折々の言葉 / 語り継ぐ経営
現場力を出す組織にする
情報化時代の現在においては、特に、リーダーと現場との関係でリーダーや組織の在り方に大きな変化が生じざるを得ないと、私は考えています。
産業革命からつい最近まで、ほとんどの仕事は積み上げ方式でした。この場合、先輩から受け継いだ経験がモノを言う、時代背景を前提とした組織構造が適していました。この組織では、指揮命令系統を表すピラミッド的な階層が必要で、組織が機能ごとに枝分かれし、その組織をリーダーが引っ張るというものでした。
情報化時代の組織と現場の特徴
ところが情報化時代になってから、仕事に於いて、経験よりも創造性が重要になってきています。ほとんどの情報は階層に関係なく平等に開示されるので、情報格差をもとに組織を管理することの意味が失せてきています。
このためリーダーと現場の関係で、組織も変わらざるを得ません。
リーダーは強力な力で引っ張る指揮官ではなく、社員、顧客、時には競争相手とも協調しながら会社を成長させる意思、能力、更にコミュニケーション力豊かな指揮者的なリーダーシップを持つ必要になると考えます。他方現場も、この時代背景に応じて変化を求められます。
過去にも、「現場こそ・・を」と言われていました。この場合の「・・・」はルーチンを保持しながら、継続的に業務をキチッと遂行する場であるとの意味が強かったのが事実です。現場が高品質の商品を生み出し、日本の産業を引っ張る原動力となっていました。しかし、今や新しい意味での「現場こそ・・・」が求められていると考えます。
「現場こそ・・・」の意味
それは私が主張している「農耕型企業風土づくり」の中で述べた、躍動する知恵の塊の現場組織です。詳細は、『これからの課長の仕事』や『これからの社長の仕事』に譲りますが、
この現場組織の特徴は、
・自分が得意とする分野の能力を伸ばせて、そこで競争できる環境がある組織
・経営側が決めた事業の計画に単純に従うのでなく、社員の要望・願望などを社員が自主的に織り込んでいける計画をする組織
・経営側と社員の共通するミッションに取り組むため、一緒に課題を解決できる組織。
・夢を共有し、現場の力を将来に向けて結集できる組織
・社員が会社の方向性に関心を持ち、その目標に向かってベクトルを結集できる組織。特定の幹部層のみでなく、全社員の力を結集できる組織
・あらゆる機会をとらえて現場の持てる潜在力を発揮させる組織
・男女間の格差が無く、全員が評価されていると感じる評価方式と報酬の分配をもつ組織です。
要は、社員個々人が自分の人間性に忠実に生きる働き方ができる環境をリーダーが与える組織、結果として、現場の知力を更に高めることが出来る組織です。
情報化時代の現場は、対話を通じて部下を知り、彼らを育成しながら集団でイノベーションを起こせる主体という意味で、組織的に知を結集できる価値の創造の主体になると言っても過言ではありません。
価値を創造、高度化する現場組織
上記の通り、企業としての実質価値を増加させるのは、現場の組織です。従って、リーダーには、現場こそが知を創造する主体であるとの認識が不可欠になります。
価値を付加したり、新しい価値を創造したりするには何か特定の方法があるのでなく、自由闊達な環境下で日常の仕事の実践や違う現場との真剣な話し合い、他部門の業務の経験などが必要なります。継続的にルーチンを保持しながらコツコツと日常の仕事を弛まなく積み重ねていくうちに、価値が生まれると考えます。
それほど、私は現場を大事にし、普段の仕事から新しいものを生み出す「現場にこそ真実があり」とまで言い切っていました。
その意味で現場の社員は、上記の意識を持って「仕事をしている」か否かを問われることになります。また、現場に経営実態が全て映し出され「現場が経営の鏡である」としたら、リーダーを中心とした経営側も、情報化時代の変化に応じた組織運営ができる対応を真剣にしているか否かを問われます。
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