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折々の言葉 / 語り継ぐ経営

二宮金次郎から学ぶ

Posted on 2014-08-07

 ある時、当時小学生だった孫が「おじいちゃん、変なものがあるよ。」と、彼が見つけた二宮金次郎の像をみて叫び、さらに、「何故、薪を背負って本を読んでいるの?」との質問。育った時代環境によって受け取る感じ方がこうも違うものかと驚き入ったことがありました。

 出雲の田舎に残っていた像を含めて、私の住処の近辺では3体の像しか認識していなかったのに、孫が新たな4体目の像をごく近くの奥まった民家の前に見つけてくれたのです。嬉しいやら、孫の質問を聞いて愕然とするやら複雑な感じでした。

 二宮金次郎から私が学んだ経営上のヒントを2点触れさせていただきます。

 

現場での実践力

 第一に、二宮金次郎は現場感覚を非常に重視し、且つ、行動力・実践力を重んじています。

 『礼節と誠実は最強のリーダーシップです。』(クロスメディア出版)の中でもふれましたが、彼が読んだ歌、「古道に積木の葉を掘り分けて天照す神の足跡を見む」の中に現場重視の実践感覚が表現されています。いろいろな思想を云々するにしても、まず、現場の事実を確かめることからはじめることを主張しています。

 現場に出向いて「知る」、「見る」ことを通じた実践力を重んじる人であると、二宮金次郎の7代目子孫の中桐真里子氏がある著書で述べられている通りだと思います。行動を通じて「見る」、「知ること」からすべてが始まるので、銅像の一番大事なところは、一歩足を踏み出す姿だとも、中桐氏は述べています。

 

仲間の力を結集する方法

 第二に、村人の力を結集することの大事さに気づき、そのための方法を取ったことです。

 小田原近郊の河川の氾濫で農業災害に苦しむ農民が多かった頃、治水工事の経営指導に着手。農民が少しでも災害を回避して農業の収穫を上げられるように多大な努力をした人です。

 土木工事で河の水を上手に田に引き込むことを指導した最初の頃は、彼の心の「私」が前面に出過ぎて上手くいかない。経営指導のやり方に迷い、成田山新勝寺で21日間の断食修業をし、開眼して得た部分もあると言われています。すなわち、土木工事を遂行するにあたり、農耕従事者に当然いろいろな指示を出すことになりますが、命令する上司と作業をする部下との一連の関係性の中にある極意に、修業を通じて気づいたようです。

 農耕に従事する村人一人一人が主役として作業に力を発揮させるには、単に水車で水の引き込みをする作業従事者としてのみ見るのでなく、指示されなくても主体的に遂行する従事者になってもらうために、彼ら村人の心の部分、最近の言葉でいえば、モチベーションの重要性を認識していたからではないでしょうか。

 村人(部下)の現場のアイデアに従わないで、主役は自分だと指示するだけの、浮き上がった自分自身の傲慢さに気づいていたからです。

 世の中の経営者の中には、彼が読んだ次の歌を少し参考にした方が良い人もいるかもしれません。

 うつ心 あればうたるる 世の中よ

 うたぬ心に うたるるはなし

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