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折々の言葉 / 政治と国民

第173回 多極化時代の世界とアメリカの現状から学ぶこと(3)

Posted on 2015-09-24

前回の続きです。

覇権主義の横行とアメリカの軍事費削減

 オバマ政権は国際協調を旨としていると理解しています。しかし、現実の世界では昔の地政学的な影響を受け、各国が権益と勢力の拡大を狙う弱肉強食まがいの行為が横行しています。

 その一方で、かつて自由主義世界の盟主だったアメリカのオバマ大統領は「オフショアー・バランサー」と称して前線の米軍を後方に撤退させ、遠隔操作で地域の安定を図る軍事政策をとると言っています。軍事予算の財政的な負担を圧縮する政策かと思います。

 それはそれとして、米国が前線にいないことでいわゆる抑止力が衰え、世界各地での地域の防衛体制に悪影響が出て、現実に覇権国家による弱肉強食的行為が闊歩していると思います。

 

軍事傭兵

 防衛費を削減しているというアメリカで皮肉にも、軍事関係で伸びている企業が一方であるようです。9.11事件以来、対テロ作戦の展開で、急成長を遂げているアメリカの民間の傭兵企業、ブラックウーター社のことが、ある本に紹介されていました。

 この会社に雇われている傭兵は、イラクを含む世界中に派遣され、今や2万数千人も契約していると言われています。軍事の民営化政策の一環で、戦争ビジネス化が進展したものです。ネオコンと言われる一派を中心として、国防に影響力を持つ人々が直接・間接関係していると記載されていました。また、何故か、軍の裁判で罪に問われた者はこの傭兵会社には一人もいないとのことも書かれていました。

 本論から逸れてしまいましたが、これこそ今のアメリカの矛盾を露呈しています。世界が混乱している大きな原因をつくったのではないかと思うこの国が、政府の軍事予算を削減している一方、民間の軍事雇用会社は多忙を極めているという現象は、なかなか納得できません。世界の秩序を維持するために、民間の軍事傭兵会社が利益を上げているのでしょうか?はなはだ疑問です。

 いずれにしろ財政赤字を理由に前線から撤退して、後方から遠隔で誰かに指示する戦争スタイルにせざるを得ないのが、今のアメリカの現状かもしれません。日本の安全保障のための大義の裏で、アメリカの軍事負担の一部を日本が肩代わりすることが、今回の安全保障関連法案の立法につながっていると、私には映ります。

 

「パクス・アメリカーナ」からの変貌

 今これを書いているのは2015年9月中旬です。本年8月下旬ころから、日本の株式市場が乱高下を繰り返しています。大本の原因は、中国の経済や統計数字に対する不安・不信心理などが世界中に広まったからです。

 アメリカの株価はこの数年堅調でしたが、最近中国経済の鈍化の実態を示す数字を権威あるイギリスの機関が発表したのを契機に、風評ではなく実態を知った投資家の不安心理を揺さぶり、株価が下げや乱高下に転じています。結果として、世界中の株式市場が大きな変調をきたしています。

 アメリカの景気は良いと言われながらも、イエレン連銀議長がアメリカの長期金利の上げの発表を逡巡しているのは、経済力の弱い国々の景気を悪化させる心配のみならず、アメリカの景気が本当に良いのか疑問との観測が出るほどの状態です。ある意味で、政権のこれまでの政策のつけが一気に回ってきて、政府のかじ取りの判断が出来ないくらい複雑な経済状態であるとも取れます。

 アメリカの経済のピークは、私がAFSの奨学生として高校に留学していた1960年頃でした。今から思えば、アメリカの中間層が「パクス・アメリカーナ」を享受して増加していた時代です。その後も、1975~99年の25年間に株価は上昇したとの報告があります。

 しかし、この成長の背景は、簡単に言えば金融緩和、いわゆるカネの増刷だったと言われています。投資家に魅力あるアメリカを演出して、世界の金をアメリカに引っ張ってきた時代です。

 その金の一部を中間層が享受していた時代です。

 

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