折々の言葉 / 語り継ぐ経営
センターの社員をやる気にさせる(2)
前回の続きです。
4.定石18 力量を発揮する「場」をつくる
社員は皆、自分の実力をどこかで発揮したいと思っています。そのためには具体的な「場」が必要です。
長と名のつく人が、前回述べた対話で部下を知ることになったとしても、部下が自己の力を発揮できる「場」を提供してあげなければ部下の喜びは半分です。しかし、この「場」が意外に少ないことを長たる人は認識すべきです。
組織内でのフォーマルな「場」は期の始めや中間期の組織編成でかなり決まってしまいます。しかし、その制限の中でも長たる人は部下の力量を発揮させるあらゆる工夫をしなければならない立場にいます。従って、日常定められた「場」のみならず、インフォーマルな「場」でも結構ですのでとにかく「場」を用意してください。この「場」で周囲が意外と思う力量を発揮する人も出てきて、その人を見る周囲の眼も変わってきます。それがきっかけで、チームとして仕事のやり方が変わってくることがあります。
小さなことですが、これらの積み重ねで初めてマネジメントが上手くなることにつながるのです。このことを理解しながら、長は部下が踊る「場」づくりに邁進すると、センター改善のきっかけが見えてきます。
5.定石7 喜びも苦しみも分かち合う「湿り気のある関係」をつくる
センターの社員は大半がチームで仕事をしています。入社して一人前になるために、チームの上司から沢山の指導を受けます。自分の実力はチームの力を借りて初めて発揮できるようになります。
また、長は指導した部下が成長していく姿を見て嬉しく思います。逆に指導した社員が自分のグループから抜かれていくと思う心理が蔓延しているとしたら、そのセンターは、本当の意味で助けあうチーム環境がまだ出来ていない証左です。
改善は可能です。長たる者は、私が本の中で紹介した「湿り気のある関係」を造る努力をされることを薦めます。最初は孤軍奮闘です。しかし、このことに賛同する同志が増えることで、センターのいろいろな改革に勢いが増してきます。同じ船に乗っている感覚を社員が肌で感じるようになってきます。センターのみならず会社全体にとっても、中・長期的な利益の増大に不可欠な定石だと考えます。
6.入り口をしっかりすること
当たり前のこととして、私の経営の定石の中には明示していませんが、人の採用の入り口をしっかりすることです。以後の社内教育研修で成長できる伸びしろも、人によって違いがあります。出来れば伸びしろが大きい人を採用したいものです。しっかりした人材、会社の事業内容に即した人材を入口の採用のところで見極めることです。
人事採用にピカ一の担当者を置くのも方法です。最初の接点を持つのは、社長ではありません。採用される候補者が会社と最初のフェーストゥーフェースの接点を持つ相手は採用担当者です。採用担当者が会社のイメージを植え付けることになるのです。
7.定石7 社員の個性を大事にする
社員個々人の個性を把握して、彼らが育つ環境をつくり指導することです。
人により個性に特徴があります。学生時代の体験やその人の就業経験などから皆、違う個性を持っています。その個性は、その人が育つスタイルにも反映します。人事を担当する人に聞くと良く分かりますが、行動型や考え込む型などいろいろな人がいます。私が経営していた時も、その社員の型の特徴を把握しながら人事配置や担当を決めていました。
この特徴を把握して、その部下が一番ヤル気を起こすスタイルを上司は用意してやるべきです。行動型の社員には、とにかく彼の欲することをすぐにもチャレンジできる出番の環境を与えることです。考え込む型の社員には、彼が考える時間と材料を沢山与えると、彼のモーチベーションが上がります。また、一つのことを集中して考え込むほどではないが、周囲や全体の観察をしないと真剣に仕事に着手しないタイプの社員もいます。このような社員には、全体像を明示して、彼が興味を覚える切り口分野での環境を用意し指導することを薦めます。このように個性を伸ばし、それを発揮させる「場」を用意するにも前回の3で述べた通り、「対話をする」という忍耐強い努力がスタートです。
以上、ご参考になったでしょうか。
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