「農耕型企業風土」づくり / 折々の言葉
第165回 ヨーロッパの精神性の概観(2)
前回の続きです。
3.気候、風土からくる食文化の違い
気候、四季です。
今回6月にヨーロッパにいました。その時期の日本は、ほとんど毎日雨だったようです。帰国後も、じめじめした日が約2週間続いています。この気候の差が及ぼす影響です。
これが人間性や精神性に大きな影響を及ぼしていると私は見ます。季節を愛でるより、それからの収穫をどうするかが関心事となるかもしれません。ここに食文化との関係が重要となります。
蛇足ですが、梅雨の季節や四季がないヨーロッパでは、源氏物語や枕草子は生まれないなと思いました。季節感が無いからです。
刺す、切る食文化
食文化で一番の違いは、ご存じの通り彼らがフォークとナイフで刺す、切る文化です。これに対して、日本は、箸でつまむ、お椀の汁をすする食文化です。この違いはどこから来たのでしょうか。
この食文化の違いは、気候の違いから発生します。
今は、遺伝子技術の発展で優れた種苗が開発されていますので、必ずしも当てはまりませんが、中世の時代、ヨーロッパの中心部は寒冷地で、コメはできませんでした。寒冷で痩せた土地でも栽培できる小麦、これがパンの文化に発展していったと思われます。パンを切るナイフは必要としても、箸は不可欠なものではありません。
もし、この寒さが無ければ、ヨーロッパの中心部では、あくまでも仮説ですが、フォークやナイフ以外のものを使う他の食文化の発展もあったかもしれません。
元来、我々日本人は、風土に適した食物、お米を食べてきました。
日本は雨が多い国です。これが高温多湿で稲の栽培を助け、お米に最適です。今回6月の1か月ヨーロッパに旅行している間、雨に降られたのは数日だけ。しかも、すぐに晴れの天気に変わり湿度の低い気候でした。
高温多湿の気候に適したお米を栽培し、これを食べるのが日本人の習慣だったにもかかわらず、日本人は第二次大戦後、変な欧米崇拝と栄養教育の影響でコメを食べなくなりました。「後進国ほど穀物の摂取量が多い」という一部の誤った常識が誰かにより創り上げられた結果です。なんと、第二次世界大戦前は、米を一年間に一人150kg消費していたのに、2007年には67kgと半分以下になったと言われるほどです。
家畜動物、肉食中心の食文化
私は旅行中、ヨーロッパの食生活への順応の良さを褒められたこともありました。日本人の食生活が西洋化した一端が、日本人の私に表れたかもしれません。
先述のような背景があったとしても、このことは日本人の食事がヨーロッパの人々と同じになったことを意味しないのです。日本人の肉食はままごとのようなものです。
ヨーロッパの中世の時代も、極論すれば、戦争、地域戦争の時代です。領主が他の城を持つ領主を襲う戦争です。城を落とせば、その城主傘下の農民と農民が栽培する食料を獲得することになり、食料の多寡が領主の力の決め手要因の一つになるのです。
戦争が始まると彼らは、将来の孤城の準備をします。米が無いので、真っ先に牛、豚、羊などを集めます。今回訪問した先々で城を囲む門、バルカバンがありましたが、その内側に、この家畜動物を囲っておく場所が必ずありました。
これと同類のものは、日本ではコメ、塩、水といったところでしょうか。食生活が根本から違うのです。
ヨーロッパの一部の国々では、地球温暖化や肥料、種苗の改善で小麦が栽培されているのを見ましたが、風土的条件から昔は穀物がとりにくかったので、家畜を主たる食糧とせざるを得なかったと思います。フォーク、ナイフで刺す、切る文化が生まれる所以です。
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