折々の言葉 / 語り継ぐ経営
第289回 リーダー意識(1)
社会に何を築いていくかの根本的マインド
「儲かる会社」、「儲かる事業」などという表現をよく耳にします。
会社としての最大の目的が、たくさんの顧客を発掘して、結果として利益を上げることだとすれば、「儲かる」ことは当然の表現です。会社を支える株主を考えれば、所期の利益を上げ、「儲ける」のはリーダーとして最小限必要なことで「勝ち続ける」ことがポイントです。
しかしながら、これだけで十分でしょうか?
リーダーには、もっと大事なことを目的の一つにして欲しいと私は考えます。
その会社が社会のために業界の中でどんな新しい橋頭堡を築いたか、築いていこうとしているかが大事なことではないでしょうか。
どのリーダーにも物語、ある種の野望があります。この野望が単にリーダーの私利私欲でなく、世の中を変革して新しい何かを築いていくことになれば、これくらい幸いなことはありません。
長いスパンで考えると、結局はこのことがその会社の価値を決めることになるのではないでしょうか。
リーダー人材づくり
社会のために何を築くのかの内容は、リーダーの野望やその事業が置かれた業界や業種によって違いがあります。
私は、いろいろな過程を経て、「人つくり」で社会に橋頭堡を作るのも大きな責務と考えています。しかも、本人自身を高めつつも、集団のことに配慮し、人の心に情熱と安心感を抱かせることができるリーダーたる「人つくり」です。
このような「人つくり」こそ、今の時代に必要だと確信しています。
私個人はHow-toにたけた「人つくり」ではなく、社会に何かを残す上記のような「リーダーになれる人材つくり」こそが、一番の社会貢献になるものと考えています。
多少コストがかかってもこのような「人つくり」に重要なターゲットを置き、これで会社の社会的価値づけをしようと考えていましたが、今もこのスタンスに変わりありません。
ここで私が目指す「リーダー人材」になるには、具体的にどういうマインドを持ったら良いのでしょうか。
顧客密着を徹底するマインド
モノやサービスが売れない限り、会社は成長しません。
私が事業で常に発想しているのは、自社の商品やサービスが本当に顧客に受け入れられているのかを常に振り返ることです。
売れないのはあくまで現象で、顧客に受け入れられていない時にはその背景があるからだという根本的認識が不可欠です。
顧客の要望を、いろいろなチャンネルやメディアやイベントを通じて把握することから始まります。汗をかく地道な仕事になります。
顧客の声を聴き続けると、「顧客に受け入れられているはず」という社内の力がある部門や特定の人の一言で全てを通してしまっていることが、意外に会社の成長を大きく妨げていることを猛省する機会になります。
社員集団の知恵を生かすマインド
同様に、自分の会社が社員にどう映っているのかを、経営側として常に気にしている視点目標を大事にしています。
これは社員に媚を売ることを言っているのではありません。
経営陣、社員、取引先などの共同体組織がたまたま会社という形態をとって、社員を雇用しているという理解から発想しているからです。
会社の内容が社員によく映ることは、彼らの脳の回転を積極的にし、彼らのマインドが活性化することにつながります。全員で協力して会社をさらによくしていこうという発想につながります。これが結果として、顧客に受け入れられることにつながるのです。
やることでマイナスはありませんが、特段大金をかけて「社員満足度xx調査」などする必要性なども本来ありません。社員への映り方の把握のために、有益な情報は社内のそこら中に沢山落ちているからです。上司と社員の「1:1の対話」こそを、常に心がけているかがポイントになります。
経営施策が社員にどう受け入れられるか、どう映っているかを出発点とし、集団の知恵で創意工夫をこらし「PDCA」を回して、自社の商品やサービスを買う側、利用する側の視点で、皆で改善することにつなげていきます。
商品やサービスの開発も、顧客の要望をどうくみ取り、自社が顧客と一緒に、いかに繁栄していくかの社員の視点を基本とします。
何に差異化を置くかのマインド
さらに、差異化をどうするかを重視するのも当然のことです。この発想がある限り、「景気の波が・・・」と他のことを理由にする議論から少し距離を置けることになります。
景気の悪い時期をプラスに利用できる発想もでてきます。
皆が苦しいこの時期、自社も苦しい。
しかし、逆手に取ってその期間に自社の差異化に時間とエネルギーを費やせば、競合より相対的メリットが多く出せます。
そのような期間に革新的なことに取り組む機会です。例えば、競合に先駆けて顧客をサポートする革新的体制をどう作るかなど、景気が悪いその時期にこそ取り掛かれる。このことがどれだけの大きな差異化になるのか、実は、その時より後になって分かることなのです。
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