成長 / 折々の言葉
人口の減少の怖さ
人口論
学生時代に、人口論の講義を聞いたことがあります。日本の統計などをもとに、経済の成長と人口の増減の関係を研究されていた学者、速水融教授が、熱弁を振るわれていたことを覚えています。江戸時代の日本が世界でも類を見ない発展を遂げていたことの背景として、人口の増加と耕作地の増加が深く関係したこと等を教わった記憶があります。当時は、数式を駆使した経済成長論の新しいモデルが一世を風靡していた時代で、失礼ながら速水先生の話には、もう一つ気合がはいりませんでした。
しかし、今考えてみると、速水教授は大変先見の明がある研究をされていたと脱帽です。
選択
日本の今後のことを考えると、人口の減少は避けて通れない事実です。これをどう捉えるかは、もちろん国民一人一人の価値観にもとづいた選択の問題と関係します。
一つの選択は、過去の成長の結果もたらされた資本蓄積を元にして、その資本を有効に活用する選択。フローの部分は、国民が耐えて節約していく生活スタイルをとる選択です。
もう一つの選択は、フローの部分を重視していく考えです。現行の公的国民年金制度や医療保険制度は、実質破たんしている状態というのが私の解釈です。この社会保障費の一部等を、経済の成長がもたらす収入増で埋めていく考えです。一人の若者が、高齢者、特に、団塊の世代の2人ほどを支える構造になっているこの現実をどう打開できるか、若者が耐えられるか、否かです。
私は、現実的には、資本蓄積を重んじながらも、一定の経済成長が無い限り、過去の資産だけで日本国が食べていくには限界があると思います。経済が成長するため、政府や民間でいろいろな手を打っていくべきですが、他方、人口の減少がいかに重要な課題であるかを、政治をはじめ国民全員が再認識し、これに具体的な手を打っていかなければならない時と考えます。しかも、これは時間の関数が重要です。早く取り組まないと、効果が出るまでの時間がもったいない。日本の将来の夢を早く描くことが政治家の大きな責務です。
経済と人口の増
日本のバブル崩壊以後の「失われた20年」。前半の10年はバブル崩壊後のデフレ現象で、リーマンショック後、欧米も体験した現象とほぼ同じです。他方、2003年からの後半の10年間は、欧米各国の事情とは少し違いがあるかもしれません。日本の団塊の世代が人口構成グラフで大きな膨らみを示しているとおり、急速な高齢化と新生児が少ない人口の減少状態が原因との説もあります。
何故なら、2000年から2010年頃を比較すると、ご承知の通り、日本はGDPでは先進国の中で最下位。ところが、一人当たりGDPで見ると一応他の先進国並み、労働人口一人当たりで見ると日本が高い。生産性は高いのに、人口の数が2003年以降大きく効いていたというのが、この考えの背景です。
また、中国の今後の人口減をみても、人口の重要性が分かります。中国は2017年には米国に追いつくといわれていましたが、多分無理だと思います。ここにきてこの爆発的な投資ブームが失速し、景気が後退状況にあるからです。2011年の約9%のGDPのうち、政府による投資(インフラ投資)が5%牽引していました。この投資の大半が国有企業に流れ、一部の地方政府傘下の国有企業の債務返済が最近問題になりつつありますが、今後、投資の減の影響は甚大です。統計数字の信用性は別として、過去8~10%のGDP成長率を誇っていましたが、スローダウン。7.5%目標と当局から公表されていますが、5%ぐらいに下がるとの経済学者の見方が一般的です。仮に、5%で成長し、米国が2%で行くとすると、しばらく米国に追いつけない計算になります。
成長率は、政府投資の減少にも増して少子化が影響します。人口の絶対数の影響が大きく成長率を左右します。生産と消費に関係してくるからです。統計によれば、日本の出生率が2011年に1.39%でしたが、中国の出生率は政策の影響が大きく、1.18%と言われています。このままでは、総人口がここ10年くらいでピークを迎え、生産人口も早晩ピークを迎えるといわれるほどです。
勿論、人口の爆発的な増加は、これはこれで食料、環境破壊などの問題を引き起こします。地球規模で考えなければならない課題です。従って、単純な解決策はないとは思いますが、日本の人口が今のように減少していくことに対して、政府が本気で早く手を打っていかないと、日本の若者の夢を壊しかねないと危惧している一人です。
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