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折々の言葉 / 語り継ぐ経営

普通の中小の会社の競争作戦(1)

Posted on 2014-12-18

 そろそろ2014年最後のコラムとなります。これを2回に分けてお送りします。

 私が、経営を委託されていた会社を約20年間かけて実質的に業界のNo.1にまで育て上げることができ、た競争作戦の一部を今回紹介します。ごく普通の会社であっても、業界のリーダーになれることの一例を作戦面から示すことで、これから起業される方々、現在置かれているポジションから更に飛躍して業界のリーダーになろうとしている経営者に、ある意味のヒントを呈示したい思いからです。

 

普通の零細中小企業の特徴

 私が経営を任された会社の特徴は、以下の通りでした:

・普通の小規模の会社でした。

・社員の質もこのレベルの会社では一般的に見られるような、普通のレベルでした。

・商品も特別競合他社と差異化を図れる商品ラインはありませんでした。

・この業界には大手通信系の子会社が、長年一番として君臨していました。

・大手通信系の子会社が持つ親会社のような固定的な顧客はほとんどいない状態でした。

・資金は極端に欠乏し毎月の手形の決済が危うく、手形の所持人とのハードな交渉の舵取り次第で、いつ不渡りを出し倒産してもおかしくない状態でした。

 すなわち、総じていえば、何処にでもある普通の会社、あるいはそれ以下の瀕死の状態の会社でした。この会社が十数年後に実質業界のリーダーになるために打ち出した作戦の一部は、『これからの課長の仕事』、『これからの社長の仕事』、『礼節と誠実は最高のリーダーシップです。』(いずれも拙著作)に紹介しましたが、今回は、表題のタイトルのテーマとの関連の部分にのみスポットを当てて、普通の中小の会社の取るべき競争作戦の事実を紹介します。

 

1.大きなリスクを回避する

 会社自体が倒産しそうでしたから、いきなり大きな賭けをすることが出来ませんでした。

 次月の社員給与の支払いに窮している状態でしたから、大金を使うような新規事業は全くできませんでした。会社がある程度軌道に乗るまで、初期の頃はとにかくリスクを回避した事業作戦の展開に知恵を絞り、リスクを回避しながら活路を探すことに注力しました。

 知恵に窮して、一か八かの賭け的な事業リスク展開で活路を見いだそうとして失敗した事業者を、私の周辺に見ることがあるのが残念です。もう少し、せ我慢が大切だよと、教えてやりたい気持ちになることがしばしばあります。

 

2.固定費のかからない作戦に注力する

 サービスのクオリティーを第一義としました。

 これには、追加の大きな投資コストがかかりません。すでに採用している社員の固定費に追加コストとして研修費をかければ、可能な作戦でした。

 大きなリスクを冒す心配は全くありませんでした。しかも、少ないながらも既存の顧客を維持し、出来ればファン化するためには、クオリティアップの策が不可欠な要素だと経営感覚として気づいていたからです。大金をかけて差異化を図る作戦があっても、当時は会社としての余裕が無く、最小の投資で最大の効果を上げる作戦を選択したのです。

 

3.顧客の信頼を得るための活動をする

 顧客との直接接点を増やすことに専念しました。

 変な価格競争に巻き込まれてしまうと、売上は上がるが利益が出ず、資金に余裕がなくなります。それよりも直接顧客に出向いて担当者にお会いし、親しくなったついでにあわよくば他の会社のご紹介を頂くことにしました。

 後に、これを「顧客第一主義」と名付けましが、要は、直接顧客のロイヤルティーを獲得する作戦です。評判とは怖いもので、信頼を頂いたクライアントから紹介いただいた顧客はこれまた良い顧客で、結果として顧客の好循環が出来ることになりました。真摯に顧客の意見を聞き、それに誠実に応えていった賜物です。

 

4.NO.1企業とケンカをしない

 No.1の企業とは、一緒に音頭を取って業界の団体を作る努力をするなど、なるべく、直接ケンカをすることを回避しました。No.1になっているからには、それなりにノウハウが溜まっているので、やみくもに戦争を仕掛ける愚は犯しませんでした。

 No.1の会社の社長は人物でした。業界の正常な発展を目指す大義に共感いただき、業界の団体づくりには多大なご協力を頂きました。新米物の私など競争相手として彼の眼中になかったかもしれませんが、いずれにしろ、私からNo.1のこの会社に大きな戦争を仕掛けることは意識的に控えていました。

 会社の内部的には、いつかこの会社に勝つことを宣言していましたが、外での大きなケンカはなるべく避けました。他の通信会社からの注文や、この会社の親会社からおこぼれ的な注文を頂戴しながら、少しずつ商売のテリトリーを拡げていきました。No.1との戦いも当面小規模を旨として、当方のエネルギーの消耗を最小にする作戦を展開したのです。また、No.1の会社の親会社が全国展開をするある企画では、当然そのNo.1の会社が商売の大部分を受注していくのですが、我々も彼らと同一基盤の上で、ある程度の商売をさせてもらい、利益を享受しました。協力をする姿勢で、決してケンカを売る姿勢は取りませんでした。

 

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