折々の言葉 / 語り継ぐ経営
第261回 ビジネスでの成功は偶然か?(1)
「どうやったらビジネスで成功するのでしょうか?」と質問を受けることがよくあります。
「洞察力と偶然の所産ではないでしょうか。」と、答えることにしています。
「但し、日常の行動や方法によって、成功の確率は高めることはできます。」と、付け加えることにしています。
将来の予測可能性
世の中の事象には大別するとコントロール可能なこと、不可能なことがあります。その中のコントロール可能な事象でも、それが本当に発生するかを予測することはほとんど不可能ではないでしょうか。
その証拠に、将来のビジネス環境の変化を予測して、それに基づいて論理的にビジネス展開をしても上手くいかないことが多い。というより成功の道を論理的に実証できれば誰でも成功するはずなのに、現実はそうなっていないことを見ても、冒頭の私の回答がほぼ的を射ているのではないでしょうか。
ビジネスで成功した人の話を書物で読むことがあります。論理的にはまとまっていても、私にはなんとなくしっくりこない。綺麗にまとまっているが後付けの印象が残り、その内容に疑問を感じながら読み終わることが多いのは、私だけでしょうか。
本当の成功要因は、その本での説明とは違うところにある。むしろ偶然との関りが強くあるのではないかと本の論理展開に疑問が湧くことが多いです。
組み合わせの所産
ほとんどの成功が、洞察する力と偶然の組み合わせの所産だと、私は思っています。洞察する力を背景として自分が興味を持つことにアンテナを張り巡らせていると、偶然そのアンテナがキャッチするものがある。これが成功を掴む入り口だと思います。次に実行の試行錯誤を重ねていく過程で偶然素晴らしいチャンスを見つける。これが成功につながる道ではないでしょうか。
そのためには、環境の変化などに関して最大限自己努力で勉強することが望ましい。私が経営戦略を論じる時にも「環境の変化」を捉えることの重要性を強調するのもこのことが背景にあります。
そうしないと、本人の洞察力が鋭利にならないからです。また、チャンスが偶然到来してもそれに気づかず、前髪を掴める確率が低くなるからです。
或ることに関心を持ち、その周辺に起きる何かの変化を徹底して勉強していけば、偶然到来する或る事象にピンと反応する。こういう行動と方法をとるビジネスマンが成功する確度が高いのではないでしょうか。
予測不可能な世界で如何にビジネスでの勝機をつかむか。
これまで述べた展開から、偶然起きる事象を取り込めるかがポイントなので、勝機を捉える論理的説明は非常に難しいことですが、私はその確率を高める行動について、次のように考えています。
勝機を掴む確率を高めるには
1.付き合う友人の幅や情報源の範囲を拡げておく
たまたまある会社に入社したが、そこで上司との関係が悪くなった。自分のやりたいことができない。よく発生することです。しかし、くよくよする必要はありません。会社以外に友人や上司に相当する人を見つけ、彼らとの交流を通じてどんどん自分の情報源を広め、自分のやりたいことの周辺を洗っておく。
情報の幅と範囲の広さが本人の洞察力を鋭敏にするのに一役買うことになってくると思います。特に、異分野の情報は意外にビジネス成功のヒントとなります。何故なら、新しい切り口を見つけ、何かと組み合わせることで成功につながるからです。このような人が起業した時、ビジネスの勝機をつかみやすい。
2.自分が本当にやりたいことをある程度心の中で整理しておく
情報源に接しても、その情報を取捨選択していくプロセスが必要となります。世の中に「物知り」のビジネスマンは沢山います。しかし、彼らの中からビジネスで成功した人を見つけるのは稀です。自分のやりたいことに照らして情報を選択し、それを組み合わせる準備が足りないからです。
注げるエネルギーの総量に限界があると感じる人は、自分が本当にやりたいことに限定したフィールドにエネルギーを投下したほうが、良い結果が生まれやすいはずです。このため自分のやりたいことに照らして心の中を整理しておいた方が、取捨選択が上手くいき、エネルギーロスが少なくなります。
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