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折々の言葉 / 語り継ぐ経営

第157回 相関と因果の関係に上手く付き合う(2)

Posted on 2015-05-28

前回の続きです。

 

ビッグデータの相関処理vs.因果の実験

 そうは言っても、現実に誰かが沢山の情報を生み出していますので、企業側もビッグデータを処理せざるをえなくなります。ここで予測との関連で思うことがあります。

 最近、あらゆるところでビッグデータの利用が始まっています。ある種の流行です。ここで我々が留意しなければならないのは、この分析は因果でなく相関をもとにした分析であることです。相関はデータの組み立て方、何と何を比べるかによって変化することです。

 従って、意味のある相関と意味のない相関との区別をする必要があります。それには何が何を起こしているのかの、因果を仮定し検証しないといけないことが多いはずです。

 これに比較して、実地の実験では、ビッグデータより深い所まで手が届くメリットがあります。画期的な細胞を発見したと称したSTAP細胞の事件も、論文に掲げるケースを実際の実験を繰り返して、因果の関係に嘘があることが立証されたと推測します。このように因果関係について良く考えをめぐらせてから実験で頼りになるデータが得られれば、結果に至る本当の原因を探ることに役立ちます。

 相関分析だけでなく、実際の実験の重要性も同時に認識しなければなりません。

 

データを読むセンス(感性)

 また、統計解析に振り回されず、データの本質的な意味を見極める力を養わなければなりません。データは同じものでも、見方により違う見え方をすることが多くあります。

 マーケッターに一番求められている力は、実はこの部分です。出てきたものが「何か違う、何か異質な臭いがする」と、感じるセンス(感性)があるか否かです。先週述べた格付け会社で予測をした担当者のケースでは、現実起きていることと出てきたものが何か違う、何故だろうと感じるセンスです。

 

限界の認識と学び

 このように、ビッグデータの相関をもとにしたモデルでは、あくまで相関関係に基づいた分析です。人間が何故その行動を起こしたかの因果の分析ではなく、現実を十分に捉えきれない限界があることを肝に銘じるべきです。

 あるゴルフ場では、ビジター顧客の増大で営業数字を上げるためにコンサルティング会社に手数料を支払い、ネット経由のビジター割引制度を数年前に導入し、顧客数の増大と売上の増加を図ってきました。そして一定の成果を上げてきました。

 しかし、果たして、諸々の目論見通りになったか否かをそろそろ検証するにあたり、これをデータの相関関係で分析するには限界があると考えます。意味のある相関と意味のないそれとを峻別するのが難しいと思われるからです。

 割引率との関係で、新規顧客は来場したが常連の顧客は来ていない、というデータがもし出てくるとすれば、クラブにとってこのゲームは長続きできないことを物語ります。極論すると、その方法だと永久に割引率を高め続けていくことになり、収入を量でカバーしようと定員オーバーでも来場させ、プレーがエンジョイできずに結果として来場者の減少し、クラブ経営の行きつくところが自明だからです。

 何故プレーヤーが来場し続ける行動を起こすかを探るべく、ある程度の常連顧客が訪問出来るような導線を設けて、しかも割引率の上下も含めた各種要因の原因群が、ゴルフ場が本当に享受したいと思う結果になっているかの因果の関係を実験(トライアル)も含めて分析しなければならない論理となるのではないでしょうか。

 相関分析による予測の難しさと地道な実験(トライアル)を含めた因果の関係の紐解きについて述べました。

 

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