社の差異化につながらないという意味で難しいことなのです。
その仕組みには通常経営理念やノウハウを具現化する自社の企業風土を映したノウハウや特色が鮮明にでてくるはずです。手の内を開示するわけですから、ここで自社のノウハウをオープンにして第三者の共同利用に供するか否かの経営判断の岐路に立ちます。したがって、自社の企業風土やノウハウを背景としたプラットフォーム(仕組み)を共同の利用に供する判断は、相当な自信がないとできない相談で、そう簡単ではありません。
要は、それぐらい素晴らしい仕組みでない限りその企業の持続的成長を支えることができないので、「仕組み」に大きな特色をだすことが重要です。
「個」より「全体」を売るサービスのデザイン
第四は、サービスのデザインを設計し、商・製品をその中のサービスの一部としてとらえるべきことです。デザインの中にサービス重視の考え方を活かすことです。
企業が売りたい商・製品を押し付けがましく店に並べるのでなく、顧客がその商・製品を手に取り、自分の生活空間の中での利用シーンを思い浮かべるような、利用シーンの各フェーズで利用者の願望や要望をどうサービスのデザインの中でどのように実現していくかを念頭に置いたサービス・デザインにすべきです。
こうするとサービス導線全体の中で、その商・製品の持つ個の価値より、さらに付加価値のついた全体を利用者に提供できるものになります。すなわち、経営の中に需要側のデマンド・オリエンテッドの視点を積極的に取り込むことにつながります。
iPodなどは、楽曲、店舗、第三者のアプリ、電子書籍などのサービス全体をデザインすることで単なる単体商品より、全体として付加価値の高いサービス商品を利用者に提供することを、初めから戦略として狙っていたかもしれません。
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