折々の言葉 / 政治と国民
第179回 多極化時代の世界とアメリカの現状から学ぶこと(9)
前回の続きです。
どうすれば良いか、解決策はあるか
先週のコラムで、個人の収入、支出に引き直して、日本の財政の問題点を浮彫にしました。この問題点から、
第1点は、どうやって収入を増やすか、
第2点は、どうやって支出を減らすか、
第3点は、その結果、どうやってローン残高を減らしていけるかを考えてみます。
収入、すなわち、税金の収入は簡単に増えるのか
個人の所得税率を更に上げるのは、いろいろな反対が出てきます。そこで、法人からの税率をあげられるかを考えると、これも厳しいです。日本が魅力的な投資国家であるためには、法人税の率が今は高すぎるので、逆に引き下げの圧力が出てきます。
税率を引き下げることで沢山の企業が日本に誘致され、彼らが旺盛な投資を実行し成長してくれれば、税率の引き下げを埋め合わせに足るとのストーリーが、現実議論されています。しかし、これでも二桁の成長率は望めません。成熟社会のステージにある日本が数パーセントの成長率で満足しなければならない段階に入ってきているからです。
消費税が5%から8%に、更に、2017年には10%へと引き上げられることが予定されていますが、仮に10%に引き上げても、計算上、税収は大きく増加しません。 成熟段階にありながらも、帰結として経済が成長しない限り、税収は増えないことになります。
従って、通常のやり方ではない方法が必要です。毎年、同じように予算を配分するのでなく、大きく重点を置いたやり方にしては如何でしょう。
付加価値の高い新しい産業を育てて世界を引っ張っていけるようなものです。既存の技術に新しい技術を組み合わせて、付加価値の高さで他の国と違う取り組みこそ早急に進めるべきです。
しかもその取り組みをすることが税制などでもメリットがあるような制度設計を国全体で早期に取り組むべきと考えます。
支出を減らすことが可能か
今は少子化で社会保障費の赤字が膨らみ、毎年多額の国債を発行して帳尻をあわせている状態です。
しかも社会保障費は、毎年数パーセント、約2.6兆円ずつ増えてきているのが現実です。消費税の増分(10%で約13.5兆円の増加)をすぐ食ってしまうほどです。高齢化社会で受給者が増えてきているからです。
支出を減らせるどころか、社会保障制度の抜本的改革がない限り、むしろ支出が増える傾向になりそうです。
これは、ある意味で当然のことです。若者が、増加する高齢者をささえる方式である「賦課方式」では、誰が考えても先は見えません。2000年には3.6人の若者が1人の高齢者を養う状態でしたが、今の制度だと、2050年には1.4人が1人を養うことになります。
日本の「賦課方式」の制度は、現役世代の払った保険料を高齢者に給付する「世代間扶養」の制度ですので、少子化で現役世代が減少すれば、高齢化社会では、この制度が行き詰るのは当たり前のことです。公的年金の支給開始年度を引き上げても、それは根本的な解決にはなりません。
少子化、高齢化社会で現方式は限界
このことは現在の「賦課方式」の構想を抜本的に変えない限り、支出の大幅な減少につながらず、日本が「財政破綻」への道を歩むことを物語っています。 早急に新しい方式を政府が提案し、国民の議論の過程を経て、改革に取り組むべきです。
そもそも過去の制度の前提は、定年になったら退職する、働くという辛いことから解放され、定年退職後は隠居して自由時間を使い人生をエンジョイする想定です。
しかし、現実は、この想定とは違うのを見聞きします。
特に男性です。暇を持て余したり、少額の年金で生活が苦しくなったり、仕事がないことで社会からの疎外感を味わって病気になる人が多いと、私は見聞きしています。余りにも、貧弱な社会制度がもたらしてきたものです。
彼らが仕事をしていない、働いていない、若い頃の経験が活かせる社会的仕組みがないことが最大の原因なのです。
年令を問わず働く環境インフラ
これを解決するには、退職者も無理なく働ける社会的インフラの整備が不可欠なのです。インフラと企業組織を造り直さねばならないと考えます。
高齢者の体力には配慮しなければなりません。時間的自由度も配慮しなければなりません。高齢者の古い知識を再整備やレベルアップ出来る、低コストの再学習機関の充実なども必要とします。
働くことを生活だけのためにするという過去の意識、それを前提とした定年制度や長時間労働の横行する労働環境を改革しなければなりません。年老いてまで働きたくないと思われる今の職場を、老いも若きも全員参加できる職場に抜本的に変える必要がるのではないでしょうか。
更に、公務員の給与などの改革が不可欠です。ギリシャの例を持ち出すまでもなく、公務員は既得権益を守るため、員数や予算枠を増加させる方向に向かう傾向があります。公務員の仕事は経営的尺度で測りづらいので、給与の値下げ圧力が低いのが一般的です。官僚の反対を押し切ってでも、国家の存亡のために、この膨張傾向を食い止めることができる政治家が出てくるのが待望されます。
最後に、ローン残高の減らし方
徳政令などよほどのマジックが無い限り、毎年の収入から借金を返済するわけですから、上に記載の通り、抜本的な取り組みをしない限り論理的に減少することはありません。
早期に歳入と歳出の抜本策に取り組み、日本が財政破たんのルートから逸れるよう国民全体の課題として考えなければならないと思います。
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