折々の言葉 / 語り継ぐ経営
第241回 「No.1戦略」で差異化を図る
「水は上から下に流れる」。
当たり前のことです。もし、営業部長が部員に有無を言わせず「今日、x件回商しろ。名刺をy枚もらって来い。」と竹やり戦法で営業指示をだしているとしたら、最前線の社員は「また・・・?」とマンネリを感じているか、自信をもって自社の商品や技術を売っていないのではないでしょうか。
会社の上部構造の重要なところが定まっていない証拠です。
私は経営コンサルティングをする時経営者に、「あなたの会社の『No.1戦略』を聞かせてください」と、質問することが多いです。
結構これに答えられない。苦し紛れの返答が返ってくる場合も多いです。
その背景は、自社の本当の「No. 1戦略」を経営戦略的に明確に定義、もしくは再定義していないからです。これでは、差異化が発揮できません。
そこで、大事なことが5点あります。
1.「No. 1戦略」を何にするか
「差異化」が出来ない最大の理由は、今後「自社の何をNo.1にしていくのか」の「No.1戦略」が不明確な場合です。
商品でもよし、サービスでもよし、地域でもよし、技術でもよし、とにかくできるだけ細分化した一定のドメインで「何をNo.1に目指していくのか」を社内で徹底的に議論して明確に設定すべきです。
「水は上から下に流れる。」以上、この部分をまず押さえなければ、経営の先行きに不透明感がぬぐえません。
2.顧客を具体的にイメージした議論をする
顧客に継続的に選ばれる商品でなければ長続きしません。顧客に選んでもらえるには、架空の想定顧客では不十分です。今いる人や、今ある会社顧客を具体的に想定する、そのうえで仮想敵をイメージするのです。
自社の特定の商品や技術機能などを、
・ある一人の実在する人や会社が、
・その商品を具体的に利用するシーンを明確にし、
・その商品をどう使い、どこをどう評価ひてくれるのかを徹底的に議論・分析・検証する
プロセスを経た上での「No.1戦略」としなければなりません。
3.「No. 1戦略」が社内の隅々まで徹底する
経営のコンサルティングをしていると、社長の思いと末端の社員の話との間に大きなニュアンスの違いがあることに時々遭遇します。社長の思いが、全く社内に浸透していない場合です。その原因は、社長自身の思いが誰かからの受け売りもので本気でそう思っていないか、浸透のための努力を怠っているか、双方に欠落がある場合です。
「No.1になる」には、SWOTなどの分析ツールの考え方を駆使して、将来も継続して成長していくためのドライバーを探し、その武器を使用して、特定のドメインで絶対No.1になる作戦を末端まで浸透することが不可欠です。
もしそうでない場合には、全社員のエネルギーを違う方向に浪費させてしまいかねません。。
4.「何故」、それをNo.1にするのかの具体的説明が不足
経営者や一部の幹部はアプリオリにその戦略を納得済みでも、「No.1戦略」には落とし穴がある。
冷静に考えてみると、その商品、サービスや技術をNo.1として位置づけ、第一線の社員が日常的に競合と戦い勝つには、「何故?」に対する明確な回答と納得感があるか否かです。
日常的に顧客を相手にしている第一線の社員からすると、ここがモラールを高く維持する入り口です。「そうだ、だからこの作戦で行こう!」とする納得感がない限り、「上からの指示なら仕方ない・・・」程度にしか受け取らず、作戦に腹落ちしていないので本気になりきれません。
5.自社の「強み」から「No.1戦略」につなげる
自社の強みにテーマを絞って社内で徹底的に議論する中から「No.1戦略」につなげていくほうが確実です。何もないところから一番になることも可能ですが、成功の確率が低いからです。
他社に負けないNo.1商品や技術、どこにもない地域で初、日本で初の商品や技術を自社の中で捜索してみることです。ある部分に関しての比類ない技術力かもしれません。心が魅かれる感動的なストーリーを体現できるモチベーベションプロセスかもしれません。社内に浸透している誇り高き「理念、哲学」かもしれません。これをもとにした「企業風土・文化」かもしれません。
私の経営体験では、これらの候補群の中から絞り込みをすると、どの会社でも必ず「No. 1戦略」の糸口を見つけだすことが出来ます。
一般的なコンサルテーションでは、その会社の弱点に光を当てやすい。私のアプローチは逆です。強みを更に強くすることを薦めています。特に、中小の企業では限りある資源で経営していますので、弱点だらけのはずです。その中でも相対的な強みを探し出し、これを更に強化して自社の「No.1戦略」につなげる。
是非、皆さまの会社でもトライしてみてください。
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