園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

折々の言葉 / 語り継ぐ経営

顧客サービスに関わる原則の理解(1)

Posted on 2014-09-04

 先進国と言われる国々では最近、GDPに占めるサービス産業の比率が増加傾向にあります。ある報告によれば、アメリカでは広い意味でのサービス産業が80%を占めていると言われるほどです。

 サービス産業の定義自体に不明確なところがありますが、今後、日本でもGDPに占めるサービス産業の比率が増大する傾向にあるのは確実です。今回は、顧客との接点を抜きにしては考えられないこのサービス産業の中で、顧客サービスについてふれてみます。

 私もサービス産業の当事者の一人でした。過去にサービス関係の経営に関わっていた経験から、良いサービスを提供するには、ある種の原則があること、しかもこのことを社員全員が認識しなければならないことが良く分かりました。また、サービスを提供する側、受ける側の双方がこのことを理解して初めて良いサービスが成立することも分かりました。

 サービス関連のビジネスが重視される中で、顧客サービスに関わる原則を以下紹介します。

 

1.エンド・ユーザーはサービスも含めた全体に対して商品・製品を評価する傾向があること

 自社の商品自体の品質の優秀さのみを誇る時代は過ぎました。消費者は商品・製品自体の品質のみならず、消費者がそれを利用するにあたって関係するサービスも含めた、全体を評価している傾向が大です。

 最終消費者に自社の商品・製品が届くまで、いろいろなサービスが関与するのが現実です。顧客サービス自体をメインの営業商品としていた会社の経営を託されていた私は、サービスも含めた全体のことで気づくことが多くありました。

 メーカーの経営者に多いのが、自社の商品・製品に絶対的な信頼を置くことです。それは良いとしても、それに付随するサービスの部分を軽視する姿勢が言葉の端々に出てくることでした。消費者はメーカーの名前を買うのでなく、それを利用してどれだけ満足するかに評価ポイントを置いていることを忘れがちになっていることです。

 何かトラブルが生じた時に、その企業がどう迅速に対応してくれるか、クレームに対して、いかに消費者の立場を尊重して対応してくれるか等の、総合的なポイントを消費者は重視しています。これらのことが、彼らの友人同士での口コミに影響を及ぼし、結局その企業のブランドを形成していくことになります。

 したがって、商品・製品が生まれて、顧客の利用に供する時までの全体のシーンに、企業がいかに知恵をめぐらせ配慮するかで、顧客の評価が激変してくるという原則を、サービスの提供側がまず理解しなければなりません。

 

2.全体のサービス・デザインニング(設計すること)がキーであること

 上記の関連で言えば、サービスも含めた全体の設計、特に、サービス・デザインニングが重要になります。サービス全体の設計です。

 最終的に人が関与するとすれば、その人、顧客と接点を持つ最前線の人々の意欲や能力をどう高めるかの仕組み・仕掛けがデザインの中に組み込まれていることが肝要です。

 一般にデザインと言うと、どうしても人間を排除したシステムが優先されますが、私は、人間のモラールを除くデザインニングはほとんど無意味だと思うほど、人が関与する部分を重視しています。

 人のモラールを高める一つの方法として、顧客と接点を持つ現場に最大級の権限を付与して、現場社員の判断と裁量を重視することで彼らの意欲を高めることを薦めたいです。自由裁量を与えられた人々の行動パターンをつぶさに観察していくと、彼らの頭の中に知恵のカタマリがあることに気づきます。この知恵を自由に開花させる環境を与えることが、いかに企業の生産性に関係するかが良く分かりました。

 ただしこの時には、裁量を与えられた現場からの報告が詳細でかつ的を射たものになるような報告書の形態を、デザイニングの中でしっかり考えること、および、報告書に基づいた会社としての迅速な対応の仕組みも、設計(サービスデザイン)の段階でしっかり押さえておく必要があります。

 

Related Posts

 

Comment





Comment