折々の言葉 / 語り継ぐ経営
経営上、私が大事にしたいこと
以下に述べる企業風土・企業文化を持ち続ける企業が成長をし続けていることを、私は経営を通じて学びました。こういう企業風土を造る会社は成長し続けています。
1.その時に顧客が求める価値の提供
顧客に対して、その時に求めている価値を提供し続けることです。
顧客は時代により変わります。同じ顧客でも時の経過によって要望が変わってくるものです。どの会社も特徴と言いますか、格好良く言えば、コアビジネスを持っています。これを時代の要請に応じて自ら変質させることが肝要です。
例えば、私が関係していたテレマーケティングの事業では、最初は電話という道具を利用していました。その後、インターネット環境の発展により電話に加えてPC端末での応対が加わりました。更に今は、この分野の技術進歩と顧客の要望の変質に対応してチャット機能での応対に変容、若しくは、今後これが加わってくるのではないでしょうか。
その時々に顧客が求めている価値の提供をするため自社のコアの能力を再構築して、基本となる顧客対応の能力に徹底して磨きをかけることです。
2.身の丈を認識
身の丈経営に徹することです。
私は経営に携わっていた当時、テレマーケティング関連事業の分野において、サービスでなら自社も勝負をできるが、物的製品や私が不案内な商品での勝負をするのは身の丈に合わないと認識をしていました。
そのため、当時多くの経営者が投資に走った不動産や金融の分野には一切手を出しませんでした。その結果会社の経営は、1990年代にバブルと言われた現象の影響とは無関係でした。戦略自体は大胆な展開絵図を描きましたが、経営実践上は身の丈を知って、余剰資金があっても慎重、且つ、質素にふるまっていました。お蔭で、企業経営のリスクを最小限にし、しかも、会社の成長のスピードを上げることが出来たのです。
3.価値観を繋ぐ行為
価値観を共有し、その価値を社員の行動で将来に向けて繋いでいくことです。
価値観を繋ぐ主役は、私の分身たる幹部社員でした。新・旧入り混じった幹部社員の軍団でした。水は上から下へ流れるとの例えの通り、主として幹部社員を徹底教育し、彼らを通じて価値観を繋いでいったのです。
どこの会社でも社是、経営理念などがあり、応接室などに掲げてあります。しかし、それだけでは何のためにもなりません。行動にも価値観が表現されねばならないのです。社員の日常の行動に価値観が徹底して表現されていなければ、会社は思った方向に動かないからです。
このため私は、特に社員の教育を大事にしていました。また、賑わうイベントや神事なども大事にしていました。教育や賑わうイベントは、共有すべき価値を公開し、社員が自らの体験を通じてそれを共感することに役立つからです。
教育やイベントは、社員が組織の中で学習、体験するためには不可欠なプロセスでした。なにも特異なことをやるのでなく、会社が目指すこと、それをどう達成するか、何故社員の協力が必要か等を徹底して議論する場と頻度を沢山設けたのです。目標を達成したら、それを皆で祝う場を設けました。そこに出席して、皆が醸し出す雰囲気と臨場感を体験させるためです。
神事は、もともと私が出雲の出身でありましたので、これを大事にしました。センターの開設などには、どんなに小さくてもそこに神主を招いてお祓いお浄めの儀式を怠りませんでした。この一見理論的には理解しがたいことについても、皆が価値観を共有してくれました。
4.自由度と裁量範囲
自由度と裁量度を高めることです。
組織としての限界はありますが、個々の社員が希望することをなるべくやらせることにしていました。その環境を与え、その中で彼らが自律的に考え、自己の裁量で判断、行動を起こせる環境を作ることです。
身を縛られ自由が無い環境では、生産性、特に中・長期的な生産性が高まらないからです。また、自由な環境から創造性が生まれやすいからです。
以上、主要な点のみを上げましたが、このような企業風土・企業文化を造り上げる過程こそが会社の成長と発展につながると考えています。
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