折々の言葉 / 語り継ぐ経営
第268回 新規事業の発想で革新(1)
どの会社にも、成長してきた理由や背景がある。その成長・発展路線を更に推し進めるのも戦略として重要である。しかし同時に次の成長の柱を作ることも更に重要です。この一環として新機軸の重要性を経営者がいろいろな機会に唱えるのはもっともなことです。
時代の変化にマッチした新機軸を発想しなければなりません。
特に、デジタル化の時代には革新を起こすチャンスが沢山あります。そのチャンスをものにする新規事業の発想について私が普段肝要だと思っていることを述べます。
新規事業の発想プロセス
新機軸を成功裏に登場させるプロセスは、誰が考えても一般的にほぼ同じアプローチになるはずです。すなわち、
a) まず、環境変化や自社の強みなどの分析を経て戦略をたてる、
b) 次に戦略を実現できる事業コンセプトを固める、
c) さらに、事業コンセプトを基本デザインに整理する、
d) この基本設計をサービス展開した時の運用設計図を描く、
e) 同時に、この新機軸全体のリスクと投資効果を比較考量して、
f) 新規事業の着手可否の判断をする
ことになります。
しかし、アプローチは同じでも、発想の深さ、内容の固め方などが、実は成功する人と失敗する人の分かれ道になります。残念なことに失敗した後で、このことを知ることになるのが一般人の常です。
何を主軸に新規事業を発想するか
革新を起こす新規事業、これは言葉では簡単ですが、しっかりした発想をもって新規事業に着手するには、新機軸案件の本質的要素をしっかり満足しなければなりません。
a) まず、競合が沢山いる中で、それを凌駕し世の中に一石を投ずるに値する価値創出を支える新たな仕組みがなければなりません。
これが結構大変なことです。これをクリアしないために、アイデアどまりの新規案件が多くなってしまいがちです。
価値創出の部分は、顧客を引き付けるため自社がどのマーケットでどんな価値を創出して収益をあげるモデルにするかが問われます。大きなマーケットを狙ってそれにふさわしい大きな発想を必要とする場合、自社の既存のビジネスモデルが足かせになる傾向が強い。従って、既存ビジネスモデルに大変容をきたすくらいでないと、大きな価値創出案件にはなりにくいことに留意してください。
b) 加えて、沢山の顧客に対してこれまでのヴァリューチェーンとは違うチェーンを提供するに値するサービス体制も築かねばなりません。
既存のチェーンでは対応できなくなり、いろいろ関連する会社のノウハウとの組み合わせによる新たなチェーンづくりの協力展開になるはずです。結果として、自社のサービスの効率化によるコスト引き下げで顧客にとっての魅力を増すことになります。
c) これらの要素のどこに主軸を置くか、すなわち、新機軸での重さの置き方が重要です。
できれば両方とも大きく満足する新機軸にしたい。この思いは分かっても、投資金額、時間の関係、人材資源、協力会社群の関係などでそれが果たせない場合に、どう位置づけした新機軸とするかを経営層で定めておかなければ、結局どっちつかずの案件となり、新機軸が名ばかりに成り下がってしまうリスクにもご留意ください。
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