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折々の言葉 / 語り継ぐ経営

第263回 ブランディングと経営(1)

Posted on 2017-11-16

ブランディングは「経営すること」と同じことだと考えています。これを経営とは別異に捉える人がいますが、私は、経営の一環として位置づけしています。

ブランディングは経営すること、すなわち、自社の成長を引っ張るドライバーは何かを探し、利益の源泉となるそのドライバーで他社との徹底的差異化を図ることと、ほとんど同意義を有するからです。

「xx予算が使えない。だからブランド形成が出来ない。」という言葉を時々耳にします。これは、半分間違いです。販促予算が少なくても経営のやり方次第で、「強く勝ち続けるブランド」は作れると思うからです。

 

「経営の考え方を固める」一貫としてのブランディング

良いものをつくればかならず売れる時代は過ぎました。競合商品の中から自社の商品が選ばれるには、まず「強く勝ち続ける経営」の基盤をつくることが不可欠です。成長・発展のための「経営の考え方」を固めることに優先順位を置けば、自社の強いところを更に顧客が魅力を感じるブランドに仕立て上げることができます。

この意味で、経営の考え方の一環としてどのようなブランドをつくらねばならないのかが決まってきます。自社が何のノウハウを貯めていくのか、そのために顧客へのアピールも含めて何をどうするのかに深くかかわるからです。

結果として、「違い」を出すために「何をすべきか」「何をすべきでないか」の峻別が明確になり経営にブレが少なくなります。同時に情報の拡散が防止でき、顧客を一点に惹きつける策となります。惹きつけたいブランドを明確にし、それを明文化して組織全体に浸透させる。その基盤を作ったうえで実際のブランディング活動を遂行していく。これがブランディングの手順で、まさに経営の一環です。

 

差異化を明確にし、「一番」になる

上記でご理解いただいた通り、ブランド形成とは、顧客を引き付けることです。そのために顧客の心に「差異」を感じさせるに相当する大きな「違い」をつくることです。

最大の違いは、ある分野で「一番」になることです。

「一番」と「二番」の違いは鮮明です。身近な商品や風光で一番のものを知っていても、二番のものを急には思いつかないことを思い起こしてください。

「一番」こそ、人々の記憶に鮮明に残ります。このことを肌感覚で感じることがブランディングです。

 

1.どこで「一番」になるかを選択する

「一番」になる戦略には以下の通りいろいろあります。どの戦略をとるかは、その会社が置かれている状況によります。

・小さなマーケットにポジショニングを置き、そこで「一番」になる。

私自身、新規商品を主体とした事業でこの作戦をとることが多くありました。いきなり大きなマーケットを狙うには経営資源が不足している。この時に採る方法で、消耗を少なくしてブランド形成を成功させる方法です。

・特定エリアにフォーカスし、そこで「一番」になる。

「地域No.1」になることです。

しかも、その地域にしかない商品として仕立て上げる。特定の地域での戦闘で勝ち次の展開に備えるか、とにかくその地域でダントツ力をつけたい時に採る戦略とブランディングです。

・あるカテゴリーを切り取り、そこで「一番」になる。

競争でカテゴリーを選ぶ方法です。

例えば、或る業界内で「クオリティ」で、あるいは「営業」で「No.1」になる選択です。果物の業界ならなら「糖度No.1」などがこの例です。

全体で勝負するのでなく特定のカテゴリーで勝負する方法で、この商品戦略をとっている会社を最近多くみかけます。

上記の通り、戦略にはいろいろあります。しかし、いずれで「一番」になるにしても、そう簡単なことではありません。

顧客が決めるからです。特色ある商品で、その商品を利用する顧客にとって更にその価値を訴求できるものでなければ顧客は選択しません。

また、トヨタのブランドがどんなに立派でも、仮にトヨタが車でなく衣料品の販売に手を出しても、たぶん顧客の共感は得られないことを考慮すると、顧客の共感を得る価値としてあまりに突飛なものを考えても上手くいかないことも分かります。自社のドメイン近辺で商売のスコープをわきまえなければなりません。

 

2.優秀な人材の定着を図る

「一番」になるには簡単ではありません。

一定の時間がかかります。その間粘り強く全社を巻き込んだ戦略の継続的実践が不可欠です。

そのためには、ブランドを発想し、作り、定着を図れる優秀で異質な人材が不可欠です。このような自社の継続的な活動が会社のブランド形成の支えとなるからです。

チームが一丸となって、選定したポジション、カテゴリー、エリアにエネルギーを集中投下する。キーになる人材群の共感と定着こそがブランディングの必須条件です。彼らがブランドの軸をぶれさせず更に価値を高める大きな力となっていることを忘れないでください。

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